導入
この記事の内容は、うさぎの主観がメインとなります。そのため、一般的な解釈や作曲者の意図とは必ずしも合致しません。ご理解いただける方のみお読みください。
というわけでロンドンに来ました!
夏のロンドンでは毎年、世界最大のクラシック音楽の祭典「BBC Proms」が開催されているんだよね。
旅行の中継地としてロンドンに寄っただけなんですが、せっかくなので1公演くらいは見ていきたいですよね。
ロイヤル・アルバート・ホール
で、今日の楽団は……
「ベルリナー・フィルハーモニカー」?
Berliner Philharmoniker
ベルリーナ・フィルハルモーニカ、略すと?
ベルリンフィル? ああ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のことですね。一瞬なんのことかと思いましたよ。
あらためて、今日の内容は以下のとおり。
BBC Proms 2022, Prom 62
2022年09月03日(土) 19:00開演
ロイヤル・アルバート・ホール
指揮:キリル・ペトレンコ (Kirill Petrenko)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (Berlin Philharmonic Orchestra)
マーラー:交響曲第7番
でもベルリンフィルといえば、来日公演では最も安い席でも1万円以上するイメージですけど、ここだと逆に高い席でも1万円くらいなのがありがたいですね。立席だったら1000円くらいで入れますし。
ここのホールはキャパシティも5000席くらいあるからね。さすがに立席の列に並ぶのは難しそうだったから座席買ったけど、1ヶ月前でも普通に売れ残ってたのは正直助かったよ。
BBC Promsは、英国外の楽団の公演でもチケットはそこまで高くならない。アリーナやバルコニーといった立席も通常どおり当日販売されるが、有名なほど競争率は高め。確実に入場したい場合はオンラインでの座席購入が吉。
前に来た時は立席でしたが、今回はオンラインで事前購入して印刷したチケットで入りました。どのドアから入ればいいかもチケットに書いてあるのですぐ分かりますし、席の場所もスタッフさんに聞けば優しく教えてくれます。
それよりも飲み物が欲しいです。Promsではクラシックのコンサートとしては珍しく、飲み物の持ち込みOKなんですよね! というわけでサイダーください。
BBC Promsでは特別に、会場で売っている飲み物の他、一定の範囲内なら飲み物の持ち込みが許可されている。もちろん、演奏や鑑賞の邪魔にならない範囲で楽しむ必要がある。
場内の各所に売店がある
この店はワインとコーラとオレンジジュースしか無いみたいだね。ライブハウスみたいに必ずドリンク買わないといけない訳ではないし、お店を探す時間も無いからさっさと席に座るよ。
ひーん、Promsの楽しみのひとつが……
感想
終演後
というわけで感想です。
1曲目
グスタフ・マーラー:
交響曲第7番
演目は、わたしのやや苦手なマーラーでした。とはいえ、交響曲第7番、いわゆる「夜の歌」は以前にも聞いたことあるのが幸いです。
そもそも「夜の歌」の俗称自体は後世の後付けだけどね。
第1楽章は、わかりやすく重苦しくかつ少しズレたような旋律で始まります。その後もメロディーはあまり安定したがらず、単に聞いているだけならなんとなくモヤモヤとしてくるところですが……
今日思ったのは、「その音色が表している雰囲気」は、前にどこかの交響曲で見たような聴いたような雰囲気だな、っていうのがあるように感じました。メロディーの内容は違っても、似たようなものが見えるというか。
つまりマーラーはメロディーではなく「その音色が表す雰囲気」を描いている? それはどこから来るかというと、バッハの時代からベートーヴェンなどを通して過去から脈々と受け継がれてきた、音楽の歴史。
マーラーは作曲家である以前に指揮者でもあったんだよね、それも超一流の。だから過去の音楽への造詣も人一倍であったことは間違いない。
いきなりマーラーだけ聞いたら理解に苦しむところが多々ありますが、そういう歴史の積み重ねの上に重ね合わせれば、なんとなく音楽の声が聞こえやすくなる気がします。「過去作へのオマージュ」とでも言いましょうか。そんなものを第1楽章では強く感じました。
とはいえ、途中で一回和らいで、さらに途中でもう一回祝福して、また暗い雰囲気に戻る…… こんなに長い第1楽章の中でマーラーは全体として何を描いたんです? というのは正直わからないという。純粋音楽は割といつもそう。
それでも、今日の印象としては「あれっ、この楽章(第1楽章)って意外と暗くなかった」という感じです。今までは冒頭のイメージをずっと引きずってたわけですが、そうなると明と暗で分けるのも何か違うなぁと。となると騒と静?
そこは無理に分類しなくてもいいところだとは思う。
第2楽章は「夜曲」、いわゆるナハトムジークってやつですね。
静かな曲という意味ではないので注意。
関連リンク
セレナーデ - Wikipediaどう聞いても暗い雰囲気に聞こえますが、あの第1楽章の後では安らかな緩徐楽章にしか聞こえません。
そしてだんだんと展開が自由で諧謔的になっていく。あれ、それはスケルツォっていうやつでは?
ちゃんとしたスケルツォは第3楽章だけどね。
逆に第3楽章も、結構ぼっかぼっかした牧歌的な雰囲気がありますよね。第2楽章も第3楽章も、なんだかんだそこまで暗い雰囲気の曲ではないです。
そしてこの曲の中で最も穏やかなパートが第4楽章です。第1楽章と本当に同じ人が作ったのかと思うような甘美なメロディーが響きます。
色々と失礼な言い方だな……
わたし的には緩徐楽章というよりも、とても静かで穏やかなフィナーレのようにも感じます。それについてはまた後で話しますね。
そして始まる第5楽章、いわゆる「歓喜」を感じるような、これまでとは一転してとても明るい雰囲気のフィナーレです。
解釈によっては、第4楽章で「死に絶えるように」曲が終わっているため、第5楽章は死後の世界での饗宴であるとみなしている人もいるみたいだね。
どんなイスラーム的な天国観ですか。そこに行けばどんな夢も叶う、みたいな。ガンダーラ、ガンダーラ……
うん、それは全然違う曲だね。
ところで、第5楽章まである楽曲って他にありましたっけ。チャイコフスキーの交響曲第3番とか?
ベルリオーズの幻想交響曲とか、ベートーヴェンの田園(交響曲第6番)とか、スクリャービンの交響曲第2番とか? あとクレルヴォ。
それらとはちょっと違うような、区切りとしてはまるで4+1のような構成ですよねこの曲は。わたし的には、第4楽章が小さなフィナーレ、第5楽章が大きなフィナーレ、というような。
それで思い出したのが、シベリウスの交響曲第6番と交響曲第7番です。2つの交響曲を1つの曲とみなして、交響曲第7番(1楽章)は交響曲第6番(4楽章)に対するフィナーレである、という解釈。ヤルヴィ先生がN響でやったやつ。
NHK交響楽団の首席指揮者(当時)のパーヴォ・ヤルヴィは、「交響曲第6番と交響曲第7番はひとつの交響曲として解釈できる」として、2019年の演奏会はこの2曲を間を空けずに連続で演奏している。
この曲の躁鬱具合から見ても、第4楽章で一旦小さく締めてからの大フィナーレ、というのもありだと思うんですよ。第1楽章ほどではないですが、第5楽章めちゃくちゃ長いですし。
私は普通にありだと思う。シベリウスのそれとは対照的に、こっちは明るさ全開だけどね。
そして今までの雰囲気を拾いながら変奏曲のように展開、これだけ激しく振り回しても乱れることなく力強く演奏するのは流石のベルリンフィルですね! あと、特にこの楽章は打楽器が楽しいです!
そして爆発的に盛り上がる中で終演。暗い雰囲気で終わらずにひたすら明るい第5楽章なので終曲後の盛り上がりもひとしおでしたね。
スタンディングオベーションで大歓声だったね。パン、パン、とタイミングの揃った手拍子を聞くと、ヨーロッパに来たなぁというのを感じるよ。
さすがにこれだけお客さんがいると、拍手や歓声も物凄く響きますね、床もドンドンと鳴らしてましたし。動画で撮ったら音割れしそう……
アンコール
なし
アンコールはありませんでした。
こればっかりは仕方ないね。
というわけで今日はどうだった?
キリル・ペトレンコ氏、初めて見たんですがカッコいい指揮っぷりでしたね。ベルリンフィルの首席指揮者になるほどの人なので、気軽にお会いできないのが残念ですが。また応援する指揮者が増えてしまいましたよ。
(こいついつも推し増ししてるな……)
あと、せっかくの現地なのでバッグのひとつでも買おうと思ったら、2022年版はなかなか禍々しいデザインだったので止めました。前に来た時は普通のデザインだったのに……
ショップ
確かに、脈々としたいのちの輝きみたいな雰囲気を感じるよね、あの柄は。
あとはとにかく、時差ボケで眠いです。イギリスに入国したの5時間前ですし。
それは、まぁ、うん。よく公演中に寝なかったね。
あの第5楽章で寝れるなら大したものだと思いますよ。
ところで、今日はこの後の22時15分からも公演(Prom 63)があるんだよね。ギャラリーの立席でも行ってみる?
さっき眠いって言ったの聞いてなかったんですか? 早くフィッシュ&チップスでも食べて帰りましょうよ。
眠くても夕飯は食べるんだね…… まぁ、次の公演は宿で寝る準備しながらBBC Radio 3の生放送で聴けばいいか。
なるほど、日本だといつも深夜~未明にかけて生放送してましたけど、現地にいれば常識的な時間に放送してくれるんですね。ということは、学校や仕事を全部リモートにして現地に滞在すれば……
そうなると今度は、日本のコアタイムがロンドンの深夜~未明になるわけだ。
なかなかうまくいかないものですね、人生って。
Royal Albert Hall
ロイヤル・アルバート・ホール
- 住所
- Kensington Gore, London, SW7 2AP
- アクセス
- 地下鉄South Kensington駅から徒歩10分
- リンク
- 公式ウェブサイト
COVID-19の流行に伴う演出上の注意
演出上の都合のため、登場キャラクターはマスクやフェイスガードを着用していませんが、実際にはワクチン接種やマスク着用などの感染症対策を十分に施したうえで訪問しています。
BBC Proms
・通称「プロムス」
・毎年夏に開催されるクラシック音楽のお祭り
・主な会場はロンドンの「Royal Albert Hall」
・約2ヶ月間、ほぼ毎日コンサートがある
・ラジオ中継の様子をインターネット配信(2022年は最終日から30日間再生可能)
・各コンサートは「Prom」と呼ばれ、「Prom 1」「Prom 2」のように開催順に番号が振られる