あらすじ
Spotify
スウェーデンで創業された音楽配信サービス。洋楽やクラシック音楽のレパートリーが非常に豊富なことが特徴。無料でも利用できるが、月額約1000円の有料プランに加入することでストレスなく利用できる。とても便利。
本編
というわけで、Spotifyで聴けるクラシック音楽のオススメを教えてください。
んー、じゃあ今日はロシアの話をしようか。東の端は日本や中国に、西の端はフィンランドやノルウェーにそれぞれ面している東西に長い国だね。モスクワやサンクトペテルブルクといったヨーロッパ側が、政治的にも文化的にも中心だよ。
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ロシア - Wikipedia1991年に現在のロシア連邦が成立する前は、ソビエト連邦がロシアとその周辺諸国をまとめていたんですよね! ソビエトロシアでは国家があなたを紹介する!
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ソビエト連邦 - Wikipediaそして、1917年にロシア革命が勃発する以前は、ロマノフ朝による支配が何百年も続いていたよ。いわゆるロシア帝国の時代だね。
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ロシア帝国 - Wikipediaで、ロシアにおいて近代的な音楽が花開いたのは、ミハイル・グリンカの時代まで遡らないといけないんだけど……
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ミハイル・グリンカ - Spotify19世紀中盤になると、主に2つの潮流が目立つようになる。まずひとつは、西欧的な作曲法に捉われずにロシア的な楽曲構成法を確立しようとした潮流。その中心がサンクトペテルブルクを拠点としたロシア5人組だね。
もうひとつは、ロシア的な要素は取り入れつつも西欧的な楽曲構成法を軸として音楽を組み立てようとする潮流。その中で最も活躍したのがチャイコフスキーだね。チャイコフスキーはモスクワを主な拠点としていたよ。
……あれ? 西欧に近いサンクトペテルブルクではロシア5人組が民族主義的な音楽を作り、西欧から遠いモスクワのチャイコフスキーがより西欧的な規範のもとに音楽を作るって、位置関係がなんか逆のような気がしますけど。
そこは私も面白いと思う。西欧的で新しいサンクトペテルブルクの街並みと、昔ながらでロシア的なモスクワの街並みとを比べても、今挙げた作曲家たちの思想はそれらの真逆の方面を目指しているようにも見えるよね。
まぁ、この2つの潮流はあくまで代表的な例だけれども、それでもチャイコフスキーとロシア5人組の関係はそういう面白いものがあるんだよね。
まぁ、これらはバチバチと敵対していたわけでもないし、19世紀後半にはゆるやかにひとつのまとまりになっていくんだけどね。どっちが優れているとか言いたいわけではないから、今日はざっくりと説明するよ。
ロシア前編で紹介する主な作曲家
・チャイコフスキー
・カリンニコフ
・リムスキー=コルサコフ
・ボロディン
・ムソグルスキー
・バラキレフ
チャイコフスキー
Pyotr Ilyich Tchaikovsky
というわけで、まずはロシアで最も有名な作曲家、チャイコフスキーについて話そうか。クラシック音楽について詳しくない人でも「白鳥の湖」や「くるみ割り人形」という題名はよく知っているよね。
「白鳥の湖」も「くるみ割り人形」もバレエの題名ですよね、「眠れる森の美女」も合わせて三大バレエとよく言われます。特に「白鳥の湖」(Swan Lake, Op.20)は、代表的な曲以外にも名曲ばかりなので大好きです。
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白鳥の湖 - Wikipedia「くるみ割り人形」(The Nutcracker, Op.71)の全曲は約1時間40分と、「白鳥の湖」と比べると少し短いかもしれませんが、クリスマスイヴの不思議な物語の雰囲気を閉じ込めた名曲が揃っているのでこちらも大好きです。
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くるみ割り人形 - Wikipediaバレエもいいけど交響曲もね。チャイコフスキーは交響曲を6つ書き上げたけれど、一般的に有名なのは後期の3曲だね。
わたしは演奏機会の少ない前期の3曲も大好きですよ! 特に交響曲第1番「雪の日の幻想」(Op.13 "Winter Daydreams")が好きです!
交響曲第2番「小ロシア」(Op.17 "Little Russian")の第1楽章はロシア風な威圧感がたまりませんし、交響曲第3番「ポーランド」(Op.29 "Polish")の第1楽章もとてもカッコいいです!
「小ロシア」は現在ウクライナ周辺のことで、そのあたりの民謡がいくつかモチーフとして使われているんだよね。「ポーランド」は、第5楽章がポーランドの舞曲であるポロネーズのリズムであることから付された題名だよ。
続いて、いずれも有名な後期の3曲について。交響曲第4番(Op.36)は「運命主題」と呼ばれる最初のファンファーレに支配されつつも、最後は打ち勝つようなイメージ。静かな第2楽章や、おどけたような第3楽章も特徴的だね。
チャイコフスキーの交響曲の中で、私が一番好きなのは交響曲第5番(Op.64)かな。最後の最後で第1楽章のテーマが再び現れる場面が、長い旅を終えて地元に帰ってきたなあ、という感覚と似ていて好き。
別に「勝利」を明確にモチーフにしているわけではないと思うんですが、交響曲第4番と第5番はなぜか祝勝ムードを大いに感じますよね……
交響曲第6番「悲愴」(Op.74 "Pathetique")は、結果的にチャイコフスキーの遺作になってしまった曲だね。どちらかと言うと「人生」というテーマを感じるような曲で、最後は消え入るように終曲してしまう。
「マンフレッド交響曲」(Manfred Symphony, Op.58)なんてのもあるけど、今回は省略。以上がチャイコフスキーの交響曲だね。後期の3曲はもちろん、前期の3曲も親しみやすい楽曲だから聴きやすいと思うよ。
チャイコフスキーの交響曲は、わたしはパパヤルヴィ(ネーメ・ヤルヴィ)とエーテボリ交響楽団のアルバムを聴くことが多いです。交響曲だけでなく他の有名曲やマイナー曲も多く入っているのでオススメですよ!
交響曲やバレエ以外の楽曲も、チャイコフスキーはたくさんの名曲を生み出しているんだよね。有名な曲も多いけれど、「デンマーク国歌による祝典序曲」(Op.15)のように埋もれた名曲もたくさんある。
チャイコフスキーの楽曲って、有名どころだけでも沢山ありますもんね。ピアノ協奏曲第1番(Op.23)の第1楽章の冒頭なんて、その最たる例ですし。わたしはヴァイオリン協奏曲(Op.35)の方が好きですけど……
あと、チャイコフスキーはピアノ曲もたくさん残しているよ。いずれも管弦楽曲と同様に甘美な響きで、かなり親しみやすいと思う。私的にはこのアルバムがオススメ。
このアルバムすごいですね…… 序曲「1812年」(Op.49)や「くるみ割り人形」全曲のピアノアレンジも含めて、全部で200曲以上ある……
カリンニコフ
Vasily Kalinnikov
チャイコフスキーの流れを継ぐ作曲家として、カリンニコフの話もしておこうか。カリンニコフも、西欧的な楽曲構成法を基軸としつつロシア的なモチーフをふんだんに取り入れた作曲家だね。
カリンニコフはチャイコフスキーに才能を見出され、指揮者として活躍するも、病に倒れてしまう。療養しながらいくつか曲を残したものの、34歳の若さでこの世を去ってしまう。早世してしまったため、作品は多くはない。
彼の名は忘れ去られていたけれど、近年は交響曲第1番を始めとして演奏機会が増えてきたんだ。かく言う私も、そういった演奏のおかげでカリンニコフを知れたんだけどね。
カリンニコフの交響曲第1番の第1楽章は、まるで満天の星空を眺めているかのような、うっとりとするヴァイオリンの音色が素晴らしいと思います。
そして交響曲第2番は、楽章をまたがって同じモチーフが現れる循環形式が効果的に用いられているよ。
この2曲の交響曲を聴く限りでも、カリンニコフが楽曲構成において計り知れない才能を持っていたことが分かると思う。もし長生きできていたら、後で紹介するグラズノフと同じような役回りができていたかもしれない。
しかし、病に倒れて静養することがなければ、カリンニコフはそのまま指揮者として名を馳せ、これらの偉大な交響曲が生まれることは無かったかもしれないんだよね。
でも、結局その病がカリンニコフの作曲家人生そのものを絶ってしまったんですよね…… 運命という言葉でひとくくりにするのは残酷ですが、この2曲の交響曲はまさに運命の因果が生んだ奇跡の結晶という感じがします。
カリンニコフは、この2曲以外にも管弦楽やピアノのための曲をいくつも残しているよ。それらもどうか心に残して、語り継いで欲しいな。運命の因果の間でその生を全うした、1人の作曲家のことを。
ロシア5人組
じゃあ今度はロシア5人組の側について話そうか。ボロディン、キュイ、バラキレフ、ムソグルスキー、リムスキー=コルサコフの5人のことだね。
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ロシア5人組 - Wikipediaロシア5人組は中学校の音楽の授業で名前を聞いたことがある気がします。でも名前だけ挙げられても正直よく分からなかったです。ザ・ドリフターズみたいな感じで全員集合してたんですか?
うん、その人たちも5人組だけど全然違うね。っていうか中学生がどこでそんな昭和の文化覚えてきたんだよ……
ロシア5人組は最初から集まっていたわけじゃなくて、自然発生的でゆるやかな派閥のようなものかな。同じ信念のもとで各々の道を究めようと切磋琢磨していた5人のことを、周囲が「ロシア5人組」と呼ぶようになったんだ。
リムスキー=コルサコフ
Nikolai Rimsky-Korsakov
まずは、ロシア5人組の中でロシア音楽界に長く貢献し続けたリムスキー=コルサコフの話からしようか。小さい頃から海軍の兵学校に通っていて、作曲については独学や他のロシア5人組の仲間から習って勉強した部分が多いんだ。
20歳になる頃に完成させた交響曲第1番(Op.1)は、ロシア的な要素がふんだんに用いられており、民族主義的な作品を求めていた人々から「本当の意味でロシア初の交響曲」と大絶賛されたんだ。
交響曲第1番の第1楽章は、他のどの曲にもない勇壮な雰囲気がとても好きです、めちゃくちゃかっこいいですよね。どことなくオリエントな雰囲気も感じます。
オリエントな雰囲気といえば、交響曲第2番「アンタール」(Op.9 "Antar")でも大いに用いられているね。アラビア世界をモチーフにした標題音楽で、現在主流になっている改訂版は交響曲というより交響組曲と呼ぶ方が適当かな。
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アンタール - Wikipedia「アンタール」は特に第3楽章が大好きです! イスラムのお城や街が見えるようで、今般のゲーム音楽に通ずるものもある気がします!
交響曲第3番(Op.32)は、前の2曲と比べると少しロシア的な特徴が薄いかもしれないけれど、伝統的な楽曲構成に則った曲だね。個人的には、冒頭のテーマが楽曲の最後のシーンで再び出てくるところが好き。
そしてリムスキー=コルサコフの作品の中でおそらく最も有名なのは、交響組曲「シェヘラザード」(Op.35 "Scheherazade")だね。アラビアンナイト(千夜一夜物語)をモチーフにした標題音楽だよ。
この曲の解説を読むまで、アラビアンナイトのナイトって「騎士」のことだと思ってました。
それはたぶん「アラジンと魔法のランプ」と混同しているんだと思う。しかも近年の研究では、「アラジンと魔法のランプ」はアラビアンナイトの原本とは何の関係もないところから出てきた作品だとされているね。
あとは有名どころといえば、歌劇(オペラ)の作品が多いかな。「皇帝の花嫁」(The Tsar's Bride)とか、「サトコ」(Sadko)とか。日本ではあまり見かけないけど、ロシア国内に行けば現在でも上演される機会は多いよ。
わたし的には「サトコ」の曲が親しみやすかったです。ストーリー的にも、サトコという名の男性の伝記という感じで、最後はハッピーエンドに終わるのがよかったです!
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サトコ - Wikipediaボロディン
Alexander Borodin
ロシア5人組の中で最年長だったのがボロディンで、元々は化学の研究者だったんだよね。大学教授として研究を続ける傍らで、作曲家としての才能を徐々に発揮していったんだ。
ボロディンは53歳で亡くなってしまい、残された作品はリムスキー=コルサコフやその後輩のグラズノフによって編曲されたものが多いんだ。グラズノフについては、また後で紹介するね。
ボロディンの曲の中で最も有名なのは、歌劇「イーゴリ公」(Prince Igor)の曲のうち「ポロヴェツ人の踊り」(Polovetsian Dances)と呼ばれる部分だろうね。吹奏楽で耳にする機会もそこそこ多いかな?
同曲は日本国内では「だったん人の踊り」と呼ばれることが多い。しかし、韃靼(だったん)人とポロヴェツ人は別物であり、「だったん人の踊り」の名称は誤訳であるとする解釈が現在では一般的である。当ウェブサイトでは、同曲の名称は「ポロヴェツ人の踊り」として統一する。
ボロディンは生前に交響曲を2曲完成させたよ。交響曲第2番が親しみやすいかな、テーマとなる旋律も分かりやすいし。交響曲第3番は未完成だったけれど、グラズノフの補筆により一部の楽章が完成されているね。
あとは交響詩「中央アジアの草原にて」(In the Steppes of Central Asia)も有名で親しみやすい曲ですよね! わたしもいつかカザフステップのような中央アジアの草原に立って、こういう雰囲気の音を感じてみたいです!
中央アジアの草原といえばカザフステップあたりかな、って連想するのは何となく分かるんだけど、この曲のモチーフになったのはコーカサスのあたりみたいだね。カフカス山脈の周辺って言えば分かりやすいかな?
えっ、コーカサスってことは黒海とカスピ海に挟まれたあたりじゃないですか、ジョージアとかアゼルバイジャンとか。あのあたりって中央アジアじゃなくて西アジアに分類される気がするんですが、解せぬ……
ムソグルスキー
Modest Mussorgsky
ムソルグスキーも42歳で早世してしまったから、彼の代表曲の多くもボロディンの場合と同様に、彼の死後にリムスキー=コルサコフやグラズノフによって編曲されたものが多いね。
ムソルグスキーの代表曲といえば、何と言っても組曲「展覧会の絵」(Pictures at an Exhibition)ですよね!
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展覧会の絵 - Wikipedia組曲「展覧会の絵」は、元々はピアノ用の曲なんだよね。管弦楽用に編曲したのはフランスのラヴェルで、それがきっかけとなって人気が出たんだ。ちなみに原曲はこんな感じで、少し落ち着いた雰囲気を感じるよ。
あとは、交響詩「はげ山の一夜」(Night on Bald Mountain)や、歌劇「ホヴァーンシチナ」(Khovanshchina)も有名だけれど、いずれも死後に編曲されたものだね。
歌劇(オペラ)の中で生前に完成したのは「ボリス・ゴドゥノフ」(Boris Godunov)だけなんですね…… ロシアで見たことがありますが、中世の土くさくて重苦しい雰囲気を感じる作品で、襲い掛かってくるような大迫力の合唱が印象的でした。
バラキレフ
Mily Balakirev
バラキレフもあまり多作ではなかったけれど、ロシア的な旋律を色濃く映した楽曲をいくつも残しているよ。全体的にかっこいい曲が多いから、好きな人は熱狂的に好きだと思う。
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ミリイ・バラキレフ - Spotifyバラキレフは交響曲を2曲残しているけれど、交響曲よりも交響詩「ルーシ」(Russia)や、交響詩「タマラ」(Tamara)の方が親しみやすい感じはあるかな。
「ルーシ」や「タマラ」もかっこいいですけど、交響曲第1番の第2楽章めっちゃかっこいいですね…… 交響曲第2番もわりと好きな雰囲気です。
あとは、ピアノ曲の東洋的幻想曲「イスラメイ」(Islamey)も有名だね。難曲中の難曲として、当時から現在まで数々のピアニストや作曲家の前に立ちはだかっているよ。
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イスラメイ - Wikipediaユキさん、ロシア5人組の残りの1人、キュイについても教えてください。
ごめん、キュイについては私はあまり詳しくなくてね。他の4人と比べると、どうしても有名な曲が無いというか…… でも全く無いというわけでもないから、Spotifyでもちゃんと聴けるよ。気になったら聴いてみるといいさ。
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César Cui - Spotifyそして、時代はロシア国民楽派の集大成とも言えるグラズノフに行き着くわけだけれども……
ちょっとおなかすいたので、一旦ここで区切らせてください。
ん、じゃあロシア後編に続く。
自主的なPR記事なので、この記事に関してSpotifyからの金銭の授受はありません。(念のため)
あらすじ
流行り病の影響で中学校がしばらく休校になってしまったうさぎ。せっかくなのでSpotifyでクラシック音楽を聴きまくろうと意気込むも、何を聴けばいいのか分からない。なので雪貴にオススメを教えてもらうことにした。