あらすじ
Spotify
スウェーデンで創業された音楽配信サービス。洋楽やクラシック音楽のレパートリーが非常に豊富なことが特徴。無料でも利用できるが、月額約1000円の有料プランに加入することでストレスなく利用できる。とても便利。
本編
というわけで、Spotifyで聴けるクラシック音楽について今日も色々教えてください。
ほい。どの作曲家について聞きたいの?
いや、もう作曲家は前回まででだいたい教えてもらったんですが、結局どういうアーティストの楽曲を聞くのが手っ取り早いのかなと思いまして…… オーケストラとか指揮者とか、そういうのですね。
なるほど。確かに、ある程度知っている人はどういう指揮者やオーケストラの演奏を聴けばいいかアタリをつけやすいけれど、入門したばかりの人はそういうのよく分からないもんね。
特に初心者のうちは、そこそこ有名な指揮者とか楽団の名前を聞いてもピンときませんから。そのあたり詳しくお願いします。
じゃあ始めようか。まずその曲がどんな曲か知りたい場合は、有名どころの演奏を聴くのが無難だと思う。巨匠の指揮による、世界的に有名なオーケストラの演奏をね。
ふむふむ。
しかし、その曲について理解を深めたい場合は、他の色々な指揮者による、色々なオーケストラの演奏を聴いた方が良い。スタンダードな演奏と比べて振れ幅が大きいから、より自分好みな演奏スタイルが見つかりやすい。
なるほど。それはなんとなく分かるような気がします。フィンランド編の指揮者紹介でも似たようなこと言ってましたよね。
というわけで、ざっくりまとめるとこんな感じかな。
曲についてさっぱり分からない頃
とりあえず有名どころの演奏を聴く。作業用BGMや環境音のように何十回も聴いていれば、なんとなくその曲の全体的な雰囲気が分かるようになってくるはず。
曲についてなんとなく分かってきた後
色々な指揮者による、色々なオーケストラの演奏を、片っ端からから聴いてみる。些細な違いは分からなくても、テンポの違いや表現の強弱はなんとなく感じるようになってくるはず。そうすると、だんだんと自分好みの演奏スタイルが分かってくる。
自分好みの演奏スタイルを見つけた後
自分好みの演奏スタイルを中心に聴きながら、新しい楽曲の輪を広げていく。その頃には、どんな指揮者の演奏を聴けばいいかアタリをつけやすくなっているはず。また、全然スタイルの違う演奏からも別方向の主張を感じるようになっているかも。
なるほど、なんとなく分かったような気がします。じゃあ早速ですが、有名どころをひととおり教えてください。
お、おう……
ヘルベルト・フォン・カラヤン
Herbert von Karajan
世界で最も有名な指揮者といえば、ヘルベルト・フォン・カラヤンだろうね。そのカリスマっぷりから「帝王」とも呼ばれ、死後30年以上経った今でも世界中の人々に愛されている指揮者だよ。
カラヤンはクラシック音楽にあまり詳しくない人にも有名ですよね! 入門するならまずカラヤンから入れ、くらいの謎の安心感があります。
そうだね。録音の量も多いし、質も申し分ないと思う。なので「とりあえずカラヤン聞け」となるのは自然の流れではある。
カラヤンと結びつきの強い楽団といえば、何と言ってもベルリン・フィルハーモニー管弦楽団だね。1955年から亡くなる直前まで、30年以上もトップの座に就いていたよ。
晩年に諸事情あってベルリンフィルと距離を置き始めてからは、今度はウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との結びつきを強めていったんだ。
ベルリンフィルも、ウィーンフィルも、どちらも世界トップのオーケストラとして引き合いに出されることが多いですよね。なんかすごいなぁ。
カラヤンは他にも音楽界の新しい伝統を数々作っていったんだ。今でも脈々とその伝統は受け継がれているよ。それも彼が「帝王」と呼ばれる所以だね。詳しいエピソードはWikipediaなどを参照してね。
レナード・バーンスタイン
Leonard Bernstein
カラヤンと並んで世界的な知名度を持つ指揮者といえば、やはりレナード・バーンスタインだね。ヨーロッパ生まれのカラヤンと比べると、バーンスタインはアメリカ生まれアメリカ育ちなんだ。
あと、バーンスタインは作曲家としても名を馳せているよ。ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」が特に有名かな。
ミュージカル「キャンディード」も有名ですよね! 序曲しか知りませんけど……
カラヤンとベルリンフィルみたいな関係は、バーンスタインにはあったんですか?
あそこまで濃密な関係ではなかったけれど、1つだけ挙げるなら約10年ほど常任指揮者を務めたニューヨーク・フィルハーモニックかな。NYフィルは現在でも世界トップレベルのオーケストラとして有名だね。
あと、バーンスタインは後進の指導にも熱心だったんだ。毎年北海道で開かれている「パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌」(PMF)も、元々はバーンスタインによる若手音楽家の指導のための企画なんだよ。
お弟子さんも多いんですよね。ヤルヴィ先生(パーヴォ・ヤルヴィ)を始め、広上淳一氏や佐渡裕氏といった日本人指揮者も彼のお弟子さんなんですよね。
古くはクラウディオ・アバドや小澤征爾なんかも影響を受けているね。そういう意味ではバーンスタインは、死後も様々な形で音楽界に影響を及ぼし続けている、実に偉大な指揮者だよ。
エフゲニー・ムラヴィンスキー
Evgeny Mravinsky
カラヤンやバーンスタインばかりが脚光を浴びていたわけではないよ。ソビエト連邦を中心に活躍したエフゲニー・ムラヴィンスキーも、20世紀後半の偉大な指揮者として数えられることが多いね。
ムラヴィンスキーはレニングラード・フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者を50年以上務めていたんだ。厳しいリハーサルをすることでも有名で、当時は世界最高峰のオーケストラとして揺るぎのない地位を確立していたよ。
ムラヴィンスキーとレニングラードフィルのコンビは、ショスタコーヴィチの交響曲の初演を数多くこなしたことも有名ですよね! 特に交響曲第5番の初演時のエピソードは今でも語り草になっています!
ちなみにレニングラード・フィルハーモニー交響楽団は、今ではサンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団と名前を変えているよ。Spotifyでは新旧どちらの名義でも登録されているから注意してね。
この楽団は、ムラヴィンスキーの後はユーリ・テミルカーノフが首席指揮者を30年以上務めているね。ムラヴィンスキー時代を知る人から見たら、当時と比べて地位の低下は否めないらしいけれど、それでも世界トップレベルの楽団だよ。
ムラヴィンスキー時代を知る人って、一体何歳なんですか……
まとめ
改めてまとめると、一番最初の「その曲がどんな曲か知りたい」っていう段階では、さっき挙げたような巨匠の演奏を聴くのが無難ってことですよね。
そういうこと。慣れてきたり、ちょっと新しい刺激が欲しくなってきたら、他の指揮者やオーケストラの演奏を聴くといい。序盤で書いたやつを再掲するね。
曲についてさっぱり分からない頃
とりあえず有名どころの演奏を聴く。作業用BGMや環境音のように何十回も聴いていれば、なんとなくその曲の全体的な雰囲気が分かるようになってくるはず。
曲についてなんとなく分かってきた後
色々な指揮者による、色々なオーケストラの演奏を、片っ端からから聴いてみる。些細な違いは分からなくても、テンポの違いや表現の強弱はなんとなく感じるようになってくるはず。そうすると、だんだんと自分好みの演奏スタイルが分かってくる。
自分好みの演奏スタイルを見つけた後
自分好みの演奏スタイルを中心に聴きながら、新しい楽曲の輪を広げていく。その頃には、どんな指揮者の演奏を聴けばいいかアタリをつけやすくなっているはず。また、全然スタイルの違う演奏からも別方向の主張を感じるようになっているかも。
ちなみに慣れてきてから以降は、どんな基準で選ぶのがいいんですか? 「片っ端から」って書いてあるんですが、やっぱりそれなりに有名どころから?
いや、文字通り片っ端からだね。確かに有名どころの方がハズレは少ないかもしれないけれど、自分の好みの傾向が分からないうちは「とりあえず新しいものから順番に」でいいと思うよ。
えっ、そんな大雑把な感じでいいんですか? もっとこう、有名どころから順番にピックアップして聴くと手っ取り早いとか、そういうのは無いんですか?
お気に入りが見つかるまでは基本的に「聴いてみよう」からの「今回はよかった」か「今回は微妙だった、○○の方がいい」の繰り返しでいいと思う。浅く広く聴いてみれば、どういうパターンが好きかっていうのが浮かんでくると思うよ。
なるほど。てっきり巷のランキング的なのを見ながら順番に追っていけ、みたいになるのかと思ってました。ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とか、ロンドン交響楽団とか……
ランキング……? あー、グラモフォンが発表してるやつとかかな。サイトウ・キネン・オーケストラが19位にある例のアレとかでしょ。もう10年以上前のネタだし、ナナメ読みする程度でいいと思うよ。
そういうランキング的なのは他にも沢山あると思うけれど、どれも「この楽団の演奏なら必ず良いものです」っていうような保障をするような趣旨のものではないから注意してね。妄信的に崇める必要はない。
ほら、そもそも音楽っていうのは採点競技ではないから、定量的な評価をすること自体が難しい話じゃん。技量的な優劣はあるかもしれないけれど、それもトータルで見れば定量的に測るのは難しいし。
確かに、言われてみればそうですね。
だから、有名な指揮者やオーケストラだからといって、それだけで持ち上げる必要はないし、逆に無名だからといってそんなに下に見る必要もない。色眼鏡は外して、フラットな気持ちで色々聴いてみることが大事。
そうやって色々聴いた結果、「やっぱり○○がナンバーワン!」みたいな好みの傾向が生まれるのは自然なことだと思う。フラットな状態で判断した結果だから、むしろそういうのを自分の中で大事にした方がいいね。
深い。
そう考えると、さっき出たランキングの話も、評価者にとっての好きな楽団ランキングって考えるのがよさそうですね。他人の価値観から見たランキングなので、確かに自分にはピッタリ当てはまらないかも……
そういうこと。投票の結果だとしても、結局は他人の価値観から見た評価の集計だからね。
おまけ:うさぎの場合
そういえばわたしも、ユキさんが言ったようなルートで入って来た気がします。入門はとりあえず巨匠の演奏を聴いて、そこからしばらく経った頃に色々聴きまくって自分のピンとくるスタイルを見つけた感じですね。
ほうほう。
一番最初の入口は、ベートーヴェンの交響曲第9番、いわゆる「第九」でした。ほら、クラシック音楽といえば第九じゃないですか。そこで一番最初に聴いたのが、バーンスタイン指揮のウィーンフィルの演奏でした。
しばらくして「指揮者によって色んな演奏パターンがあるらしい」と小耳に挟んだので、色々な演奏を聴こうとしてみたんですよ。当時はSpotifyじゃなくてYouTubeとかニコニコ動画でしたが。
いくつか聴いてみたら「早いパターン」「遅いパターン」「普通なパターン」がなんとなく分類できるようになってきました。何百回も聴いていたので、微妙なニュアンスの違いも感じ取れるようになってきたようです。
その中で一番気になったのが、全体的に早めのテンポながらも、要所でブレーキを利かせつつじっくり溜めるようなフィリップ・ヘレヴェッヘ氏の演奏でした。
そして、ヘレヴェッヘ氏の指揮、シャンゼリゼ管弦楽団の演奏のCDを購入。これが大ハマリでした。キュッと引き締まった快速テンポの演奏が、この曲の世界観をコンパクトにまとめていて大変良かったです。
ヘレヴェッヘ氏なんてそれまで全然知りませんでしたし、あまりメジャーではないかもしれませんが、わたしが第九と親密になったのはこの演奏がきっかけでした。
そういえば、ベルが大好きなパーヴォさん(パーヴォ・ヤルヴィ)の演奏スタイルも、どっちかというとコンパクトに引き締めて快速テンポで飛ばすタイプだよね。
ヤルヴィ先生の爆発的な第九に度肝を抜かされるのはしばらく後の話ですが、そういう快速スタイルが好きっていうのが分かってきたのもこの頃ですね。
よかったじゃない。聴き比べで違いが分からなくても、「自分はどっちかといえばこういうスタイルが好きらしい」っていうのが分かれば、初心者から初級者くらいにはレベルアップした感じがするよね。
「自分はこのスタイルが好き」っていうのがあると、いざコンサートに行ってみて真逆のパターンだった時にちょっと切ないですけどね…… その分、いつも聴いているのと違う一面を発見するなど色々ありますが。
まぁ、その時はその時で腹を括るしかないよね。
おまけ:雪貴の場合
ちなみに、ユキさんはぶっちゃけどんな感じの基準で聴いてるんですか?
好みの話だったら、ベルと同じでアップテンポ系の演奏が割と好きかな。20世紀の巨匠の演奏はあえて重厚感を付与するようなのが多くて、作曲者の意図に必ずしも沿っていない面が多々見られるからね。
そういうのもあってかどうかは知らないけれど、私は基本的に21世紀以降のCDしか聴かない気がする。新しくていい感じの音源なら正直何でもいいよ。技術的な問題もあるし。
思いきりぶっちゃけましたね…… で、技術的な問題って一体何なんですか?
録音技術と編集技術だね。物にもよるけど、50年くらい前のライブ録音とかだと、お客さんの咳の音とかが思いっきり入ってたりするわけよ。
そういう観点で見ると、近年の技術の進歩は素晴らしいよ。音の新鮮さが全然違うんだよね、素人目にもハッキリと分かるくらいに。
(素人「目」じゃなくて素人「耳」では……?)
最近は、新しい技術を使って古い音源をリマスター(焼き直し)したものも増えてきたよ。数としてはまだまだ少ないけどね。
でも、なんとなく分かる気がします。フィルム時代の写真と比べると、最新のデジタル一眼レフカメラで撮った写真の方が遥かに高精細で加工もしやすいですもんね。録音についてもそんな感じのニュアンスですよね。
だいたいあってるかな。まぁ私みたいな意見は、古くからのファンにとっては「音楽の本質を聴け!」みたいな感じで石を投げたくなるかもしれないけれどね。古い音源もたまに聴くので許してほしい。
実際に石を投げられたような言い方ですね……
古い音源と比べて最近の音源の方が上手い演奏に聴こえる気がするのも、今言ったような技術的な恩恵も大きいと思う。ノイズを良い感じにカットしたり調整したりとか。業界に詳しくないのでそれ以上は何も言わないけど。
というわけで、今日はこんなところかな。どうだった?
大いに参考になりました、今日の話を参考にしてクラシック音楽マスターを目指しますよ! まずはグレゴリオ聖歌の時代まで遡って、バロック音楽の時代までの音楽の歴史を辿ろうと思います!
とりあえず、私の話が1ミリも参考にされていないことがよく分かったよ。じゃあ音楽史について夜までみっちり叩き込んであげるね、まずは教会音楽千本ノックから。
ヒエッ…… 冗談に決まってるじゃないですか、落ち着いてください……
自主的なPR記事なので、この記事に関してSpotifyからの金銭の授受はありません。
あらすじ
流行り病の影響で中学校がしばらく休校になってしまったうさぎ。せっかくなのでSpotifyでクラシック音楽を聴きまくろうと意気込むも、何を聴けばいいのか分からない。なので雪貴にオススメを教えてもらうことにした。