都響スペシャル2020 (10/11) 雑感

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この記事の内容は、うさぎの主観がメインとなります。そのため、一般的な解釈や作曲者の意図とは必ずしも合致しません。ご理解いただける方のみお読みください。

導入

東京芸術劇場
Tokyo Metropolitan Theatre
東京都 豊島区
Toshima, Tokyo, JAPAN
11 Oct 2020
うさぎ

というわけで池袋の東京芸術劇場に来ました!

雪貴

今日は都響(東京都交響楽団)の演奏会に来たんだよね。

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都響スペシャル2020
2020年10月11日(日) 14:00開演
東京芸術劇場 大ホール
指揮:梅田俊明
ピアノ:田部京子
東京都交響楽団

ベートーヴェン:序曲「コリオラン」
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番
ドヴォルザーク:交響曲第7番


雪貴

それにしても今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行を受けて、色んな公演が中止になったり延期になったりして大変だったよね。

うさぎ

わたしが楽しみにしてたオスモ・ヴァンスカ氏が指揮予定だった11月の演奏会も、渡航の許可が下りずに中止となってしまいました。貴重なシベリウスの交響曲第3番が……

雪貴

で、中止になった公演の実質的な振替公演として開催されているのが、この「都響スペシャル2020」だね。チケットは買い直す必要があるので注意が必要だけど。

うさぎ

春先のCOVID-19流行拡大期ではそれこそイベントの開催や地方から東京への移動もままならない状況でしたから、こうして再び開催してもらえるだけでもありがたいです。

雪貴

そうだね、そういえば私もコンサートに来るのは実に半年以上ぶりかな。そろそろ中に入るよ。

東京芸術劇場

大ホール入口


雪貴

えっと…… だいぶ様式が変わったね。入場時にサーモグラフィーで検温、チケットのもぎりはセルフ、プログラムを自分で取って、さらに追加でのアルコール消毒…… これ用意する方も大変なんだろうな。

うさぎ

それより、給水機が使用停止になって、バーラウンジも閉まっているので水分補給ができません! うっかり水を飲まずに来てしまったので、喉が渇いて生命の危機です……

バーラウンジも閉鎖中

雪貴

お、おう…… それは確かに事前にペットボトルとか買っていかないとえらい目に遭うね。私のお茶を分けてあげるからこれで我慢して。

うさぎ

ひーん、ありがとうございます……

雪貴

あと、今までは「携帯電話の電源をお切り下さい」だったのが、それだと接触確認アプリが動かなくなるからスマートフォンの電源を切るのは非推奨になってるみたいだね。時代は変わるなあ……


感想

終演後

うさぎ

というわけで感想合戦です。

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1曲目
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン:
序曲「コリオラン」

雪貴

1曲目はベートーヴェンの序曲「コリオラン」。交響曲第5番「運命」や交響曲第6番「田園」と同時期の作品で、もともとは同名の悲劇「コリオラン」のために作られた曲、だったんだけど……

うさぎ

だったんだけど、どうなったんですか? ポロヴェツ人がダンスでもするんです?

雪貴

そうじゃない。話を戻すけど、序曲「コリオラン」は、現在は原作とは切り離されて考えられているんだよね。直筆譜から「悲劇コリオランのための」というタイトルが消された形跡がある、とプログラムにも書いてあるように。

うさぎ

ほー、つまりチャイコフスキーの幻想序曲「ロメオとジュリエット」みたいなものって理解しておけばいいんですかね。


うさぎ

で、原作が悲劇ということもあって、曲自体は全体的に激しめの雰囲気でした。たまに休むような甘いメロディーが挟まったと思ったら、また一瞬で激しさに飲み込まれるという。

うさぎ

なんというか、まるで今年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大による、いわゆる「コロナショック」の様相と似ているな、って思ったのは考えすぎですかね。

雪貴

考えすぎって言いたくなったけど、そもそも曲を個人がどう捉えるかは自由だね。

うさぎ

いや、文字だと伝えづらいんですけど、急な展開から静かな場面に移った時の安堵感とか、そこからまた急な展開に突き落とされる時の絶望感とか、なんか春先から夏にかけて何度も味わった気がするなあと。

雪貴

微妙に共感できるのがちょっと困る。曲の最後は消え入るように終わるから、最後までその解釈だとかなり困るんだけど。

うさぎ

先入観なしで挑むと色んな見方ができて面白いですよね、ってことでここはひとつ。


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2曲目
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン:
ピアノ協奏曲第4番

雪貴

続いて、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番。「コリオラン」よりも少し前に作られた曲だね。だいたい同時期の作品だと思っていい。

うさぎ

わたしにはイメージの掴みづらい曲だったので、感想は省略させていただきますね。

雪貴

2年前の演奏会の記事見たら全く同じこと言ってて笑うんだけど。

うさぎ

ちょっと、そんな昔の記事掘り返さないでくださいよ!

うさぎ

いや、モーツァルトとかベートーヴェンとかそのあたりの時代の協奏曲って、わたしにとっては少し対話しづらいんですよね。ちょっと勉強すれば何か変わるのかもしれませんけど……

うさぎ

この曲も、悲劇的な盛り上がりの「コリオラン」と比べたら、終始かなり穏やかな進行じゃないですか。

雪貴

んー、第1楽章はそういうイメージになるかもしれないけど、第2楽章は掘ってくるし、第3楽章は跳ねてくるし、わりと起伏あると思うんだよね。

うさぎ

それもそうなんですけれど、ピアノの甘い音色が都度それらを打ち消して、全体としてはかなり穏やかな曲調になってると思うんですよね。

雪貴

まあ、「コリオラン」もドヴォルザークの交響曲第7番もどっちもかなり激しい曲だから、この枠まで激しかったら聴いてる方も演奏する方も疲れると思う。そういう意味では穏やかでちょうどいいのかもしれない。

うさぎ

あー、それは確かに。


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3曲目
アントニン・ドヴォルザーク:
交響曲第7番

うさぎ

そして3曲目はドヴォルザークの交響曲第7番、わたしこの曲大好きなんですよね。演奏機会はそこまで多くないんですが……

雪貴

確か都響は2018年にも演奏してたはず。指揮者は小泉さんだったかな。

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※第856回定期演奏会A。(2018年5月28日)

うさぎ

わたしがこの曲の良さを知ったのは、その演奏会のちょうど2日後くらいなんですよね、タイミングが悪すぎた…… たまたま今回の振替的な公演でプログラムに追加されて、わたしにとってはラッキーでした。

うさぎ

長調で終わって長調で終わる交響曲第6番や交響曲第8番とは対照的に、第1楽章も第4楽章も短調っていうのが特徴的です。そういえば交響曲第9番「新世界より」も同じく短調で始まり短調で終わりますよね。

雪貴

第6番と第7番、第8番と第9番がそれぞれ対称性を持っている、って言いたいのかな。着眼点としては面白いと思うよ。


うさぎ

第1楽章は、まるで静かな夜の中でふと誰かが物語を話し始めるような雰囲気から始まり、いつのまにかその物語の内側、精神的な世界に吸い込まれてしまいます。

うさぎ

ドヴォルザークの故郷でもある19世紀半ばのチェコは、他の地域同様に民族主義や自由主義が高まっている時代だったので、なかなか情熱的に燃えたぎるような内面を感じました。

雪貴

当時のチェコといえば、オーストリアの影響下にあった頃だね。チェコスロバキアとしてオーストリア=ハンガリー帝国から独立を果たすのが1918年なので、そこから数十年ほど前の話。

うさぎ

第1楽章は「という話だったのさ」という感じで現実に引き戻されて終わるのかと思いきや、更にメラメラと燃えるクライマックスへと突入していきます。わたしが一番好きな場面でもあるんですが、解釈としてはなかなか不穏な場面ですね。

うさぎ

特に、この曲は第1楽章が全体のクライマックスみたいな節があるんですが、楽章の最後の方は憧憬と内面の区別がつかなくなるというか、「どこまでがフィクションだっけ?」と混乱しちゃいました。

雪貴

……いや、全部まとめてフィクションだけどね?

うさぎ

それは言わなくていいです。


うさぎ

で、第2楽章は緩徐楽章なのでまったりとした曲調です。でもドヴォルザークの緩徐楽章ってだいたい強くて激しいですよね

雪貴

作曲家によるよね。安心して眠れるような音楽にする人もいれば、逆にドヴォルザークなんかは寝かせる気が全くないくらいの曲調が多い。

雪貴

とはいっても、この第2楽章はこの曲の楽章のなかで唯一の長調なんだよね。そういう意味でもアクセントがきいてると思う。

うさぎ

それにしても、CDで聴くのと違って何倍も激しいのは想定外でした。これに加えて第3楽章も交響曲第6番みたいな超激しいのがきたらどうしようかと、展開を知っていながらも少し心配になりました。


うさぎ

で、第3楽章なんですが、スラヴ舞曲と呼ぶべきかボヘミア舞曲とでも呼ぶべきか……

雪貴

チェコの舞曲の形式をうまいこと持ってきた、ドヴォルザークらしいスケルツォ。

うさぎ

この楽章は、交響曲第6番の第3楽章と並んでお気に入りです。楽章単体でも、急・緩・急と分かりやすいメリハリがきいてていいですよね。メロディー自体も大好きです、ドヴォルザークは本当にこういうの上手。


うさぎ

そして第4楽章は今までで最も悲劇的な展開となります。すべての希望が打ち砕かれ、この世の終わりの様相です。空がひび割れ、太陽が燃え尽き、海は枯れ果て、月は砕け散るんですよ。

雪貴

その言い回しは著作権団体が飛んできそうだからやめなさい。というか、そこまで破滅的ではないでしょ。確かに悲劇的だけどさ。

うさぎ

ドヴォルザークは、ブラームスの交響曲第3番にモチベートされてこの曲を作ったそうですが、第4楽章に限ってはどちらかというとブラームスの交響曲第4番の方に雰囲気が近いですよね、絶望感というか何というか。

雪貴

それは私もちょっと思った。経緯的にはブラームスの交響曲第4番の方がこの曲よりも少しだけ後に作られるんだけどね。あとはチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」とも似てる。

うさぎ

どちらも「人生の終わり」的な雰囲気で有名なやつよね。もっとも、この曲の方は命の終わりというよりはもっとスケールの大きな絶望感が襲って来るような気がします。

うさぎ

でも、それに押しつぶされる終わり方というよりは、最後まで抗って引っくり返し、勝利を掴み取るような熱い終わり方でした! アツいですね!


うさぎ

そういうのもあって、民族抒情詩的な物語を読んでいるようでした。スメタナの「我が祖国」みたいな。これが正しいなら、ボヘミアの人たちは相当情熱的な人たちのようですが……

雪貴

チェコにはそこまで詳しくないから、それが合ってるかどうかははっきりとは分からない。まだ行ったこともないし。

うさぎ

いつか行ってみたいですね、中欧や東欧……


雪貴

というわけで、今日はどうだった?

うさぎ

チェコに行きたくなりました。

雪貴

それはさっき聞いた、はい次。

うさぎ

今までさんざんCDで聴いている曲でも、生で聴くとやはり全然違いますね。毎回同じこと言ってる気もしますが……

雪貴

それも毎回聞いてる気がする、はい次。

うさぎ

ひーん……

うさぎ

あと、この時期限定で特筆すべきこととしては、感染症対策の一環として座席を一席ずつ空けてチケットが売られている、ということですね。横の人の所作が気になって集中力削られるタイプなので大変助かります。

雪貴

興行という面から見たらあまり望ましいことではないかもしれないけれど、音楽鑑賞の環境としてはこれまででは考えられないほどの好条件だね。プレミアムチケット的に何かしらの形で残ったりすると嬉しいけど。

うさぎ

誰にも邪魔されずに鑑賞できる環境、っていうのは万人の理想ですからね。その点、映画館なんかは少し進んでますよね。

雪貴

そういう意味では、こういう普通の公演でもオンラインで配信していつでも自宅で見れるようにする、っていうのもいいかもしれない。既に似たような試みはやっていたわけだし。


雪貴

ちなみにさっきベルが言ったとおり、ドヴォルザークはブラームスの交響曲第3番にモチベートされて交響曲第7番を作ったわけだけど、そのブラームスの交響曲第3番も都響は再来週(10/25)の演奏会で取り上げるみたいだよ。

うさぎ

順番逆の方がよかったのでは? って言うのはさすがに野暮ですかね。わたしはどっちの曲もよく知ってるのでいいんですけど。

雪貴

チケット買っといたから再来週もよろしくね。

うさぎ

えっ…… まぁ行きますけど。交通費も半分出してくださいよね。

帰路



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COVID-19の流行に伴う演出上の注意
演出上の都合のため、登場キャラクターはマスクやフェイスガードを着用していませんが、実際にはマスク着用などの感染症対策を十分に施したうえで訪問しています。