都響スペシャル2020 (10/25) 雑感

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この記事の内容は、うさぎの主観がメインとなります。そのため、一般的な解釈や作曲者の意図とは必ずしも合致しません。ご理解いただける方のみお読みください。

導入

サントリーホール
Suntory Hall
東京都 港区
Minato, Tokyo, JAPAN
25 Oct 2020
うさぎ

というわけでサントリーホールに来ました!

雪貴

今日は都響(東京都交響楽団)の演奏会に来たんだよね。

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都響スペシャル2020
2020年10月25日(日) 14:00開演
サントリーホール 大ホール
指揮:小泉和裕
東京都交響楽団

ベートーヴェン:交響曲第4番
ブラームス:交響曲第3番


雪貴

それにしても今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行を受けて、色んな公演が中止になったり延期になったりして大変だよね。相変わらず渡航制限も厳しいままだし。

うさぎ

都響はそれで中止になった公演の実質的な振替公演として、この「都響スペシャル2020」を開催しているんですよね。チケットは別途買い直す必要があるのでそこだけ注意が必要ですが。

雪貴

プログラム内容が多少変わってしまうのも残念な点でもあるけれど、春先のCOVID-19流行拡大期ではそれこそイベントの開催もままならない状況だったからね、こうして再び開催してもらえるだけでもありがたいものだよ。

うさぎ

とまあ、演出上の都合により2週間前の演奏会の記事と同じような前置きになりましたが、感染症対策や様式の変化についてはそちらの記事をご参照ください。


雪貴

ところで、今日はちゃんとお茶を持って来た? 前回は水分補給する場所がなくて大変だったみたいだけど。

うさぎ

(←すっかり忘れていた時の顔)

雪貴

おい…… 仕方ない、そのへんのお店で先に買ってから中に入ろうか。

サントリーホール

ショップは休止中

うさぎ

あっ、ゲルギーだ。来日するんです?

雪貴

ウィーンフィルの来日公演、3週間後なんだね。そもそも来日できるのかな、指揮者もオーケストラも…… 販売再開ってことは目途が立ったってことなんだろうけど。

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後日追記:
賛否両論で界隈が紛糾する中、隔離等の徹底的な感染症対策を行った上で各公演とも催行されました。

うさぎ

都響やN響(NHK交響楽団)を始め、指揮者やソリストが来日できないという理由で様々なオーケストラが予定変更を余儀なくされていますからね。渡航制限の問題や国際線の運行本数の問題もありますが、これがモデルケースになってくれるのなら……


感想

うさぎ

というわけで感想合戦です。

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1曲目
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン:
交響曲第4番

雪貴

1曲目はベートーヴェンの交響曲第4番。交響曲第5番「運命」や交響曲第6番「田園」と同じような時期に作られた曲だけれど、この曲は短期間のうちに一気に書き上げられたみたいだね。他と比べると知名度は低め。

うさぎ

ひたすら長調の明るい曲というイメージだったんですが、それでも序奏の部分と終盤あたりははっきりとした短調なんですよね。そして最後は、まるで物語を本として綴じる背表紙のように、長調となって終わる……

うさぎ

わたしは交響曲は1冊の物語のようなものだと思っているので、じゃあベートーヴェンはこの曲をどのような物語として残したかったのだろう、っていうところまで見れなかったのが残念でした。ただの勉強不足ですけど。

雪貴

「暗から明へ」とか、「勝利」や「革命」といった分かりやすいテーマばかり読んでるからだよ……

雪貴

しかし「音楽的に挑戦的かつ独創的な仕組みが至るところに仕掛けられている」と言われているのに、それをうまく楽しむことができなかった私もまた、同じ穴のムジナなのである。難しいね。

うさぎ

これより後の時代の楽曲は、挑戦的かつ独創的な音楽ばかりですからね…… さすがにそこはバロック派音楽や古典派音楽にずっぷり浸かってないと難しいんじゃないですか?

うさぎ

それはそれとして、ベートーヴェンの交響曲は聴きながら色々なことを考えられるのでいいですね。自分の行いを省みるのにちょうどいいです。

雪貴

お仕置き部屋じゃないんだから…… わからなくもないけど。


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2曲目
ヨハネス・ブラームス:
交響曲第3番

うさぎ

休憩を挟んで2曲目は、ブラームスの交響曲第3番です。

雪貴

ブラームスの交響曲第2番は「青春」で、そして交響曲第3番は「片想い」だと私は思うんだよね。

うさぎ

いきなり何を言ってるんですかこの人は…… でも、わたし的にもそれぞれ「青春」と「失恋」といったイメージなので、そこに何の違いもありはしないですね。

雪貴

違うのだ。「失恋」の概念は数あれど、「片想い」の場合はそもそも恋愛関係が始まっていないのだ。そしてまた、想い続けている間はその恋は終わらないという見方もでき……

うさぎ

ちょっと長くなりそうなので音楽の話に戻してください

雪貴

この作曲時期、ブラームスはとある年の離れた女性歌手と懇意にしていた。周囲から「あいつらそろそろ結婚するんじゃないか」とまで見られたほどの関係について、考慮に入れながら聴いてみると味わい深いかもしれない。

うさぎ

今回のプログラムにも「ブラームスはあまりに年齢の違う彼女との結婚をはじめから諦めていたようだ」と書いてありましたね。なるほど、そう考えると「失恋」よりは「片想い」という見方の方が近いのかも……

うさぎ

あとは、2週間前の演奏会で聴いたドヴォルザークの交響曲第7番との共通点についても気になるところですね。

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ドヴォルザークは、ブラームスの交響曲第3番の演奏にモチベートされて、交響曲第7番を作曲した。そのため随所に共通点のようなものも見られる。2週間前の演奏会の記事も参照。


うさぎ

第1楽章は割と明るめなシーンから始まるんですが、都響にしてはちょっと印象が軽めというか、どこか浮足立っているような音の感じがしました。

うさぎ

ところが、少し経って暗めの雰囲気に変わるあたりで、いきなり音にどっしりと安定感が出るのを感じました。きっと今までの明るい雰囲気はただ浮かれていただけで、こっちの暗い雰囲気が本当の心境なのでしょうね。

うさぎ

そして駆け上がるように第1楽章の終盤にひとつのクライマックスを迎える…… ここの勢いのよさは格好いいですね。ドヴォルザークの交響曲第7番の第1楽章とも通ずるものを感じます。


うさぎ

第2楽章は落ち着いた雰囲気の緩徐楽章です。静かでいながらも、心のどこかで落ち着かない、そんな感情が滲んでいるようです。

うさぎ

途中から音にぐっと厚みが増すのが感じられました。今まで1人しかいなかったのが2人になった、みたいな。まるで恋人と寄り添っているかのように。それでもやはり心の片隅がざわめいているような、不穏な響きが残るのを感じます。


うさぎ

第3楽章のメランコリックなメロディーは割と有名ですよね。何度も繰り返されますし。

雪貴

ブラームスの交響曲第3番といったらこれ、という人も少なくない。

うさぎ

何度も繰り返されるってことは、同じような議論を堂々巡りしているのでしょうか? 今までは「失恋」というイメージだったんですが、そうではなく「苦悩」のようなものが偲ばれます。

雪貴

さっきも言ったとおり、「ブラームスはあまりに年齢の違う彼女との結婚をはじめから諦めていたようだ」という解釈から見ると、その「苦悩」が何なのかがぼんやりと見えるようだよ。


うさぎ

そして第4楽章は、心が張り裂けそうなほどの悲劇的な衝動が襲ってきます。

雪貴

なんかね、ベルは分からないかもしれないけれど、片想いってこんな感じなんだよ。苦しくて、でもどうしようもなくて。逃げたくても、どこにも逃げられない。

雪貴

誰も何も解決してくれない。本人が諦めているのなら、尚更どうしようもない。

うさぎ

第1楽章で迎えたのと同じくらいか、それを超えてくるような激しいクライマックスが、それを物語っていますね。聴いているだけでも苦しくなってくるようです。

うさぎ

しかし最後の最後で第1楽章の最初のテーマが重なり、とても安らかで幸せな雰囲気の中で終曲を迎えます

うさぎ

人の想いは移りゆけども、確かに存在したあの日々は、いつまでも色褪せることなくそこにある…… そんな心情が見えるようで、ちょっと涙が出ちゃいました。

雪貴

「女は自分を笑わせた男しか思い出さず、男は自分を泣かせた女しか思い出さない」、誰の言葉だったかな。それでも、綺麗な思い出は綺麗なまま残しておきたいものだからね。


うさぎ

とまあ、言われてみれば確かに、ドヴォルザークの交響曲第7番との共通点もかなり多いような気がしますね。これはCDで聴いてるだけじゃ分からないです。

雪貴

全体的に明と暗とが共存し、どちらであるとも言い切れず、それでいてどちらの側面もはっきりと持っているのがこの曲の特徴だね。

うさぎ

ブラームスの4つの交響曲の中では一番小粒な印象があったんですが、今日の演奏ではっきり印象が変わりました。最初に覚えたはずの交響曲第1番が、今となっては一番よく分からないイメージという……

うさぎ

それはそれとして、やはり小泉さんと都響のコンビは安定感は凄まじいですね! 周囲のお客さんも大満足のようでした!


終演後

雪貴

というわけで、今日はどうだった?

うさぎ

やはり、思っていた以上にベートーヴェンが難しかったのが悔しいです。何度もCDで聴いて知っているはずの曲なので、ぶっちゃけ「生で聴けば何か見えるだろう」とか思ってたんですが……

雪貴

古典派とロマン派の過渡期だからね、それは仕方ない。

うさぎ

やはりロマン派以降の標題音楽がわたしにとって一番わかりやすいので…… その時代になってくると純粋音楽でも感情が乗ってきますし。今日のブラームスみたいに。

うさぎ

それはそれとして、ベートーヴェンの前期の交響曲は「英雄」を除けばそこまで演奏機会があるわけでもないので、機会があったら積極的に聴いてみようと思います。

雪貴

がんばれ。なんなら毎年大晦日にやってるベートーヴェンの交響曲を全部演奏するやつとか行ってみれば?

うさぎ

あー、確かそんなのありましたね…… 大晦日って毎年だいたい冬コミ(コミックマーケット)と被るのでノーマークだったんですが、確かに今年は冬コミが開催されないから考慮してもいいのかも……

雪貴

同様の理由で私も行ったことがないんだけれど、13時開演で24時頃に終わるという、なかなかハードなお祭りらしいね

うさぎ

うーん、東京で年を越すのはなんか嫌だなぁ…… というか、そろそろ年末の過ごし方も考えなければいけない時期なんですね。来年は本気出します

雪貴

それ、毎年聞いてるから。



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COVID-19の流行に伴う演出上の注意
演出上の都合のため、登場キャラクターはマスクやフェイスガードを着用していませんが、実際にはマスク着用などの感染症対策を十分に施したうえで訪問しています。