都響プロムナードコンサート No.392 雑感

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この記事の内容は、うさぎの主観がメインとなります。そのため、一般的な解釈や作曲者の意図とは必ずしも合致しません。ご理解いただける方のみお読みください。

導入

サントリーホール
Suntory Hall
東京都 港区
Minato, Tokyo, JAPAN
19 Jul 2021
うさぎ

というわけでサントリーホールに来ました!

雪貴

今日は都響(東京都交響楽団)の定期公演のひとつ、プロムナードコンサートに来たんだよね。

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東京都交響楽団 プロムナードコンサート No.392
2021年06月19日(土) 14:00開演
サントリーホール 大ホール
指揮:下野竜也
ヴァイオリン:大関万結

ヘンデル:「王宮の花火の音楽」序曲
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第2番
ボロディン:交響曲第2番

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プロムナードコンサート
都響の定期公演のひとつ。「休日の午後、おなじみの名曲や親しみやすい音楽とともにお過ごしいただく、いわば"名曲の散歩道"」と謳っているが、比較的マイナーな曲が取り上げられることも多く、いわゆる「通好み」な一面も併せ持っているプログラム。初心者からベテランまで幅広く楽しめるのでオススメ。


うさぎ

東京は暑いって聞いたから夏服で来たのに、思いっきり雨降ってて全然暑くないですね。ユキさんに騙されました。

雪貴

申し訳ないとは思いつつも、梅雨だしそんなものでしょ。夏至も近いし、2021年もあっという間に折り返しって感じだね。ほら、早く中に入るよ。

サントリーホール


感想

終演後

うさぎ

というわけで感想合戦です。

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1曲目
ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル:
「王宮の花火の音楽」序曲

雪貴

1曲目はヘンデルの「王宮の花火の音楽」序曲、晩年の作品だね。オーストリア継承戦争が終結したことを記念する式典のために作られた曲だったそうな。

うさぎ

金管の高音連発がとても特徴的でしたね。最初は気付かなかったんですが、あれってピッコロトランペットですよね? 退場時にトランペット2台持ちしているのが見えました。

雪貴

こういう曲で使われることが多いけど、それでも若干しんどそうな部分があったね。

うさぎ

序曲なので本来は続きの曲が4曲ほどあるわけなんですが、一曲の中にもしっかり展開やまとまりがあって、まるでコンパクトにまとまった短編小説みたいな曲でしたね。


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2曲目
マックス・ブルッフ:
ヴァイオリン協奏曲第2番

雪貴

2曲目はブルッフのヴァイオリン協奏曲第2番だね。一般的に有名なのは第1番の方だから、少々レア。

うさぎ

そこまで予習できていなかったのでほぼ初めてなんですが、CDなどの音源で聴くのとでは解像度が全然違いますね。特に今日は、ソリストの大関万結さんのヴァイオリンがとてもパワフルな響きで、曲の感情がダイレクトに伝わってくるようでした。


うさぎ

第1楽章はアダージョということでゆったりしたテンポなので、すごく独特な雰囲気でしたね。普通の協奏曲で言うところの第2楽章から始まるようなイメージでしょうか? それでも所々かっこいいので、さすがブルッフです。

雪貴

かのブラームスも「第1楽章がアダージョなのは普通の観客には耐えられない」と評したと言われているね。後に撤回したみたいだけど。

うさぎ

独立した1曲としてならいいんですけど、後ろに2楽章あるわけなので、聴いてるうちに「やはり法律で規制した方がいいのでは」とか思い始めました。

うさぎ

とはいえ、モチーフが「恋人を失って戦場を彷徨い歩く女性」とのことなので、この暗さも納得です。所々でフルートが聞こえるのは、失った恋人の幻でしょうか?


うさぎ

で、第2楽章は明るめの雰囲気で始まるので、戦争が終わって街も明るさを取り戻したのかなとか思ったんですが、すぐまた暗めの雰囲気が戻ってくるんですよね。

雪貴

いつの時代もそんなものだよ。第1楽章のモチーフが恋人を失った女性とあれば、その後はなおさらね。昨今のパンデミックにも同じようなことが言えるかもしれない。


うさぎ

そして今度こそ明るい第3楽章。ここが明るく見えるのも、あの第1楽章の長々しいアダージョがあってこそですね。

雪貴

Wikipediaに誰かが書いたフレーズをそのまま引用すると、「騎兵の連隊の祝宴」が表現されているらしいね。

うさぎ

全体的な雰囲気としては暗から明へな感じですが、響きとして一番心に残ったのは実は第1楽章でした。うーん全体で見るとやはり、第1楽章のアダージョを法律で規制するのはもう少し待った方がいいかもしれませんね。

雪貴

まだその話やってたのか……


うさぎ

ソリストアンコールの曲も、協奏曲と同様に音が分厚くて、それでいてのびやかで素晴らしい演奏でしたね。旧オーストリア国歌だそうです。

雪貴

ハイドン作曲のオーストリア帝国国歌「神よ、皇帝フランツを守り給え」だね。メロディーは今のドイツ国歌にも引き継がれているよ。


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3曲目
アレクサンドル・ボロディン:
交響曲第2番

うさぎ

休憩を挟んで3曲目は、待ちに待ったボロディンの交響曲第2番です!

雪貴

いつぞやの楽曲紹介記事でも挙げたとおり、ボロディンの作品の中では有名な部類だけれど、演奏機会はそんなにないからレア曲だね。

うさぎ

ロシアの国民楽派ってだけで、主流から遠ざけられているような…… そんなことないですか? これに限らず素晴らしい曲ばかりなんですけどね。

うさぎ

で、この曲はそもそも第1楽章の開始数小節の時点で人によって表現の仕方が全然違うので、それも含めて楽しみです! 爆速タイプにしても溜めるタイプにしても、心の準備ができませんからね!


うさぎ

第1楽章、下野さんは早すぎも遅すぎもしない中間的な速度で入りましたね。とても重たい第1主題は分かりやすいメロディーな上、何度も出てきます。すかさず軽く明るい第2主題も入り、また第1主題、の繰り返し。

うさぎ

何度も聴いている印象だとそこそこ明るめなイメージだったんですが、実際に生で聴いてみると第1主題があっちでもこっちでも出てくるので、思っていたほど明るくなかったです。

雪貴

そして繰り返しながら徐々に溜めていき、堰を切ったようにクライマックス。リムスキー=コルサコフの交響曲第1番なんかもそうだけど、第1楽章でいきなりクライマックス持ってくるよね、ロシア5人組の人たち。

うさぎ

大好きな部分なので、マスクの下でこんな感じの顔をしながら聴いてました。

雪貴

マスクがなければ即死だったね、社会的に。

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演出上の都合のため、登場キャラクターはマスクやフェイスガードを着用していませんが、実際にはマスク着用などの感染症対策を十分に施しています。

うさぎ

そして最後は溜めに溜めて、冒頭と同じ主題で終止。まだ第1楽章なのに心の中ではブラボーの嵐でした。最高ですね。


うさぎ

そして第2楽章はスケルツォなんですが、第1楽章が激しすぎたので対照的にぼっかぼっかした雰囲気が強めです。牧歌的とでも言いますか。

うさぎ

静かな雰囲気の中で弦楽器が明るく輝いていて、まるで満天の星空を眺めるような雰囲気でした。最高ですね。


うさぎ

そして第3楽章は静かな緩徐楽章、ハープによる幻想的な響きから始まりましたね。まるで夜明けのモスクワ川が見えるようでした。

雪貴

一応言うけど、モスクワ川はボロディンじゃなくてムソルグスキーね。気持ちは分かるけど。

うさぎ

さわさわとそよぐ弦楽器の音色が、まるで風に揺れる木々のようでした。そして音が集まっていってクライマックス、その後も静かに音が遊んでいく…… この楽章は生で聴くと美しすぎます。最高ですね。

雪貴

「最高ですね」、3楽章連続3回目。

うさぎ

第4楽章でも言うので覚悟していてください。


うさぎ

そしてハープの音色で美しい第3楽章が締まり、間髪入れずに行進のような足音が聞こえて第4楽章に突入します。わたしの大好きなタンバリンとトライアングルも大活躍です。

雪貴

第1楽章が実質的なクライマックスだったのでそのぶん難しくなるけれど、第4楽章もそれとは別方向に盛り上がるクライマックスとして仕上がっているよね。

うさぎ

最高ですね。こんなに「まだ終わらないでほしい!」と思わせる曲というのもなかなかありません。


うさぎ

というわけで、さっきも言ったんですが、なんでこの曲の演奏機会ってそんなに多くないんですか? やはりロマン派の主流から離れているからなのか何なのか……

雪貴

私も国民楽派推しなので、その主張には概ね同意。都響はそのあたりの曲もこうしてしっかり取り上げてくれるから大好き。

うさぎ

「もっとエキゾチックさが欲しかった」って言ってる人もいましたけど、この曲の本質はそこではないんですよね。

うさぎ

確かにロシアの民族的なモチーフこそありますが、それによって生み出される勇壮さ、静かな雰囲気の美しさ、そして何よりも音の遊びの巧みさ。ボロディンの才能をひしひしと感じます。

雪貴

ボロディンはそもそも音楽を主業にしていたわけではなかったから、そういった意味でも素晴らしい才能だよね。

うさぎ

今風に言うと兼業で同人サークルでDTMやってる人のようなものですよね。この曲を生で聴いて改めて、ボロディンの音楽の才能に感服させられました。

うさぎ

というわけで、あっという間の30分でした。第1楽章でも第4楽章でもどこでもいいのでアンコールしてくれないかな……


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アンコール
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ:
平均律クラヴィーア曲集第1巻 第24番 (BWV.869)

うさぎ

まだ楽譜が残っているような気がすると思ったら、まさかのアンコール。

雪貴

最初はヘンデルだったので、最後はバッハの曲で、とのこと。レオポルド・ストコフスキーの編曲による弦楽アレンジだそうな。


雪貴

というわけで、今日はどうだった?

うさぎ

あまり大きな声では言いたくないですが、客入りが芳しくなかったように思います。あんなに素晴らしい曲なのに……

雪貴

私の列も人が全然いなかった…… 全体で見たら半分くらい埋まってたのかな。誰にも邪魔されずにゆったり聴けるのは最高だけれど、それはそれとして繁盛していた方が興行的にはいいよね。

うさぎ

そういうのも踏まえてかどうかは分かりませんが、アンコール直前の下野さんのあいさつは「これからもオーケストラを支えてください、聴きに来てください、そして楽しんでください」というような内容でしたね。

雪貴

こんな時代だから、色々と難しいよね…… もちろんこうして聴きに来るだけでも「支える」ことには繋がるわけだけど。

うさぎ

かく言うわたしもオーケストラの演奏会は今年まだ2度目な気がするので、もっと東京に来ようと思います。

うさぎ

話は少し変わりますが、今日は「終戦」にちなんだ曲がいくつかありましたよね。ボロディンは違うような気がしますけど。

雪貴

昨今のパンデミックもある意味戦争だと思ってるから、なんとなく似たような境遇を感じるね。まぁ全然終わったわけじゃないけど、例え収まったとしてもいきなり明るい時代になるわけではないし、それでもそれぞれの人生は変わらず続いていく。

雪貴

ボロディンの交響曲第2番の第1楽章も、まさにそのような暗雲に覆われた空模様。そこからあの美しい第3楽章や明るい第4楽章に繋がるわけだから、目先のあれこれに浮き沈みせずに1歩ずつ1秒ずつ人生を歩いていかないとね。そうしたら「終戦」後も明るく生きていけるさ。

うさぎ

出ましたね、ポエム。

うさぎ

じゃなくて…… さすがユキさん、わたしの言いたいことを代弁してくれましたね! さっそく記事にも引用させていただきます!

雪貴

記事どうこうの前に、何が出たって? 全然怒ってないから教えてごらん?

うさぎ

あー、あー、おなかがすいたので何も聞こえません。



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COVID-19の流行に伴う演出上の注意
演出上の都合のため、登場キャラクターはマスクやフェイスガードを着用していませんが、実際にはマスク着用などの感染症対策を十分に施したうえで訪問しています。