導入
おじゃまします。年明けですね、今年もよろしくお願いします。お年玉ください。
ないよ。今年もよろしくね。ところで今日は何の用事?
新年早々、ウィーンフィルのニューイヤーコンサートの内容が良かったので、記事を書くために感想を聞きにました。ユキさんはもちろん見ましたよね?
ニューイヤーコンサート
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が毎年1月1日にオーストリアのウィーン楽友協会大ホールで開催しているコンサートのこと。チケットの入手難度と価格はどちらも高く、世界一のプラチナチケットとも呼ばれる。その一方で全世界に配信もしているので、誰でも気軽に楽しめるという側面も持つ。NHKでは例年1月1日19:00頃から生放送される。
もちろん見たよ。ウィーンフィルのニューイヤーコンサートでシュトラウス家のワルツやポルカを楽しむのは元旦の恒例行事だからね。
シュトラウス家
ワルツやポルカの作曲家として19世紀のウィーンで絶大な人気を誇ったファミリー。特に有名なのがヨハン・シュトラウス2世で、ヨハン含め以下の4人が主要人物。
ヨハン・シュトラウス(父)
ヨハン・シュトラウス2世
ヨーゼフ・シュトラウス(弟)
エドゥアルト・シュトラウス(弟)
ちなみに、ドイツを中心に活躍したリヒャルト・シュトラウスも交響曲や交響詩を多数残している有名作曲家だが、こちらはウィーンで活躍したシュトラウス家とは関係がない。
そういえば、どうしてウィーンフィルのニューイヤーコンサートではシュトラウス家ゆかりの楽曲が多いんですっけ。
ウィーンフィルのニューイヤーコンサートは、元々はドイツによるオーストリア併合の期間に生まれたんだよね。ちょうど第二次世界大戦が始まった頃の話。
いわゆるアンシュルス(Anschluss)ってやつですね。ハートがアイアンするゲームで見たことある気がします。
なんでそんな物騒なゲーム知ってるんだよ…… 話を戻すけど、ドイツに併合された後のオーストリアでは「ドイツ的」な音楽の演奏が数多くされていたみたい。NASDP(ナチ党)による文化政策の一環だね。
とはいえ、オーストリアの人々のドイツへの反感は募るばかりだった。なので年末年始くらいはウィーン市民の大好きなウィンナ・ワルツを演奏しよう、ということで「オーストリア的」な明るい演奏会が開かれた…… というのが通説とされているね。
ウィーンといえばウィンナ・ワルツが有名ですもんね。「会議は踊る、されど進まず」。
ウィンナ・ワルツ
19世紀のウィーンで流行し、世界中に広まったワルツの様式。2拍子目がほんのり早めなのが特徴的。現在でもウィーンっ子にとっては社交ダンスが人生の必修科目となっていて、専用の教室も多数存在する。
関連リンク
ウィンナ・ワルツ - Wikipediaそんなわけでウィーンフィルのニューイヤーコンサートでは、現在でもウィンナ・ワルツやポルカといった舞曲がプログラムの中心に据えられている。逆に、交響曲みたいな「クラシック音楽の定番」みたいなのは基本的にやらない。
舞曲の中にメロディーが抜粋として入っていることはあるけれどね。ただ、このプログラムの主役はあくまでシュトラウス家による舞曲。そういった意味でもなかなか特殊なコンサートだよね。
詳しい説明ありがとうございます、だいたいわかりました。
さて、2021年のニューイヤーコンサートで演奏された曲の話でもしようと思うんですが、Spotifyで楽曲ひとつずつ探すのが大変そうだなぁ……
あ、それならもうSpotifyで当日の演奏が聴けるようになってたよ。1月10日くらいに。
早っ! 演奏会から10日後にはもう聴けるようになっているなんて、令和のスピード感は凄まじいですね。
販売もそうだけど、ストリーミングでもこんなに早く聴けるようになるのは便利でいいことじゃない。
ちなみに2021年のニューイヤーコンサートは、感染症流行拡大の影響もあって史上初めて無観客として開催されたんだよね。
テレビで見ていてもよく分かるくらいに音響がおそろしく良かったですよね。観客がいないとあそこまで響くもんなんですね……
それに加えて、普段は音源に入っているはずの観客の拍手が今年は入っていない。だから敢えて言わせてもらおう、今年(2021年版)のCDは買いだよ。ニューイヤーコンサートの録音条件としては史上最高の環境。
確かにそういう見方もできますね。Spotifyで聴けますけど、CDも買っちゃおうかな……
ちなみに例年は前々日(12月30日)と前日(12月31日)にも同じ曲目でコンサートが開催され、前日のものが録音として使われることが多い。
感想
というわけで前置きが長くなりましたが、感想タイムです。
あ、先に言っておきますが、まともな解説については日本ヨハン・シュトラウス協会のものを読むことをオススメします。わたしもユキさんも自由なことしか言いませんし。
出たな、いつもの丸投げ芸。
ちなみに、今年の指揮はリッカルド・ムーティ氏でした。イタリア出身で、ウィーンフィルとも関わりが深い方です。
関連リンク
リッカルド・ムーティ - Spotify作品番号まで載せると非常に見づらくなるので、シュトラウス家の人はファーストネームと続柄だけ載せてます。あと、曲名の日本語訳についてはNHKの訳に準じています。
前半で面白かったのは「ニコ・ポルカ」かな。ロシアのニコ殿下に献呈された曲で、どことなくロシア的な曲調を感じるよね。ニコ殿下の詳細については以下参照。
ロシアが大好きなヨハン・シュトラウス2世さん。自分の国より金払いがいいこともあって、ちょくちょくロシアに演奏旅行に出かけていたんですよね。他にも「ロシア行進曲」とかロシアっぽい曲は何個か作ってます。
あと、ヨーゼフの「憂いもなく」はそこそこ有名かな。わっはっはと笑い飛ばすのが特徴的な曲だよね。
ヨーゼフは天才です、異論は認めません。「憂いもなく」についてもなかなか絶妙なバランス感で纏められているのを感じます。
今年は後半も含めてヨーゼフの曲は2曲しか取り上げられなかったね。同じ弟でもエドゥアルトの方はひとつもなかったけど……
後半プログラム
フランツ・フォン・スッペ:喜歌劇「詩人と農夫」序曲
カレル・コムザーク2世:ワルツ「バーデン娘」
ヨーゼフ(弟):「マルゲリータ・ポルカ」op.244
ヨハン(父):「ヴェネツィア人のギャロップ」op.74
ヨハン(2世):ワルツ「春の声」op.410
ヨハン(2世):ポルカ・フランセーズ「クラップフェンの森で」op.336
ヨハン(2世):「新メロディー・カドリーユ」op.254
ヨハン(2世):「皇帝円舞曲」op.437
ヨハン(2世):ポルカ・シュネル「恋と踊りに夢中」op.393
後半はメジャーな曲も増えてくる。特に有名なのは「皇帝円舞曲」と「春の声」あたりかな。どちらも十大ワルツとして数えられるうちのひとつだね。
十大ワルツ
残りの8曲は「美しく青きドナウ」「ウィーン気質」「南国のバラ」「酒、女、歌」「芸術家の生活」「ウィーンの森の物語」「朝の新聞」「加速度円舞曲」「千夜一夜物語」などがよく挙げられる。誰が言い始めたかは知らないものの、みんな好き放題に挙げるので、よく数えてみたら11曲くらいあったりする。こういうの本当に困る。
「クラップフェンの森で」も面白い曲ですよね。鳥さんたちが「ぱっぽー」と鳴いたり「ピヨピヨ」と鳴いたり。こういう間の抜けた雰囲気の曲は割と好きです。
それ以外はわたしもあまり縁のない曲が並びましたが…… 「新メロディー・カドリーユ」はそこそこノリがよさそうに感じました。
カドリーユはそういう舞曲スタイルのための曲だけれど、「流行りの人気曲を集めてみた」みたいなものが多いね。今風に言うと、リミックスとかディスコアレンジみたいなものかな。
ディスコアレンジって、言うほど今風な言い方ですか? でも、わたしの知り合いもオタクな曲を持ち寄ってDJ会とかやってたので、そういうノリですよね多分。
で、当の「新メロディー・カドリーユ」は、ヴェルディやドニゼッティのオペラから6曲ほど抜粋してアソートにしたものみたいだね。
うう、「リゴレット」とかは生で見たことあるんですが、全然ピンときませんでした……
アンコール
ヨハン(2世):「狂乱のポルカ」op.260
ヨハン(2世):ワルツ「美しく青きドナウ」op.314
ヨハン(父):「ラデツキー行進曲」op.228
「狂乱のポルカ」の後は、指揮者の挨拶を挟んでから毎年定番の2曲。「美しく青きドナウ」と「ラデツキー行進曲」。
「今年は観客がいないからアンコールは起こらないぞ」って誰かが言ってて納得しかけたんですが、しれっとやりましたね。アンコールとは一体……
そこはほら、事前登録のオンライン拍手システムとやらがあったから、前半と後半の終わりに一応拍手が聞こえてきたじゃない。セーフだよセーフ。
オンライン拍手システム
事前登録でそういうシステムがあったみたいですね。気付いた時にはもうとっくに締め切ってました。というか初めて知ったの当日の放送中ですけど。
でも、最後の「ラデツキー行進曲」では毎年観客が拍手するのが恒例だけれど、今年はさすがに拍手がなかったね。例年の拍手ありバージョンは以下参照。
あのオンライン拍手システムとかいうの、「ラデツキー行進曲」のリズムに合わせて観客がオンラインでボタンを押すやつなのかと思ったんですが、そういうシステムでは全くありませんでしたね。
そんなことしたらタイムラグでえらいことになりそう。
でも、わたしも家でパーンパーンと拍手してましたが、あれをやると「新しい年が来た希望の年だ」って気分になりますね! なんだかんだで今年もちゃんと開催してくれて嬉しいです!
過去に「ラデツキー行進曲」をやらなかったこともあるんだけどね、スマトラ島沖地震の直後の2005年とか。
でも、2020年も世界的に苦難の年だったことを考えると、2021年のニューイヤーコンサートがどのような形であれ無事に開催されたことは素直に喜ばしいね。
世界的な「戦争」はまだまだ続くと思いますが、来年はもっといい形で開催できるといいなと願いつつ2021年を過ごしたいと思います。いいこと言った。
最後の7文字さえ言わなければね……
そういえば、2022年の指揮者も発表されていましたね。ダニエル・バレンボイム氏です。ニューイヤーコンサートにお呼ばれするのは3回目ですかね?
例年の習わしとして、ニューイヤーコンサートは開催直後に次の年の指揮者が発表される。2022年分の発表は少しだけフライング気味だった、というのは内緒。
わたしは2009年のバレンボイム氏の演奏はかなり好みなんですが、2014年の演奏はインターネット上ではなかなか評判が芳しくなく、今回の発表に対する反応も賛否両論の様相でした。
ちなみに2009年の演奏では「南国のバラ」が一番好みです。どっしりと重厚感もありながら、まろやかさや軽やかさも感じられる、素晴らしい演奏でした。
Spotifyで2009年の音源を探したら見つからなかったので、紹介は省略します。気になる方はCDやMP3を買ってみてください。
氏にはあの素晴らしい演奏のイメージが強いので、わたし的にはそこまで悪い印象がないんですよね。見た目もずんぐりしててかわいいですし。
中学生のベルは知らないだろうけど、バレンボイムもスラっとしたイケメンピアニストとして名を馳せた過去があるんだよ…… まぁ、その時代は私もまだ生まれてないんだけどね。
えっ、誰ですかこのスラっとしたイケメンは…… えっ、いや、さすがに嘘ですよね?
残念ながら本当だよ。色々と失礼な奴だな……
それはそれとして、始まる前からあんまり否定したくないし、私も素直に楽しみにしてるよ。クラシックのオタクはすぐ否定から入りがち、そういうのよくない。
まぁ、その前に2022年も無事にニューイヤーコンサートが開催されることを願うしかないですよね……
そう、まずはそこなんだよね…… 世界が平和に近づく1年になるといいね。
前半プログラム
フランツ・フォン・スッペ:「ファティニッツァ・マーチ」
ヨハン(2世):ワルツ「音波」op.148
ヨハン(2世):「ニコ・ポルカ」op.228
ヨーゼフ(弟):ポルカ・シュネル「憂いもなく」op.271
カール・ツェラー:ワルツ「坑夫の灯」
カール・ミレッカー:ギャロップ「大はしゃぎ」