あらすじ

Spotify
スウェーデンで創業された音楽配信サービス。洋楽やクラシック音楽のレパートリーが非常に豊富なことが特徴。無料でも利用できるが、月額約1000円の有料プランに加入することでストレスなく利用できる。とても便利。

本編


というわけで、Spotifyで聴けるクラシック音楽のオススメを教えてください。

んー、じゃあ今日はフィンランドの話をしようか。もうご存知だと思うけど、フィンランドはヨーロッパの北東の端っこにある、森と湖とサウナとサンタクロースの国だね。あと、1年の半分が寒い冬だよ。
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フィンランド - Wikipedia
フィンランドといえば、ヘヴィメタルが盛んですよね! ユキさんにもわたしのオススメのプレイリストを布教してあげますよ!

クラシック音楽について聞きにきたんじゃなかったっけ?

そういえばそうでした……

でも、フィンランドのクラシック音楽の話をすると、だいたいシベリウスの話になりますよね。

そうだね、もちろん他にも色々あるけど…… でも、シベリウスの音楽を聴くのがフィンランドの音楽に触れる上で一番手っ取り早いし、今日はシベリウスの話を中心に進めていこうか。

シベリウス
Jean Sibelius

というわけで、フィンランドで最も有名な作曲家といえばシベリウスだね。19世紀後半~20世紀初頭の、いわゆるロマン派音楽の時代に活躍した作曲家だよ。
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ジャン・シベリウス - Spotify
フィンランドが独立したのは1917年だから、シベリウスが主に活躍したのはそういう民族主義や愛国ムードが高まっていった独立直前の時期だね。

シベリウスはスウェーデン語を話す家庭で育ったそうですが、そういう民族主義的な潮流にも次第に惹かれるようになり、フィンランド語を勉強して「フィンランド的な文化」を楽曲にも積極的に取り入れていったんですよね。

そうだね。だから一般的には国民楽派に分類されることが多いね。もっとも、音楽的にはそこまで国民楽派寄りではないと私は思うけど。

国民楽派
19世紀中盤から20世紀にかけてのロマン派音楽の時代に活躍した作曲家のうち、より民族主義的な表現を試みた作曲家たちのこと。単に「ドイツ、オーストリア、フランス、イタリア以外の作曲家」という意味合いで広義的に使われることも多い。

フィンランド語とスウェーデン語
フィンランドでは、フィンランド語話者とスウェーデン語話者が混在している。現在は両言語ともフィンランドの公用語に指定されているため、公共の場ではフィンランド語の表記とスウェーデン語の表記が併記されていることが多い。

じゃあ、代表的な曲をいくつか見ていこうか。


シベリウス:交響詩「フィンランディア」
(Finlandia, Op.26)
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フィンランディア - Wikipedia
シベリウスの楽曲で最も有名なのは、何と言っても「フィンランディア」だね。初演は1900年で、当時ロシア帝国の影響下にあったフィンランドにおいて、ロシア帝国への反感が高まりつつあった時代だね。

フィンランド人のご先祖さんたちは、みんなこのメロディーを心に刻みながら独立を勝ち取ったんですよね。先祖代々続く心のメロディーって感じで、なんだか羨ましいです。

独立の頃だけじゃないよ。第二次世界大戦中の冬戦争と継続戦争という2つの大きな戦争によって、国家存亡の危機に陥ったフィンランドの国民を奮い立たせたのも、この曲なんだ。合唱用の歌詞がついたのもこの頃だね。

ヒエッ、それこそ先祖代々受け継がれてきたメロディーなんですね…… なんだか羨ましいです。日本にもそういうのないかなぁ。

「さくらさくら」や「赤とんぼ」は何か違いますし、誰もが知っている第二国歌の「宇宙戦艦ヤマト」も何か違う気がしますし、うーんうーん……

普通に「ふるさと」あたりでいいのでは? まぁそのくらい心の奥に響いている曲ってことだよね。

ちなみに「フィンランディア」は、当初はフィンランド語の歴史劇のために作られた曲なんだよね。「Suomi herää (フィンランドの目覚め)」という題名で、原曲もSpotifyで聴けるよ。

終盤のニュアンスが現行版とだいぶ違いますね。現行版の方が好きかも……


シベリウス:交響曲第1番
(Symphony No. 1 in E minor, Op. 39)

ここからは交響曲を第1番から第7番まで順番に見ていこうか。まずは交響曲第1番。この曲が初演されたのは1899年のことで、「フィンランディア」が作られる直前のことだね。

どの作曲家も「交響曲第1番」と名のつく曲を作る時は、往々にして形式的で、かつ大胆な主張を入れてくることが多いけど、シベリウスも例外ではないね。

突き抜ける空のような第1楽章、緩徐的な第2楽章、駆け抜けるようなスケルツォの第3楽章、そして勇壮なフィナーレを演出する第4楽章。って感じですよね。

特に第1楽章は暗いもやの中を模索するような最初の1分くらいのメロディーを抜けると、一気に視界が晴れて広大な雪原を走り回るような憧憬が見えるのが大好きです! 指揮者によっては猛吹雪だったりしますが……

確かに、フィンランドの空気や風景に満ち溢れているという面では、この曲は他の曲と比べて一番かもしれないね。


シベリウス:交響曲第2番
(Symphony No. 2 in D major, Op. 43)

交響曲第2番は、シベリウスの交響曲の中で最も親しみやすい曲だね。第3楽章からフィナーレの第4楽章までの滑らかな盛り上がりが有名だよね。

メロディーを覚えやすいのは第4楽章ですが、第1楽章も牧歌的でぼっかぼっかしてて良いですよね!

第1楽章について、フィンランド人の心に根付いているような民謡的で牧歌的なメロディーだ、と評している人もいたね。

第3楽章の緊迫感と比べると、第4楽章は一気に昇りつめて視界が開けるようなイメージがありますよね。明快で分かりやすい表現ゆえにシベリウスに詳しくない人にも幅広く親しまれている、名曲中の名曲って感じですね。

逆にこの曲でシベリウスに興味を持った人が、シベリウスの凄みがこの曲だけに留まらないということに気付けるよう誘導するのが今回の我々の役目ですよね! 張り切って紹介を続けますよ!

ちょっと何を言っているのか分からないけど、続けようか。


シベリウス:交響曲第3番
(Symphony No. 3 in C major, Op. 52)

交響曲第3番も牧歌的でぼっかぼっかしてますよね。特に第1楽章、涼しい夏を思わせるような爽やかさです!

この曲は第3楽章までで終わり。交響曲は一般的には4つの楽章構成になることが多いけれど、この曲は第3楽章と第4楽章を繋げた感じって考えるとわかりやすいかな。

「繋げて演奏する」って意味だと、交響曲第2番の時点で既に第3楽章と第4楽章が繋がってますけどね。

第3楽章は始まりこそ暗い雰囲気ですが、ちょうど真ん中あたりで雨が晴れたように第1楽章のフレーズが戻ってくるのが印象的です。まるで時間が止まったかのような第2楽章とも対照的で、晴・霧・雨のち晴、な構成ですね。


シベリウス:交響曲第4番
(Symphony No. 4 in A minor, Op. 63)

交響曲第4番は、牧歌的に始まった前2曲と比べると、重たい雰囲気から始まることが特徴的だね。

わたし的には、この曲は他の曲と比べて雰囲気が暗くて、とっつきにくい印象です…… まだ生演奏を聴いたことがないというのもあるんですが、そもそも演奏機会もかなり少ないんですよね。

この作曲当時のシベリウスは病気の影響があり、かなり人生について悩んでいたみたいなんだよね。だから自ずとテーマは重ためになってしまう。

第4楽章では光を求めるように天を仰ぎ、明るい雰囲気と暗い雰囲気が交錯しながら、最後は低音に飲みこまれ、かすかな囁きとともに消え入る…… 死への不安と直面していたとはいえ、終わり方が不穏すぎます。

これが遺作にならなくて良かったよ、切実に。あえて言うとすれば、「人生とは」と悩んだ時に、この曲を聴きながら「シベリウスはかく悩みけり」と当時のシベリウスの心の声に耳を傾けてみてはどうだろうか。


シベリウス:交響曲第5番
(Symphony No. 5 in E-flat major, Op. 82)

交響曲第5番、この曲は割と演奏機会が多いね。病気による死への不安から解放されたこともあって、交響曲第4番と比べてかなり明るい曲調になっているのが特徴的だね。

わたし的には、この曲からは春の足音が聞こえる気がします。北国の長く暗い冬が終わって、ようやく訪れる春の喜び…… きっと、日本の雪国に住む人々にはよく分かるんじゃないでしょうか。

ところで、この曲も第3楽章までしかないですけど、構成的にはどんな意味があるんですか? わたし的には、長い第1楽章に2つぶんの楽章が入っているのかなと思うんですが。

そうだね、この曲は元々の初稿版では第4楽章まであったんだよ。ベルの言うとおり、初稿版の第1楽章と第2楽章が合わさって改訂版の第1楽章になった感じだね。このCDの1曲目から4曲目が初稿版に当たるよ。

なるほど、初稿版では明るくなりきらない部分が第1楽章、霧が晴れて視界が良くなる部分が第2楽章、って感じできっちり暗と明で分かれているんですね。ところどころ不穏な響きが混じっているのが気になりますが……

この曲が作られた20世紀初頭は、マーラーあたりが活躍していた頃だから、そういう20世紀音楽的な響きをシベリウスが取り入れようとしたのかもしれない。結局は改訂版で綺麗な響きに書き直しているわけだけど。

改訂版の方が好きなので、わたし的にはその方がよかったです。

その結果、シベリウスの音楽は「19世紀的」なまま取り残され、「20世紀的」な音楽の台頭に乗れず、筆を置いてしまった、と私は考えているんだけどね。まぁこれはただの持論だから聞き流していいよ。


シベリウス:交響曲第6番
(Symphony No. 6 in D minor, Op. 104)

交響曲第6番は、フィンランド独立後に作られた曲だね。シベリウスの作曲人生の中では終盤にあたり、この曲で「極致」と言うべきか、ひとつの終着点に達したような感じだね。

この曲については、都響(東京都交響楽団)の音楽監督の大野さんがピアノを弾きながら解説している動画を見るのが一番早いと思います。

こら、手を抜くな。まぁでも教会旋法とか、だいたい大野さんが解説してくれてる感はある。

あと、この曲の第3楽章は良くも悪くもクセになります…… 耳によく残るっていうんですかね? 風邪ひいて寝込んでる時とかに、ここのフレーズが襲い掛かってきて苦しむことが多々あります。

わたしは第1楽章が好きかな。雪景色の中を走りながら聴くと尚よろしい。車でも列車でもランニングでも。


シベリウス:交響曲第7番
(Symphony No. 7 in C major, Op. 105)

交響曲第7番は、未完の作品を除くとシベリウスの最後の交響曲としても知られているね。しかし、伝統的な楽章構成にとらわれず、全体でひとつの楽章としてまとまっていることから、最初は「交響的幻想曲」と呼ばれたんだ。

この曲が何を表しているのか、っていうのが未だによく掴めません。演奏によってはレクイエム(鎮魂歌)のように聞こえることもありました……

まぁ、シベリウスの場合は他の交響曲もそうだけど、この曲は特に標題的ではないからねぇ。何かを見ようとするよりは、音をなぞりつつ自分の内面と対話するのが一番いいのかもね。そうすれば何かが聞こえてくるさ。

ちなみにNHK交響楽団の首席指揮者のパーヴォさん(パーヴォ・ヤルヴィ)は、「交響曲第6番と交響曲第7番はひとつの交響曲として解釈できる」として、2019年の演奏会ではこの2曲を間を空けずに連続で演奏していたね。

わたしもその公演はテレビで見ましたが、確かに消え入るような交響曲第6番の第4楽章の終わり方に対して、交響曲第7番という「第5楽章」の存在は、ひとつの「解」のようにも解釈できますね…… なんだか深いです。


シベリウス:クレルヴォ交響曲
(Kullervo, Op. 7)
関連リンク
クレルヴォ交響曲 - Wikipedia
曲自体は有名ではないかもしれないけど、シベリウスの経歴について語る上で欠かせないのが、この「クレルヴォ」だね。日本ではクレルヴォ交響曲と呼ばれることが多いよ。

クレルヴォ交響曲は、交響曲第1番より前に作られた作品なんですよね! シベリウスにとって初期の作品です!

粗削りな部分もあったけれど作品自体はそれなりに好評で、何より「フィンランド出身の若手作曲家が『カレワラ』を題材に大曲を作ったらしい」ということで、フィンランド人からのシベリウスへの注目が大いに高まったんだ。

残念ながら1892年の初演の後、作曲家自身により作品は封印されてしまうんだけれど、シベリウスの経歴はそこから「フィンランドの目覚め」つまり「フィンランディア」に繋がっていくわけだね。

あと「クレルヴォ」で特徴的なのが、ベートーヴェンの交響曲第9番のように合唱付きというところかな。合唱パートが入るのは第3楽章と第5楽章だね。

合唱が必要なので演奏機会が少ないのが玉に瑕ですよね…… あと演奏時間が1時間以上あって長いという。

物語の詳細についてはここでは紹介しないのでWikipedia読むといいと思います。あらすじについて深く知ると、曲全体への理解が深まりますよ。

楽曲の紹介記事として本末転倒な気もするけど、まぁいいか……


シベリウス:レンミンカイネン組曲
(Lemminkäinen Suite, Op. 22)

「クレルヴォ」と同じく、民族叙事詩「カレワラ」から着想を得て作られたのがこの「レンミンカイネン組曲」だね。全4楽章のうち、第2楽章の「トゥオネラの白鳥」が一番有名で、単曲で演奏されることも多いよ。

第4楽章の「レンミンカイネンの帰郷」もカッコイイ曲なので、単曲で演奏されることが多いですよね。でも全体を通してひとつの物語なので、全曲で演奏してほしいところでもあります。

それはちょっと語弊があるかもね。確かに4曲で1セットではあるけれど、4曲連続で演奏しても、ストーリー的にはちょっと飛び飛びな感じだから……

でも、曲としては有名な2曲以外にも全体的によくまとまっているので、理解を深めてもらえると私としても嬉しい。


シベリウス:ヴァイオリン協奏曲
(Violin Concerto in D minor, Op. 47)

ユキさん、ヴァイオリン協奏曲のこと忘れてませんか?

ごめん、一般的に有名な曲だから素でスルーしてた…… ともすれば、この曲はどの交響曲よりも演奏頻度が高いかもしれないね。決して簡単な曲ではないんだけど。

シベリウスは、若い頃はヴァイオリン奏者を志していたんだよね。技量も相当なものだったらしいんだけど、「超一流」にはなれなくて結局はその道を諦めることとなった。

でも、ヴァイオリンへの情熱は衰えず、結果的にその情熱はこの曲に注がれることになったよ。シベリウスが作曲した協奏曲は、ヴァイオリンのための1曲だけだね。

第1楽章の最初の「極寒の澄み切った北の空を、悠然と滑空する鷲のように」な部分がとても標題的で大好きです! 作曲者がこう言っているだけあって、誰の演奏を聴いても鷲が飛んでいる憧憬が見えるようです!


さて、入門編みたいな感じで軽く見てきたけど、オーケストラ向けの有名どころはこんなものかな。

シベリウスといえば、ピアノのための作品も人気がありますよね。わたしは「もみの木」(Op.75-5)が好きです。練習しても全然弾けるようにならないですけど……

ヴァイオリンの腕前と比べるとピアノはそこまで上手ではなかったと聞いているけれど、それでもシベリウスはピアノのための作品を数多く作曲しているんだよね。

素朴で飾らない雰囲気の曲が多くて、どこか冷たく透き通っているようなのに、心があたたかい気持ちになりますよね。まるで故郷フィンランドの空気を思い出すようです。

お前の故郷は新潟県だろう、何を言ってるんだ……


他にも「春の歌」(Op.16)とか、「エン・サガ」(Op.9)とか、オススメしたいのは色々ありますが……

わたしがオススメしておきたいのは、作品番号1番の「5つのクリスマスの歌」(Op.1)ですね。

おっ、なかなかマイナーなところを突いてくるね。とはいえ、5曲目の「On hanget korkeat, nietokset」(Op.1-5)あたりはフィンランドでは定番の合唱曲だけれども。

サンタクロースの国で生まれたクリスマスの曲、それも作曲者はシベリウスですからね。作曲当時はフィンランド=サンタクロースの図式は世界的には有名ではありませんでしたが……

あとは、4曲目の「En etsi valtaa loistoa」(Op.1-4)も有名かな。残りの3曲は有名じゃないかも。

他にオススメしておきたい曲はあるかい?

「3月の雪の上のダイヤモンド」(Op.36-6)は名曲です。異論は認めません。

他にも素晴らしい曲がいっぱいなので、ぜひSpotifyでシベリウスの曲を聴いてみてください!

指揮者の話


というわけで、楽曲についてはだいたい挙がったんですが、どのアーティストの曲を聴けばいいのか全然わからないので、そのへんも挙げてもらえると嬉しいです。

おすすめの指揮者やオーケストラは別途紹介することにして、今日はフィンランドについての話だからフィンランドとその周辺地域出身の指揮者についても軽く紹介しておこうと思う。

そういえば、フィンランドにそこまで近しくない人がシベリウスの曲を演奏すると、みんな「北欧」や「フィンランド」のイメージが先行するのか「なんとなく涼しげ」や「なんとなく針葉樹林」な演奏が多いですよね。

「なんとなく涼しげ」はともかく「なんとなく針葉樹林」って何だよ……

まぁでも、他の作曲家と比べてシベリウスの曲がそういう雰囲気をふんだんに含んでいることはよく分かる。だから、ステレオタイプ的な解釈というわけではなくても、どうしてもそういう方向に傾いてしまうのは仕方ない。

それとは逆に、フィンランドやその周辺地域で生まれ育った人が「故郷の音楽」であるシベリウスの曲を演奏すると、それぞれ「故郷」に対する経験や思い入れが多少入ってくるから、独自の解釈に寄ることが多い。

温暖な地域の人が「この曲には冬の成分が半分近くもある、なんて寒そうな曲だ」と思うような曲でも、フィンランド人には「冬の成分が半分もあるのは故郷では当たり前だし、それと比べるとこの曲は少し温かい」ってなる感じですかね。

ざっくり言えばそういうことだね。だから、シベリウスの曲のメロディー的な特徴を追いたい人は、そういう独自解釈が入ってこないような「外側」からの演奏を選ぶべきではある。

逆に、シベリウスが曲に込めた思いを読み解くためには、シベリウスと同じ土壌で育った「地元」の人たちの演奏を聴くべきだと私は思う。指揮者もそうだし、オーケストラもそうだね。

なるほど、勉強になります。ちなみにフィンランドのオーケストラというと、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団とか、フィンランド放送交響楽団とかが有名ですよね。

有名どころだとそうだね。もちろん地方のオーケストラや周辺国も含めれば他にも色々あるけど。指揮者についてはこれから紹介していくよ。

レイフ・セーゲルスタム
Leif Segerstam

まずはフィンランドを代表する巨匠、レイフ・セーゲルスタムだよ。指揮者として有名だけれど、作曲者としても多くの交響曲を残していることが特徴的かな。

すごい大柄な体形も特徴的な人ですよね…… 前にフィンランドの人とセーゲルスタム氏の話をした時に、ヤバいくらい大柄だよねって話で一緒に盛り上がった記憶があります。

それはともかく、セーゲルスタム指揮、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるシベリウス交響曲全集が、最近では一番スタンダードな演奏なんじゃないかな。

おお、わたしもこのCD持ってますよ! Spotifyでも聴けるんですね!

とりあえず、これを聴いておけばシベリウス入門にはピッタリだと思うよ。初心者の人はまずはここから、って感じだね。

わたしもこのCDを延々とリピートすることで、シベリウスの交響曲を体に染み込ませました。わたしに流れるフィンランド色の血は、このCDが始まりと言っても過言ではないです。

フィンランド色の血って何だよ…… 白くて青いのか?

パーヴォ・ベルグルンド
Paavo Berglund

セーゲルスタムの少し前だったら、パーヴォ・ベルグルンドの指揮による演奏が定番かな。

2012年に亡くなられてるんですね、さすがに知らなかったです……

現在NHK交響楽団の首席指揮者を務めていることでもおなじみのパーヴォさん(パーヴォ・ヤルヴィ)の名前は、実はこの人の名前からとられているんだ。お父さんのネーメ・ヤルヴィとも親交が深かったみたいだからね。

あ、なんか名前が似てるなと思ったら、そういうことだったんですね。

パーヴォ・ベルグルンド指揮、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるシベリウスの交響曲はこんな感じなので、聴いてみるといいよ。

アルバムが2つに分かれているようなので、交響曲第1番~第4番と交響曲第5番~第7番の2つに分けて紹介しますね。

オスモ・ヴァンスカ
Osmo Vänskä

シベリウスといえばこの人も有名、オスモ・ヴァンスカ。地方オーケストラに過ぎなかったラハティ交響楽団を一躍有名にしたのがこの人だね。

オスモ・ヴァンスカとラハティ交響楽団の演奏によるシベリウスの交響曲全集もSpotifyで聴けるよ。スピード感のある引き締まった演奏だね。

ラハティ交響楽団といえば、2015年の来日公演ではシベリウスの交響曲全曲を演奏したらしいですね。ヴァンスカ氏もなかなか積極的ですね!

あれ、2015年にラハティ交響楽団と来日したのは、オスモ・ヴァンスカじゃなくてオッコ・カムじゃなかった? 確か、当時の首席指揮者はオッコ・カムだったと思うよ。
関連リンク
Okko Kamu - Spotify関連リンク
オッコ・カム - Wikipedia
あっ、2015年はヴァンスカ氏じゃなくてカムカムだったんですね。そのへん区別ついてなくてすみません……

こら、変な呼び名で呼ばないの…… ちなみに、オッコ・カムとラハティ交響楽団の演奏によるシベリウスの交響曲全集も、同様にSpotifyで聴けるよ。

サントゥ=マティアス・ロウヴァリ
Santtu-Matias Rouvali

そろそろ若手の話もさせてください! 今イケイケな若手指揮者といえば、まずは何と言ってもロウヴァリ君ですよね! フルネームはサントゥ=マティアス・ロウヴァリです!

流行り病の影響で2020年の冬に予定されていた来日公演は中止になってしまいましたが……

地元フィンランドのニュースによると、2023年を目安にして日程を再調整しているって書いてあったね。

この記事によると、ロウヴァリ君自身も2021年はタンペレ・フィルハーモニー管弦楽団、2022年はロンドンのフィルハーモニア管弦楽団とそれぞれ来日する予定があるようなので、実に楽しみです!

ロウヴァリは、2021年にフィルハーモニア管弦楽団の首席指揮者にも就任予定なんだってね。私としても純粋に楽しみだよ。

クラウス・マケラ
Klaus Mäkelä

Spotifyにはまだ楽曲が揃ってないんですが、若手ということでクラウス・マケラ氏も推しておきますね!

Spotifyの紹介記事のはずなのに、もはやベルが推したい指揮者を書くだけのコーナーになっている件について……

うう、追加されたら更新しますから……

オスロ・フィルハーモニー管弦楽団の公式YouTubeで動画が見れるので、Spotifyの代わりに参考として貼っておきますね。曲はベートーヴェンの交響曲第9番です。

マケラ氏も2020年4月に都響を指揮する予定だったんですが、流行り病の影響で全世界的に渡航制限がかかっているような状況なので、この公演も中止になってしまいました…… ウッウッ……

1日でも早い終息を祈るほかないね……

実は、マケラ氏は2020年7月にも来日予定なんですよね。しかも共演相手はN響(NHK交響楽団)です! ついにN響にもその才能が目をつけられちゃいましたね!

楽しみだけど…… せめて、この頃までには外出制限も渡航制限も解除されていればいいね。切実に。

1日でも早い終息を祈るほかないですね……


他にもフィンランド出身の指揮者は世界中で活躍しているよ。エサ=ペッカ・サロネンとか……

サロネン先生は、ロンドンやロサンゼルスなどで長年活躍してきたんですよね!

ロンドンといえば、BBC交響楽団の首席指揮者を務めるサカリ・オラモも忘れちゃいけないね。
関連リンク
サカリ・オラモ - Wikipedia
他にも日本に来るような人といえば、ハンヌ・リントゥとか……
関連リンク
ハンヌ・リントゥ - Wikipedia
ユッカ=ペッカ・サラステあたりも、2018年にNHK交響楽団と共演していたよね。

私は行けなかったんだけど、ヨン・ストルゴールズも2018年に読売日本交響楽団を指揮していたね。

あとは、日本フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者を務めるピエタリ・インキネンとか、他にも……

ちょっと、ちょっと! 後でまとめるのが大変なんですから、そんなにまくし立てないでください!

うーん、まだまだ他にもいるんだけど、今日はこのくらいにしておこうか。

パーヴォ・ヤルヴィ
Paavo Järvi

パーヴォさんことパーヴォ・ヤルヴィは、2015年からNHK交響楽団の首席指揮者を務めているから、日本ではもうおなじみの指揮者だよね。

あれ、終わったと思ったらまだ続くんですか? というか、ヤルヴィ先生ってフィンランドじゃなくてエストニアの出身ですよね?
関連リンク
エストニア - Wikipedia
フィンランドとエストニアは海を挟んですぐ隣にあることもあって、歴史的にはかなり近しい関係なんだよね。ほぼ兄弟と言っても過言でないくらい。

そういえばそうでした。民族的にもそうですけど、言語的にもかなり近いんですよね。「フィンランド語の古語はエストニア語に、エストニア語の古語はフィンランド語にそれぞれ似ている」と聞いたことがあります。

フィンランド語とエストニア語
フィンランド語とエストニア語は共にウラル語族に属しており、他にハンガリー語くらいしか親戚と呼べる言語がない非常に独特な言語である。

だから番外編として、エストニアの指揮者も紹介しておくよ。特にパーヴォさんは、最近パリ管弦楽団とシベリウスの交響曲全集をリリースしたばかりだからね。Spotifyでも聴けるよ。

素晴らしいですね。個人的には繊細な響きを持つN響ともシベリウスのCDを出してほしいところなんですが、パリ管との演奏もこれはこれでとてもよい……

ネーメ・ヤルヴィ
Neeme Järvi

そしてネーメ・ヤルヴィ、エストニア出身の指揮者を語る上でこの人を紹介しないわけにはいかないね。パーヴォさんのお父さんということもあって「パパヤルヴィ」という愛称がすっかりおなじみだよね。
関連リンク
ネーメ・ヤルヴィ - Wikipedia
ネーメ・ヤルヴィ指揮、エーテボリ交響楽団演奏のシベリウスの交響曲全集も、長らく定番として親しまれているね。パーヴォさんとパリ管弦楽団の演奏のCDと比べるのも味わい深いと思うよ。

パパヤルヴィは、確かCDのレコーディング数がものすごく多いんですよね! 有名な曲はもちろんですが、歴史に埋もれた名曲を数々掘り起こしてきたことでも注目を浴びてきたお方です!

どのくらい多いかっていうのは、Spotifyのアルバム一覧を見るだけでもよく分かるよね。私の全然知らない作曲家の名前もいくつかあるし、本当に大した指揮者だよ。

ちなみにネーメ・ヤルヴィの次男、つまりパーヴォさんの弟でもあるクリスチャン・ヤルヴィも有名な指揮者で、Spotifyでもいくつか楽曲を聴けるよ。「弟ヤルヴィ」と呼ばれることも多いね。

弟ヤルヴィも、チャイコフスキーの「雪娘」のようなマイナー曲を突然持ってきたりするので、なかなか隅に置けません。パパヤルヴィの血を感じますね。

マリス・ヤンソンス
Mariss Jansons

エストニアの話をするなら、ラトビアのマリス・ヤンソンスの話もしましょうよ。

あっ、珠羽さんこんにちは。お邪魔してます。

ウラル語族の話とか、面白そうな話が聞こえたので来ちゃいました。ちなみにラトビアで話されているラトビア語はインド・ヨーロッパ語族のバルト語派で、南のリトアニア語と同じグループです。
関連リンク
ラトビア - Wikipedia
エストニア、ラトビア、リトアニアはバルト三国という括りでまとめられることが多いけど、民族や言語的にはエストニアとラトビアの間で明確に分かれている感じなんだよね。

でも、南からの植民や征服が進む以前のラトビアの先住民(リーヴ人)は、ウラル語族系だったそうですよ。なのでラトビアの持つ風土自体も、元々はフィンランドやエストニアと近しいと言っても過言ではないかもしれませんね。

なるほど…… って、確かにラトビアはエストニアのすぐ隣の国ですけど、フィンランドからはどんどん離れていってる気が……

まぁ、でもマリス・ヤンソンスもシベリウスのCDを何枚も出しているし、一緒に紹介しておこうか。

マリス・ヤンソンス氏は、つい最近(2019年秋)に亡くなってしまわれたんですよね。大好きな指揮者のひとりだったので、残念です……

確か、マリス・ヤンソンスのお父さんも有名な指揮者なんですよね?

アルヴィド・ヤンソンスだね。こちらはもう30年以上前に亡くなっているけど、日本でもご年配のファンにはそれなりに有名だと思うよ。

言語によって名前の表記が違うので、Spotifyのアーティストページが表記ごとに分かれてますね……

Spotifyでは割とよくあることだね。正直、なんとかしてほしいけど。

おまけ

まぁ、指揮者の話もこれくらいにしておこうか。

フィンランド編と言いつつも、95%くらいシベリウスの話でしたね……

フィンランドのクラシック音楽について、シベリウス以外にも聴いてみたいって場合は、このCDとかどうかな。フィンランド独立100周年の記念としてリリースされた5枚組のCDだよ。

お、おう…… 量が多いのもそうですけど、近現代の楽曲は雰囲気が怪しくなるのでちょっと……

んー、じゃあこういうアソートはどうよ。

ほー、明るくていいじゃないですか。こういうのでいいんですよ、こういうので。

95%くらいシベリウスの記事で言うのも変だけど、フィンランドはシベリウスだけじゃないんだっていうところを少しでも見せておかないとね。

こういう楽曲を土壌にして、現代のヘヴィメタル大国フィンランドに繋がっているんですね! さて、最後にわたしがオススメするヘヴィメタルのプレイリストを……

残念、もう尺がないので今回はここまで。

ひーん…… フィンランドのヘヴィメタルについて気になる人は「suomi metal」とかで検索すると色々なプレイリストが出てきますので、そちらも是非どうぞ。

自主的なPR記事なので、この記事に関してSpotifyからの金銭の授受はありません。(念のため)
あらすじ
流行り病の影響で中学校がしばらく休校になってしまったうさぎ。せっかくなのでSpotifyでクラシック音楽を聴きまくろうと意気込むも、何を聴けばいいのか分からない。なので雪貴にオススメを教えてもらうことにした。