この記事の内容は、うさぎの主観がメインとなります。そのため、一般的な解釈や作曲者の意図とは必ずしも合致しません。ご理解いただける方のみお読みください。
導入
というわけで富山に遊びに来ました!
今日はN響(NHK交響楽団)の地方公演に来たんだよね。
首席指揮者のヤルヴィ先生がレア曲の「小ロシア」を指揮するわけですからね! 8月のエストニア・パルヌ音楽祭でも演奏していた曲ですが、日本でも取り上げてくれるなんて最高です!
「小ロシア」はそうそう演奏機会の多い曲ではないから、この曲を聴くためだけにエストニアに行こうかどうか検討してたくらいだもんね。結局日本でもやってくれることに決まって、私も安心したよ。
地方公演だけでなくて定期公演でも取り上げてくれれば良かったんですけどね…… まぁ地方公演といっても新潟県から割と近くだったので助かりました。
私もちょうど東京から地元に戻る用事があったから、大がかりな遠征にならなくてよかったよ。
しかし、9月だというのに台風のせいで連日蒸し暑いですね…… 富山の現在の気温は32℃ですって。
上越も朝から35℃だったもんね…… ほら、涼しいところで昼食を済ませたらホールに向かうよ。
オーバード・ホールとアーバンプレイス
ホール出入口
ここがオーバード・ホールですね。初めて来ましたが、なんかこう「オーバード!」って感じが溢れてますね!
どんな感じだよ…… ちなみに「『オーバード』は、英語で『夜明けの音楽』という意味を持ち、語源はフランス語の『aubade』で、17〜18世紀の王侯の朝見の儀で奏された音楽のことを指します」だって。公式サイトより抜粋。
感想
終演後の様子
というわけで終演したので、感想合戦を開始します。
1曲目
ピョートル・チャイコフスキー:
幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」
ダンテの「神曲」のうち「地獄篇」の一部を題材にした曲だね。大まかなあらすじはWikipediaでも読むといいよ。といっても、私も原作にはそこまで詳しくないんだけど。
初めて聴いた時はイメージを掴めなかったんですが、曲を覚えた今あらためて生演奏を聴くと、色んな風景が見えました。
たとえば?
まず見えたのは、混沌と渦巻いている悪夢のようなイメージですね。そして最初のフレーズに戻ってくるところで、夢から覚める。しかし、悪夢はより闇の深い現実となり、地獄のテーマとなって襲いかかってくるんです。
しかし、地獄の中でも花は咲きます。真ん中の落ち着いたシーンはまさにそういう、2人が静かに愛し合う姿が見えました。
ですが別れの刻は来てしまいます。2人を引き裂く運命、しかし離れられずに再び抱き合い、最後の瞬間まで愛を確かめ合う2人。このあたりの感情表現がまるでバレエ音楽のようで情熱的でした。
そして目覚まし時計のような小さなファンファーレの後、再び地獄のテーマが、より大きな波になって襲ってくるんです。特に最後の部分は、これからの地獄で待ち受ける運命を描写するエピローグのように見えました。
あのクライマックスは、1曲目から全開で来たな、って感じだったよね。思わず立ち上がってブラボーと叫びたくなったよ。
最後、ソ(G)の連打の迫力が恐ろしすぎて泣きそうになりました。いや、本当に大迫力で凄かったです。
……あれ、そういえば原作のあらすじ的には、まず現世で2人が恋をして、殺された後に地獄に落ちるんですよね?
うん、そうみたいだね。
わたしには最初から地獄の中にいるようなイメージが見えた気がしたんですが…… 別れのシーンまでは現世での出来事だったのかな?
まあ、「逃れきれない現実が地獄そのもの」みたいな見方はよくあるし、そこは別にいいんじゃないかな。もしかしたら、今度聴く時はまた別なイメージが見えるかもね。
2曲目
マックス・ブルッフ:
ヴァイオリン協奏曲第1番
マックス・ブルッフの作曲した曲のうち、最も有名なヴァイオリン協奏曲第1番だね。
第1楽章が特にカッコイイので好きな曲です!
私の個人的なイメージでは「剛健・パワー」って雰囲気の曲なんだけれど、今日は「繊細・可憐」って感じだったね。
そこまで重くなさそうな感じでしたね。でも一気に加速するところはさすがの加速感で鳥肌立ちました。
そして、1曲目で相当疲れてしまったのでついうとうとしてしまい…… 第2楽章でフィンランドが、第3楽章でお花畑がそれぞれ見えたような気がします。
あまりに気持ちよさそうに眠ってたから、そのままにしておいたよ。
3曲目
ピョートル・チャイコフスキー:
交響曲第2番「小ロシア」
チャイコフスキーの交響曲第2番「小ロシア」は、チャイコフスキーの交響曲の中でも比較的知名度の低い、いわゆるマイナー曲だね。
どうしてマイナーなんですかね、わかりやすくていい曲なのに……
ちなみに「小ロシア」とはウクライナの旧称のことで、この曲にもいくつかウクライナの民謡をモチーフにしたフレーズが埋め込まれているそうな。
あ、ロシアの民謡じゃなくてウクライナの民謡がモチーフだったんですね。不勉強ですみません……
まあ、あのあたりは歴史的に色々と対立してきた地域だけれど、ロシア文化の濃い地だから広義にはそこまで間違いでもないのかな。
関連リンク
小ロシア - Wikipediaまず第1楽章、ジャン!と大きく鳴らしてからは、かなりゆっくり、すごく静かに始まりましたね。そしてそこからは次々と旋律が重なり合い、畳みかける。最後は消え入るように小さくなる……
まるで、ひとつの民族集団がそこの土地に入ってきて、定住して繁栄し、そして最後は衰退して去りゆく、という光景が見えるようでした。
ほうほう。
途中の繰り返し畳みかけるような部分は、戦いというよりはひとつの大きな建物を建てているような風景が見えました。
そしてクライマックスのけたたましい大太鼓は、まるで嵐のようでした。嵐が来て、家も畑もみんな根こそぎ持っていかれて、残された者が呆然と佇み、最後には土地を諦めて去っていく…… そんな風景が見えました。
モチーフ元が民謡だから、聴いている側は民族的な憧憬と結びつけやすいんだろうね。
第2楽章も静かに入って静かに終わるので、第1楽章とは別の民族集団の物語が見えました。今度は大きな繁栄も天災もなく、いくぶん牧歌的な暮らしが見えましたが。
そして第3楽章、ここは静かに演奏する緩徐楽章のようなイメージを今まで持っていたんですが、いざ生演奏で聴いてみたら大迫力のシリアスな雰囲気だったので驚きました。
抑えるどころかむしろ大きく鳴らしてたよね。一気に緊張して引き締まる感じ。
そういえば、第3楽章だけは民謡をモチーフにしたフレーズが使われていないんですよね。
つまり、外からの侵略を表しているんですよ! オスマン帝国が南から攻めてきたんです!
こらこら、落ち着きなよ。でも、明確にオスマン帝国を表そうとするなら、もう少しイスラムっぽい響きになると思うんだ。例えばリムスキーコルサコフ作曲の「アンタール」や「シェヘラザード」みたいな。
うーん、わたしには確かにオスマン帝国の影が見えたんですが…… でもそれを明示するような旋律ではないですもんね、うーん……
明示するよりも、色んな方向から解釈ができるようにあえて含みを持たせたのかもね。
でも具体的にどの時代の戦いなのかはイメージできませんでした。史実だとどんな感じなんでしたっけ。
ロシアとオスマンって何回も戦争してるからね、それこそ枚挙にいとまがないよ。
関連リンク
露土戦争 - Wikipediaそして第4楽章、勝利のファンファーレなのかと思いきや、「ロシア帝国ですこんにちは」という感じの荘厳なファンファーレでしたね。
ファンファーレ部分、パーヴォさんはかなり重厚にゆっくり演奏してたよね。あれで私もロマノフ王朝みたいなイメージを意識しちゃったよ。
そしてそこから一転、ウクライナ民謡「鶴」モチーフのフレーズを軽快なスピードで飛ばしていくのがゾクゾクしました。鳥肌が止まりませんでしたよ。
なかなかのスピードで飛ばしているのに、特に弦楽器なんてまるで1本の線のように一糸乱れぬ響きだったもんね。今日は特に際立ってたよね。
すごい緩急で振り回しても、時には一本の線のように細く、時には意識を持った生き物のように激しく襲い掛かってきて、ヤルヴィ先生とN響のコンビが世界トップクラスと言われるのもよく分かります。
そして、そうやって勢いよく振り回さないとうまく捌けないところが、この曲を「マイナー曲」に押しとどめている所以なのだろうか、とちょっと思いました。
確かに、高速で突っ込むだけだったら空中分解しちゃいそうな場所だもんね…… かといってそこだけゆっくりやるわけにはいかないし、とても難しそう。
フィニッシュの同音連打でも1拍ずつはっきりと音量が変わっているのが分かって、「すごい」を通り越して恐ろしさすら感じました。いやほんとに爆発的な演奏でした……
アンコール
ピョートル・チャイコフスキー:
歌劇「エフゲニー・オネーギン」より「ポロネーズ」
アンコールは他の公演と同じく「エフゲニー・オネーギン」の「ポロネーズ」だったね。
そこまでビシッとせずに、のんびりゆったり鳴らしてた印象でしたね。あまり激しくなかったです。
そりゃ前半も後半もあれだけ激しかったんだし、アンコールまでビシッと引き締めてたら聴く方も疲れちゃうでしょ。
というわけで、今日はどうだった?
マジ泣きしました。生きててよかったです。
そこまでか。気持ちはよく分かるけど。
「小ロシア」は比較的マイナーですし、生きているうちに生演奏を聴けるなんて思ってませんでしたもん。しかも大好きなヤルヴィ先生の指揮だなんて。
地方公演はモノによって気合の入り方がまちまちだったりするけれど、今日の演奏はかなり気合が入っててよかったね。
生演奏を聴いて初めて見えるような風景もいっぱいありますし、そういう意味でも今日は本当にすばらしい演奏でした!
さて、次の新幹線まで1時間以上あるし、パーヴォさんのサイン会終わったら軽くごはんでも食べてから帰ろうか。
わーい! せっかく富山まで来たので、ホタルイカをアテにしてジュース飲みたいです!
ホール出入口 (アーバンプレイス側)
富山駅 (北側)
駅の北側では路面電車の南北接続工事中
富山駅 (南側)
新幹線ホーム
新幹線からの夕景
NHK交響楽団 富山公演
2019年9月8日(日) 15:00
オーバード・ホール (富山市芸術文化ホール)
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ (Paavo Järvi)
ヴァイオリン:川久保賜紀
NHK交響楽団
チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番
チャイコフスキー:交響曲第2番「小ロシア」