都響スペシャル2020 (11/23) 雑感

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この記事の内容は、うさぎの主観がメインとなります。そのため、一般的な解釈や作曲者の意図とは必ずしも合致しません。ご理解いただける方のみお読みください。

導入

サントリーホール
Suntory Hall
東京都 港区
Minato, Tokyo, JAPAN
23 Nov 2020
うさぎ

というわけでサントリーホールに来ました!

雪貴

今日は都響(東京都交響楽団)の演奏会に来たんだよね。

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都響スペシャル2020
2020年11月23日(月) 14:00開演
サントリーホール 大ホール
指揮:小泉和裕
東京都交響楽団

メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」
チャイコフスキー:交響曲第2番「小ロシア」


雪貴

今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行を受けて、色んな公演が中止になったり延期になったりして大変だよね。相変わらず渡航制限も厳しいままだし。

うさぎ

ヤクブ・フルシャ氏が指揮予定だった12月の演奏会も中止となってしまいました。貴重なドヴォルザークの交響詩が……

雪貴

で、中止になった公演の実質的な振替公演として開催されているのが、この「都響スペシャル2020」だね。チケットは買い直す必要があるので注意が必要だけど。

雪貴

今日の公演も、元々は小泉さん指揮によるグリンカとチャイコフスキー中心のロシアプログラムの予定だったけれど、ソリストが来日不可になった影響で前半はメンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」に変わったんだよね。

うさぎ

わたしの好きなチャイコフスキーの交響曲第2番「小ロシア」まで中止にならなくてよかったです。これぞ不幸中の幸いってやつですね。

うさぎ

とまあ、演出上の都合により前回(10/25)前々回(10/11)と同じような前置きになりましたが、感染症対策や様式の変化についてはそちらの記事もご参照ください。


サントリーホール

うさぎ

おほ! 見てください、クリスマスっぽい飾りつけがされています! 「Deck the Hall with Boughs of Holly」ってやつですね!

雪貴

セイヨウヒイラギではないけれど、「'Tis the Season to be Jolly」ってやつだね。一年中こうだったらいいのに。


感想

うさぎ

というわけで感想合戦です。

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1曲目
フェリックス・メンデルスゾーン:
交響曲第4番「イタリア」

雪貴

メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」。メンデルスゾーンがイタリア滞在中に得た着想から作られた曲だね。

うさぎ

音楽とは少し離れますけど、当時の画家にとってはイタリアは「憧れの地」みたいな扱いだったんですよね。メンデルスゾーンも同じだったんでしょうか。

雪貴

メンデルスゾーンにとっては3年におよぶ大旅行の中のひとつだったみたいだけれど、交響曲第3番「スコットランド」に比べて「イタリア」は滞在中に大部分が書き上がったことからもその印象の良さが伺えるね。


うさぎ

第1楽章はとても風光明媚な雰囲気でした。イタリアと言われるとイタリアな気がしてきます!

うさぎ

でも明るいからといって、長調ばかりでもないんですよね。高音だから印象が明るく見えるだけで、短調でしっかりと切り刻んでくるのを感じました。「明」を際立たせるための「暗」ってやつですかね?

雪貴

音楽じゃなくてもよくやるやつだね。明るい色を「明るい」と認識させるために、周りの色を少し暗めに塗るのと同じ原理。もっと言えばスイカに塩をかけるのと一緒。


うさぎ

第2楽章はちょっとコメントしづらいんですが、前半部分の木管楽器の響きがとても綺麗でした。

うさぎ

そして第3楽章、早いスケルツォというよりは、のんびりしたメヌエットっぽい雰囲気でした。第2楽章が眠らせるための緩徐楽章で、こっちは眠らせない緩徐楽章って感じがします。


うさぎ

そして第4楽章は一気に激しくなります。スケルツォではないんですが、例えばブルックナーのスケルツォってだいたいこんな感じの雰囲気ですよね。

雪貴

分からなくもない。壮大なフィナーレっぽい溜めはせずに一気に走り切るから、余計にそう見えるのかもね。

うさぎ

というわけで、全体的にイタリアな雰囲気を感じたのは第1楽章だけだったんですが…… 他の楽章は第1楽章を受けてどう展開して遊ぼうか、みたいな感じでしょうか?

雪貴

一応、第4楽章の「Saltarello」はイタリアの舞曲のスタイルによるものみたいだけどね。とはいえ、全体的にそこまで憧憬を映し出すタイプの交響曲ではないと思う。


うさぎ

ところで、わたしはメンデルスゾーンに詳しくないので率直に言いますけど、これ作曲家によっては第4楽章の後に第5楽章があるパターンですよね? そのくらいフィナーレがあっさりしていたので……

雪貴

メンデルスゾーン自身も、何度か改訂に取り組んだみたいなんだよね。それは未完に終わったんだけれど、フィナーレっぽく手が加わったのかもしれないね。

雪貴

……ということで改訂版として世に出回っているバージョンをちょっと探してみたけど、フィナーレの部分はあまり変わらなかった。今度また探してみる。

うさぎ

ひーん……


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2曲目
ピョートル・チャイコフスキー:
交響曲第2番「小ロシア」

雪貴

2曲目は、チャイコフスキーの交響曲第2番「小ロシア」。チャイコフスキーの交響曲の中でも比較的知名度の低い、いわゆるマイナー曲だね。

うさぎ

マイナー曲と言いつつ、去年(2019年)はN響(NHK交響楽団)もこの曲を演奏してましたよね。当時の感想記事もあるので、ご興味のある方はどうぞ。

雪貴

「小ロシア」と言われるとロシア風なイメージが浮かぶかもしれないけれど、「小ロシア」とはウクライナの旧称のことで、この曲にもいくつかウクライナの民謡をモチーフにしたフレーズが埋め込まれているんだよね。

うさぎ

極東の我々から見れば、どちらも広義のロシア文化と言って差し支えない気はしますけどね…… 歴史的にはなかなか対立の深い地域ですが。


うさぎ

第1楽章の序奏の部分は、今日は大地を感じるような印象でした。主題に移ると、今度はそこで暮らす生き物の描写が見えるようでした。人間だけでなく、動物とかそういうのも含めた荒々しい雰囲気です。

うさぎ

そして次第にヒートアップしていき、その生き物たちが対立して大きくぶつかり合い、そして最後には静まり返る…… まるでひとつの交響詩のような楽章です。


うさぎ

第2楽章は、今日はすごくのんびりとしたペースでしたね。牧歌的でぼっかぼっかした感じでした。まるで日常パートという様相です。

雪貴

それでも完全にのんびりとした雰囲気にはならないところが、この曲のスケールの大きさを物語っているね。


うさぎ

第3楽章はまた対立のターンです。でも対立して戦っているものというよりは、それで焼かれて燃え上がる大地が見えるようでした。

うさぎ

途中で雰囲気が緩むところのピチカートが今日は特に際立っていました。まるでチャイコフスキーの交響曲第4番の第3楽章みたいな。

雪貴

その後にまた激しい主題が繰り返されるんだけどね。


うさぎ

第4楽章は、まるで「今のウクライナ」を感じるような印象でした。「今」と言っても実際は作曲当時(150年前)のことなんですが…… 幾多の対立の上に今がある、というのは2020年現在も変わらないと思います。

雪貴

お、なんか深いこと言おうとしてる。

うさぎ

そしてウクライナ民謡「鶴」モチーフの主題が始まるわけですが……

うさぎ

ところで第4楽章冒頭のドレミの部分も、この「鶴」モチーフから取られていると思うんですが……

雪貴

だろうね。

うさぎ

わたし気付いちゃったんですよ。ムソルグスキーの「展覧会の絵」の「キエフの大門」も同じようなフレーズから始まることを。調は少し違いますが。つまり、これこそがウクライナのテーマであると。

雪貴

言われれば確かに似てはいるけど、こじつけが過ぎるので却下。そんなこと言ったら「チューリップ」も歌えなくなる。

うさぎ

ひーん……

うさぎ

戯れ言はさておき、弦楽器が一気に駆け上がる部分をはじめとして、緊張感のある場面が続くのはたまりませんね! 生演奏の醍醐味でもあります!

うさぎ

ですが、曲のスケールが大きすぎるゆえに、ときどき音の響きが飽和してたのがちょっと気になりました。やはりこの曲は全体的なバランスが難しいですね。日本トップクラスの都響ですら振り回される部分があるとは……

雪貴

サントリーホールだと音の響きが良すぎたのかもね。でも、調の不安定な部分で少し振れつつも「鶴」の安定な部分でビシっと綺麗に揃うのが逆に効果的だった。もしかしたら、作曲者もそこまで考えてたのかな。


うさぎ

そして最後に一旦静まりかえった後は、また一段と加速して壮大にフィニッシュまで突っ込みました! いやー爆発的でしたね、やはり素晴らしい曲です!

雪貴

他のお客さんも大満足のようで、一般参賀もあったね。

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一般参賀
終演後、オーケストラのメンバーが退場しても拍手が鳴りやまず、指揮者だけ再び舞台上に戻ってくること。都響の演奏会では割とよくある現象。

うさぎ

感染症対策によりブラボー禁止令が出てますからね、たまってるってやつなのかな?


終演後

うさぎ

わーっ、こっちのツリーも明るくなってますよ! 都会は電飾がキラキラしてて綺麗ですね!

雪貴

日も短くなってきたし、2020年も残り1ヶ月と少々だね。ホリデーシーズンに向けて楽しみは増えるものの、少し寂しくなる季節。

うさぎ

今年は全然コンサートに行けなかった気がします。そもそも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大の影響で中止になった公演も多いですし……

雪貴

当の感染症の流行拡大も、一向に収まる気配がないから困ったもんだよね。日本なんて対策的にも経済的にもマシな方だよ、外を見たらキリがない。

雪貴

だからといって台風みたいに頭下げてじっとしてれば過ぎ去ってくれるかというと、そういうわけでもない。だったら、この状況下で対策をしながら事を進める他ない

うさぎ

確か「#コロナ下の音楽文化を前に進めるプロジェクト」って感じでデータ取ってるところありましたよね。NHKの番組か何かで見た気がします。

雪貴

ちなみに都響も独自にデータを取ってガイドラインを策定していたりする。

うさぎ

むしろ控室などでの何気ない会話、食事をとる時などに気を付けた方がいい」「ロビーで休憩する時の方が心配」って、実際にこういう文書で書かれると生々しいですね……

雪貴

結局はそこなんだよね。締めるべきところで締めないと、他でいくらそれっぽいポーズをしていてもすべて水の泡になってしまう。

うさぎ

なのでクリティカルなところは締めつつも、「ステージ上の間隔は1mあれば大丈夫」のようなそこまで締めなくてもいい部分は緩和していけばいいってことですね。

うさぎ

そういえば、都響もこの指針に沿って12月から16型編成を解禁するようですね。ちなみに今日は14型編成でした。

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公式ウェブサイト掲載文より引用
東京都交響楽団(都響)では、上記リンク先の行程表に基づき、7月に「ステージ1」で公演を再開し、9月公演の実績を経て、現在は「ステージ2」(3管14型)を許容する態勢でいます。また、弦楽器の編成については、12月からは、曲目や会場により16型を採用していく予定です。


雪貴

とまぁ、私がいつも見てる音楽系ブログの人が「もう全部自粛しろよ」みたいな投げやりな投稿をしていてちょっと頭にきたので、ベルの記事を使って参考資料付きの反論を載せさせてもらった。正直すまんかった。

うさぎ

うちに苦情来たらそのままユキさんに投げるので、わたしは別にいいんですけどね……

雪貴

我々一般人もそう。何次情報か分からないようなメディアだけを見て漠然と不安になるよりも、各自がちゃんとした一次情報にアクセスして、正しく恐れ、適切な対策をすることが大切。

雪貴

ゆくゆくは、今月ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が来日したように、適切な対策を施した上での人の往来が増えるといいね。

うさぎ

「いつまでもあると思うな何とやら」ではありませんが、そういうのも含めて目の前のひとつひとつを大切にしていきたいですね。旅行にしてもコンサートにしても。



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COVID-19の流行に伴う演出上の注意
演出上の都合のため、登場キャラクターはマスクやフェイスガードを着用していませんが、実際にはマスク着用などの感染症対策を十分に施したうえで訪問しています。