第4回国際極東祭 チャイナ・フィルハーモニー管弦楽団 演奏会 雑感

Information

この記事の内容は、うさぎの主観がメインとなります。そのため、一般的な解釈や作曲者の意図とは必ずしも合致しません。ご理解いただける方のみお読みください。

導入

マリインスキー劇場 沿海州別館
Приморская сцена Мариинского театра
ロシア ウラジオストク
Vladivostok, RUSSIA
06 Aug 2019
うさぎ

というわけで、ウラジオストクのマリインスキー劇場沿海州別館に来ました! 今この劇場では「国際極東祭」という音楽フェスティバルが開催されているんですよ!

Information

国際極東祭 (Международный Дальневосточный фестиваль «МАРИИНСКИЙ»)
極東ロシアのウラジオストクにあるマリインスキー劇場沿海州別館で、夏季に開催される音楽フェスティバル。主なジャンルはクラシック音楽、オペラ、バレエ。アジアの周辺各国や、マリインスキー劇場本館(サンクトペテルブルク)などからゲストが招かれる。直訳すると「マリインスキー国際極東祭」になるが、当サイトでは「国際極東祭」として統一する。


マリインスキー劇場 沿海州別館

うさぎ

今日はちょっと人が少ないなあと思ったんですが、もう開場していたからでした。路線バスで来たんですが、途中渋滞してて時間かかっちゃったんですよね。急いで入らなきゃ……

うさぎ

あっ、今日のプログラムはこんな感じです。

Information

第4回国際極東祭 (8/6)
2019年08月06日(火) 19:00開演
マリインスキー劇場 沿海州別館 大ホール
指揮:夏小 (Xia Xiaotang)
ピアノ:安天旭 (An Tianxu)
チャイナ・フィルハーモニー管弦楽団 (China Philharmonic Orchestra)

ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番
チャイコフスキー:交響曲第5番

うさぎ

今日はチャイナ・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートです。中国を代表するオーケストラで、日本では「チャイナフィル」とか「中国フィル」とか略されることが多いようですね。指揮は夏小という30代の方です。


感想

うさぎ

というわけで感想パートです。

Information

1曲目
エクトル・ベルリオーズ:
序曲「ローマの謝肉祭」

うさぎ

1曲目、「Le Carnaval romain」で何て読むのかと思ったら、そのまま「ローマの謝肉祭」でした。作曲者は「幻想交響曲」でも有名なベルリオーズですね。

うさぎ

なかなかわかりやすい曲で、そのうえしっかり抑揚や緩急がつけられていて、なかなかエキサイティングな演奏でした。わたしこういうスピード感やドライブ感の感じられるスタイル大好きです!


Information

2曲目
ピョートル・チャイコフスキー:
ピアノ協奏曲第1番

うさぎ

2曲目はチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番です。冒頭の数小節のフレーズはとても有名ですね。

うさぎ

なんというか、1曲目でよかったドライブ感とかそういうのが無くなって、ちょっとのっぺりとした感じだったのが少し残念でした……

うさぎ

ピアノは2日前の公演に続き、安天旭という方でした。さすがに上手いですね、でも今日は2日前よりも勢いよくガンガンと弾くようなイメージでした。


うさぎ

ソリストアンコールのピアノ曲は知らない曲でしたが、どことなく東洋のメロディーが混じって聞こえるようでした。でも、そもそも東洋らしさって何なんでしょうね…… わたしは東洋人だからなんとなくわかるんですが。

うさぎ

とか言って本当は全然東洋っぽくない曲だったら恥ずかしいので、このへんにしておきます。


Information

3曲目
ピョートル・チャイコフスキー:
交響曲第5番

うさぎ

休憩を挟んで、3曲目はチャイコフスキーの交響曲第5番でした。

うさぎ

わたし的にも大変よく知っている曲なんですが、普段とは全く違った憧憬が見えたので、楽章ごとに感想を書いていきますね。


うさぎ

第1楽章はゆっくり入って加速していく、2度目の主題で速さはクライマックスになりました。景色はよく見えませんでしたが、なんとなく「大陸」というイメージを感じるようでした。

うさぎ

島国で海洋国家な日本と違って、オーケストラ団員たちの故郷でもある中国は大陸国家ですからね。ロシアのようにスケールが大きくて、そしてどこか大雑把な面も持ち合わせている、そんな風土的な一面を見ているようでした。


うさぎ

第2楽章は静かな緩徐楽章というのが一般的なイメージなんですが、弦がすごく音を鳴らしていて…… というか鳴らしすぎっていうくらい唸っていました。

うさぎ

なので、静かな夜のイメージというよりは、流れゆく大河のようなイメージを楽章全体に感じました。なるほど、これは中国の自然なのかもしれないですね。か細い木管楽器はそこに暮らす人間や動物といった生き物でしょうか?

うさぎ

川があって、滝があって、そしてまた川になって流れてゆく…… しかし、最後は人間がドドドドドと入ってくるような不穏なイメージで終了。確かに、第2楽章の終盤ってそういう解釈もできるのかも……

うさぎ

あ、楽章間は休みなしで演奏されています。アタッカって言えばいいんですかね? これが演出上の都合で考慮されたものなのか、単に楽章間で拍手しないでねって意味なのかどうかは知りませんが……


うさぎ

第3楽章は、前の楽章の最後に入ってきた人間たちが、その自然を開拓して街を造っているイメージが見えました。木をきこきこ切って、建物を建てて、みたいな感じです。


うさぎ

そして第4楽章、先の楽章でようやく大きな街ができたと思ったら、今度は大きな争いが始まりました…… つまりは「戦争」のイメージです。

うさぎ

戦争、ファンファーレ、また戦争…… あの、雰囲気が完全にショスタコーヴィチの楽曲なんですけれど…… これは一体、何を表しているのでしょうか。辛亥革命か、日中戦争か、はたまた国共内戦か……

うさぎ

そして最後は平和になり、現代まで戻ってきます。まるで「こうして今の中華人民共和国ができたのだ」とでも言わんばかりの、壮大なフィナーレ……


うさぎ

中国の建国の話が見えるとは思わなかったので、素直に驚いています。チャイコフスキーの交響曲第5番からこんなイメージが引き出されるなんて…… 何というか、また新しい扉を開いた気がします。こういうイメージの演奏は、日本ではあまりお目にかかれないでしょうし。

うさぎ

迫力、豪快、疾走、厚みのある弦、オーケストラの長所を活かしたとてもいい演奏でした。確かに、中国の誇る世界レベルのオーケストラと言えるだけありますね。

うさぎ

短所は少なくないかもしれませんが、それを補って余りある長所、という感じでした。わたしの好きな都響(東京都交響楽団)とも少し似ている気がします。あっちは長所短所というよりは相性による爆発って感じですが。


Information

アンコール 1曲目
ピョートル・チャイコフスキー
バレエ「くるみ割り人形」より「花のワルツ」

うさぎ

打楽器奏者がぞろぞろと増えて、アンコール1曲目です。バレエ「くるみ割り人形」の「花のワルツ」、クラシック音楽に興味のない人でも聴いたことがあるような有名曲ですね。

うさぎ

ショスタコーヴィチ風チャイコフスキーの後にゆるふわ系というのはちょっと落差を感じておなかがキュルキュルしますが、近くにいた観客の女の子も喜んでいたのでわたし的にはOKです。


Information

アンコール 2曲目
??????? (詳細後述)

うさぎ

トランペット奏者が1人増えてアンコール2曲目、とても雄々しい曲でした。それよりも特筆するべきは、演奏が始まった途端、場内の観客がみんな手拍子をし始めるという…… 終わる頃には観客総立ちで大歓声でした。

うさぎ

曲名が分からなくて困ったわたしは、仕方がないので終演後に隣に座っていたおばあさんに尋ねることにしました。

隣のおばあさんに教えてもらった

うさぎ

流暢に書かれて読めなかったので、ブロック体でも書いてもらいました。ありがとうございます。えーと、Священная войнаの意味は……


Information

アンコール 2曲目
アレクサンドル・アレクサンドロフ:
「聖なる戦い」(Священная война)

うさぎ

おほ! これ、あの有名な「聖なる戦い」でしたか! あの有名な、って言いながら何の曲か分からなかったマヌケもいましたが、そのことは忘れてください。

うさぎ

「聖なる戦い」は大祖国戦争、いわゆる第二次世界大戦の最中に作曲された軍歌です。ショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」と同時代の曲でもありますね。

うさぎ

かつて「大いなる我らが連邦のために」と謳われた強大な連邦は、今はもう地球上には存在しませんが…… 歌はこうして現代まで継承され、今なおロシアに暮らす人々の心に響いているんですね。なんだか感慨深いです。

うさぎ

メロディーはもうバッチリ覚えたので、次からはわたしもしっかり楽しみますよ! 悪しき軍を破れ! 弾丸を以て追い詰めよ!


終演後

うさぎ

いやー、期待していたよりも遥かに面白い公演でした。宿でのんびりしようかとも思っていたんですが、せっかくなのでチケット取っておいてよかった……

うさぎ

調べてみたら、チャイナ・フィルハーモニー管弦楽団は、来日公演のアンコールで「花が咲く」を弾いたり、イギリスの音楽祭「BBC Proms」ではアンコールで英国国歌のアレンジを弾いたり、そういう芸が細かいみたいですね。

うさぎ

政治屋な人からするとしたたかな一面に映るかもしれませんが、エンターテイメントとして見たら、自らの伝統文化のレパートリーも披露しつつ相手の心に響くものもきっちり押さえる、というのは素晴らしいですね。わたしもそういうのは積極的に見習いたいと思います。


うさぎ

さて、わたしは明日のフェリーで日本に帰るので、マリインスキー劇場沿海州別館とも今日でお別れです。ここ数日で4公演もお世話になったので、さすがにちょっと名残惜しいです……

うさぎ

わたしはマリインスキー劇場といえばサンクトペテルブルクの本館がとても好きなんですが、この沿海州別館もなかなか気に入りました! ウラジオストクの方が日本から近くて来やすいですしね!

うさぎ

国際極東祭もとても楽しいお祭りだったので、機会があればまた来てみたいです。はぁ、居心地がよすぎて日本に帰りたくないなあ……

金角湾の対岸へ向かうミニバス


  • Приморская сцена Мариинского театра / Primorsky Stage of the Mariinsky Theatre

    マリインスキー劇場 沿海州別館

    住所
    г. Владивосток, ул. Фастовская, д. 20 /
    20 Fastovskaya Street, Vladivostok, RUSSIA
    アクセス
    各種路線バス・ミニバスなど
    リンク
    公式ウェブサイト