この記事の内容は、うさぎの主観がメインとなります。そのため、一般的な解釈や作曲者の意図とは必ずしも合致しません。ご理解いただける方のみお読みください。
また、今回はかなり語調の強めな批判を含みます。あらかじめご了承ください。
導入
というわけで渋谷に来ました!
今日は世界最大のクラシック音楽の祭典「BBC Proms」の日本版、「BBC Proms JAPAN」の最終夜(ラストナイト)のために、これからオーチャードホールに行くんだよね。
関連リンク
BBC Proms 公式ウェブサイトBBC Proms JAPAN
・「BBC Proms」の出張版
・2019年が初めての開催
・2019年は東京(オーチャードホール)と大阪(フェスティバルホール)で合計6公演開催
・サテライト会場でもミニコンサートを開催
BBC Proms JAPAN 2019 Prom 6
2019年11月04日(祝) 18:00開演
オーチャードホール
指揮:トーマス・ダウスゴー (Thomas Dausgaard)
BBCスコティッシュ交響楽団 (BBC Scottish Symphony Orchestra)
曲目・出演者は後述
ところで、BBC Promsの「誰でも音楽を気軽に楽しめるお祭り」という役目は、日本ではフェスタサマーミューザがある程度担っていますよね? 何なら「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」や「パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)」も。
おっ、いいこと言うね。ベルが今言ったとおり、特にフェスタサマーミューザあたりは日本版のBBC Promsと言っても過言ではないと私も思うよ。理念や開催形式という面では特にね。
じゃあ今回、BBC Promsの出張版が日本に来る理由って何なんでしょうか……? それも、わざわざイギリスからオーケストラまで連れて来て。
難しいこと言うね。費用対効果の面だけ見れば、大相撲の地方巡業みたいな「興行」の面が強いように感じるなぁ。それを踏まえた上で、ただの「来日公演」以上のものを見せてくれるかどうか、ってところだね。
スクランブル交差点
あっ、ユキさん! なんか野外ステージっぽいのやってますよ! これが「BBC Proms JAPAN」のサテライト会場のミニコンサートってやつですかね?
BBC Proms JAPAN サテライト会場
そうみたいだね。観客がざっと50人弱、盛り上がって…… いるのだろうか、これは?
渋谷にサテライト会場を設けると聞いた時には「そんなのどこに作るんだろう」って思いましたが、ちょっとこれは想像以上に……
上野公園あたりに、もっと大きな野外ステージを設ければよかったのにね、もったいない。通行の邪魔だし。
それにしても、オーチャードホールは遠いなぁ…… 渋谷駅から徒歩7分って書いてありましたけど、絶対に10分くらいかかりますよね。
人混みを通らないといけないから余計に遠く感じるよね。
東急百貨店の裏側に進む
オーチャードホール入口
ようやくオーチャードホールに着いた……
当日のプログラムには手ぬぐいが付属
わーい、入口でプログラムと一緒にユニオンジャック柄の手ぬぐいをもらいましたよ。今日はこれをオリックスの応援みたいにブンブン振り回すんですよね。(↓参考動画)
いやいや、そこまで激しくやらなくていいから。普通に掲げるだけでいいと思うよ。
おっ、物販もあるみたいですね。最終日なので結構売り切れてますが…… というか全体的に値段高くないですか?
物販ラインナップ
パンフレットは一昨日買ったから、他に必要なものがなければスルーして席に行くよ。
パンフレット(公式ガイドブック) 1000円
このパンフレット、本場BBC Promsの当日用パンフレットと同じサイズ感ですね! なんだか懐かしいです!
でも、この薄さで1000円って高いなぁ…… 比較的割高な同人誌(イラスト本)と比べても高いですよ。でも以前、オタク向けのコンサートでも似たような目にあったような、ぶつぶつ……
ほら、くどくど言ってないで早く3階席に行くよ。ここのホールは通路が分かりづらいから迷わないでね。
BBC Proms JAPAN 2019 Prom 6
2019年11月04日(祝) 18:00開演
オーチャードホール
指揮:トーマス・ダウスゴー (Thomas Dausgaard)
BBCスコティッシュ交響楽団 (BBC Scottish Symphony Orchestra)
アルトサックス:ジェス・ギラム (Jess Gillam)
ヴァイオリン:ワディム・レーピン (Vadim Repin)
ヴァイオリン:葉加瀬太郎
ソプラノ:森麻季
感想
終演後
というわけで、終演しました。今日は、数曲演奏されるたびに司会者の葉加瀬太郎さんたちのトークが入るような形式でした。要するに「N響ほっとコンサート」形式ですね。
言い得て妙だね。「題名のない音楽会」形式とも言いそうだね。
というわけで感想合戦いきましょうか。
前半プログラム
レナード・バーンスタイン:「キャンディード」序曲
ミヨー:「スカラムーシュ」
マルコム・アーノルド:「4つのスコットランド舞曲」より第3楽章
ジャコモ・プッチーニ:「ラ・ボエーム」より「私が町を歩けば」
ヘンリー・パーセル:「夕べの讃美歌」
フランツ・ワックスマン:「カルメン幻想曲」
後半プログラム
葉加瀬太郎:「Another Sky」
葉加瀬太郎:「情熱大陸」
ロッシーニ:「ウィリアム・テル」序曲より「スイス軍隊の行進」
ラヴェル:「ツィガーヌ」
プッチーニ:「ジャンニ・スキッキ」より「私のお父さん」
山田耕筰:「赤とんぼ」
エンニオ・モリコーネ:「ネッラ・ファンタジア」
ピーター・マックスウェル・デイヴィス:「An Orkney Wedding With Sunrise」
The Beatles:「Hey Jude」
エルガー:「威風堂々」第1番 (合唱団なし)
不詳:「蛍の光」 (原曲:スコットランド民謡「Auld Lang Syne」)
このサイトの書式だとちょっと見づらいですが、今回の曲目は上記のような感じです。配布されたプログラムにもパンフレットにも明記されていなかったので、わたしが司会者の曲紹介を気合いでメモしました。
配布されたプログラムはこんな感じの雑な記載
「ほか」って、マジで観客を舐めてんのって話だよね。それとも「曲目なんてどうでもいいライト層がメインターゲットです」って公言したいの? うちのデザイン事務所で同じことをやったら、間違いなく私の首が飛ぶよ。
ユキさんがここまでキレてるのもなかなか珍しいので、逆にわたしがドン引きなんですが……
私は2日前の「Prom 4」にも来てて、そこでの不満点も多少あるから、今日は余計にね…… その話は後にして、まずは曲の感想について話そうか。
感想といっても全部の曲には言及できないので、特に気になった曲のみコメントしますね。
前半1曲目
レナード・バーンスタイン:「キャンディード」序曲
まず「キャンディード」序曲。日本では「題名のない音楽会」でおなじみのアレですね。昔はプリキュアの直後に番組をやっていたので、わたしもよく覚えています。
というか、この曲から始まったらそのまんま「題名のない音楽会」じゃん。そんなにBBC Promsっぽい曲でもないし、主催団体(テレビ朝日)の陰謀を感じる……
「キャンディード」序曲は、本家BBC Promsでは約3年に1回ペースで取り上げられている模様。最終夜(ラストナイト)で演奏されたのは1998年と2013年の過去2回。
なお、同曲が「題名のない音楽会」のテーマ曲だったのは2015年まで。
前半2曲目
ダリウス・ミヨー:「スカラムーシュ」
(アルトサックス:ジェス・ギラム)
3つの楽章から構成される、アルトサックスの協奏曲みたいな曲。ミヨーはフランス6人組の1人、それ以上は私の専門外なので割愛させてもらうね。
ソリストのジェス・ギラムさんは、まだ若いのに本家BBC Promsにはもう4回も出演したことがあるみたいですね!
前半3曲目
マルコム・アーノルド:「4つのスコットランド舞曲」より第3楽章
前半4曲目
ジャコモ・プッチーニ:「ラ・ボエーム」より「私が町を歩けば」
(ソプラノ:森麻季)
前半5曲目
ヘンリー・パーセル:「夕べの讃美歌」
(ソプラノ:森麻季)
前半6曲目
フランツ・ワックスマン:「カルメン幻想曲」
(ヴァイオリン:ワディム・レーピン)
カルメンファンタジー! と思ったら、わたしの知ってるカルメンファンタジーと違うんですけど……
ベルの言っているのはサラサーテの「カルメン幻想曲」かな? 今日の曲と比べると最初の部分から全然違うから、逆にすぐ分かるよね。
レーピンさんはもう50歳近いですけど、さすがに上手いですよね。めちゃくちゃ難しそうなところも、きっちりと主旋律を際立たせて奏でていました。
後半1曲目
葉加瀬太郎:「Another Sky」
(指揮・ヴァイオリン:葉加瀬太郎)
後半1曲目の「Another Sky」はANAの飛行機を降りるときに流れている例のアレですよね、JAL派のわたしでもこの曲は大好きです! こんな機会でもないと生演奏を聴く機会がないので嬉しいです!
後半2曲目」
葉加瀬太郎:「情熱大陸」
(指揮・ヴァイオリン:葉加瀬太郎)
「情熱大陸」の方は言わずと知れた葉加瀬太郎さんの代表曲だよね。私はあまり馴染みがないけど、知っている人はかなり多いよね。こういう近代日本の曲をピックアップするのは素直にいいと思う。感謝。
欲を言うなら、葉加瀬太郎さんの弾き振りだったせいで、ちょっとオーケストラのまとまりが揺れ気味だったのが…… 指揮者ありでがっつり演奏してくれてもよかったんですよ?
後半3曲目
ジョアキーノ・ロッシーニ:「ウィリアム・テル」序曲より「スイス軍隊の行進」
これもみんな知ってる、運動会にぴったりの例のアレですよね。曲名でピンとくる人もいるかもしれませんが…… ちなみにこの部分は序曲のほんの一部で、序曲全体は12分くらいあります。
司会の葉加瀬太郎さんが、この曲の前に「本家BBC Promsはもっと盛り上がるんだ! 次の曲は盛り上がるし盛り上げろ!」と檄を飛ばしたから、この曲が終わった後は盛り上がったよね。
開始1時間半で、ようやくBBC Promsの最終夜(ラストナイト)っぽさを感じた場面でしたね。ようやく。
後半4曲目
モーリス・ラヴェル:「ツィガーヌ」
(ヴァイオリン:ワディム・レーピン)
そしてラヴェルの「ツィガーヌ」で再びレーピンさん登場ですね。相変わらずこのおじさんはヴァイオリン弾くのがやたら上手い。
ミヨー、ビゼー、ラヴェル…… ちょっとフランス要素多くないかな、って感じたのは私だけ? もうちょっとイギリス要素全振りでもよかったんだよ。
演奏終わった奏者にはインタビューがあったんですが、レーピンさんのインタビューは面白かったですね。BBC Promsの印象について聞かれて「狂ったプログラムに狂った観客」と即答していたのが笑えました。
8週間ぶっ通しのプログラムも狂ってるし、それに通いとおす観客も狂ってるよね。本家のラストナイトはその中でも群を抜いて「狂った観客」しか入れないから、だからそれはもう大変なお祭り騒ぎになるんだよね。
最終夜(ラストナイト)
本家BBC Promsの最終夜(ラストナイト)のチケットを獲得するためには、それ以外のProm(コンサート)に少なくとも5回行かなければならない。そのため、チケット購入のハードルがとても高く、また前日から並ぶ「徹夜組」なども多く発生する模様。なので最終夜(ラストナイト)の客席は必然的に「狂った観客」ばかりになる。素敵。
その狂気こそが、今日この場に足りていないものなんですよね。今日はチケットさえ買えればそんな熱狂ポイントが高くなくても入場できますし。もちろん、「狂った観客」も何人か混じっているようですが……
後半5曲目
ジャコモ・プッチーニ:「ジャンニ・スキッキ」より「私のお父さん」
(ソプラノ:森麻季)
後半6曲目
山田耕筰:「赤とんぼ」
(ソプラノ:森麻季)
後半7曲目
エンニオ・モリコーネ:「ネッラ・ファンタジア」
(ソプラノ:森麻季)
「赤とんぼ」では、森麻季さんのソプラノの曲では唯一、日本語で歌詞を歌っていました。ロシアでコンサートを聴いた時も思ったんですが、やはり歌曲はその国の母国語の曲が一番盛り上がりますよね。
……盛り上がるというには、「赤とんぼ」という曲はしんみりしすぎていたけどね。オーケストラもお休みしてピアノの伴奏だけだったし。
後半8曲目
ピーター・マックスウェル・デイヴィス:「An Orkney Wedding With Sunrise」
そしてバグパイプの出てくる曲。バグパイプといえばスコットランドですもんね。「結婚式」って言ってるのにたまに暗い雰囲気になるのが気になりましたが……
BBCスコティッシュ響らしい、いい選曲だと思うよ。民族的な響きが多かったよね、バグパイプっぽいって言えばそれまでなんだけど。
「バグパイプの出てくる曲だよ!」と言われていたのにバグパイプがなかなか出てこないと思いきや、最後の最後に客席側から入場してきましたね。伝統衣装のスカートを履いたおじさんがバグパイプを演奏しながら。
スカートじゃなくてキルトね。本家BBC Promsだったらバグパイプおじさん入場の瞬間から拍手喝采になりそうな場面だったけれど、観客みんなおとなしかったね。それだけはちょっと羽目を外せなくて残念。
後半9曲目
ビートルズ:「Hey Jude」
そして突然のビートルズ、観客の合唱付き。
あれ、でも「Hey Jude」って今年のBBC Promsでもやりましたよね。あれって最終夜(ラストナイト)でしたっけ?
そうだっけ? 私は全部聴いてないから分からないけど、ラストナイトじゃない気がするなぁ……
調べた結果、2019年のBBC Promsで「Hey Jude」を演奏したのは上海交響楽団(Prom 57)のアンコールでした。
後半10曲目
エルガー:「威風堂々」第1番 (合唱団なし)
そして待望の「Pomp and Circumstance March No. 1」! これを最初に「威風堂々」と和訳した人はいいセンスしてますよね!
この曲は向こうでは「Land of Hope and Glory」という名前でもお馴染みだね、和訳すると「希望と栄光の国」かな。BBC Promsのラストナイトの定番だよね。
拍手が入った瞬間、そうそうこれこれって感覚になりましたよ!
……本場って拍手あったっけ。まぁいいや。
ノリと雰囲気の問題ですよ。やっと本場の狂気がここにも回ってきたな、っていう。さすがにクラッカーは鳴らせませんでしたが。
それはそれとして、オーケストラの演奏もこの曲はかなり気合が入っていて、今日一番の響き具合でしたね! テンポもわたしの理想のものと完全一致でしたよ!
いつもBBC Promsのラストナイトで演奏しているのはBBC交響楽団だけれど、BBCスコティッシュ響も遜色ないくらいに堂々とした演奏だったよね。私も歌いながら感動で涙が出ちゃったよ。
合唱団こそありませんでしたが、客席が実質合唱団でしたもんね。でも、わたしたちは暗唱してましたけど、歌詞カード見ながら歌っている人も多かったですよね。それだとステージや周囲を見れないのがもったいない……
プログラムの裏にある歌詞カード
それは仕方ないんじゃないかな。「Land of Hope and Glory」なんて日本の小学校では習わないもん。
それゆえ、暗唱しながら旗をブン回してるガチ勢のみなさんが輝いていましたね。まさに「音を楽しむ」という音楽の原則に忠実な感じで。今まで若干消化不良な感じもあったので、余計に輝いてました。
演奏後もみんな発散しきった感じで大盛り上がりだったよね、いやーよかった。惜しむらくは、オーチャードホールにはパイプオルガンが無いことと、演奏後の繰り返しが無かったことだね。
本家BBC Promsでは、「威風堂々」第1番の演奏終了後に、コーラス部分をもう1回繰り返して演奏される。
後半11曲目
不詳:「蛍の光」 (原曲:スコットランド民謡「Auld Lang Syne」)
そして最後の曲は、定番の「Auld Lang Syne (オールド・ラング・サイン)」!
……と思いきや、歌詞は「蛍の光」でした。解せぬ。
伴奏は完全に近年のBBC Promsで演奏される「Auld Lang Syne」のそれだったから、なんというか惜しいよね。日本での開催ということを踏まえれば、観客の大多数が歌えるのは「蛍の光」の方なんだろうけど。
それでも「BBC Proms」の名前を冠しているわけですし、わたしは「Auld Lang Syne」として演奏してほしかったなぁ…… NHKの連続テレビ小説「マッサン」にも出てきましたけど、あれ本当にいい歌詞なんですよね。
Should auld acquaintance be forgot, and never brought to mind? ~♪
(古き友のことはいつかは忘れてしまい、思い出すこともなくなるのだろうか)
Should auld acquaintance be forgot, and days of auld lang syne? ~♪
(古き友も、懐かしき日々も、いつかは忘れてしまうのだろうか)
For auld lang syne, my dear, for auld lang syne ~♪
(おお懐かしき日々よ、我が友よ、懐かしき日々よ)
We'll(↑) tak a cup o' kindness yet, for auld lang syne ~♪
(今こそ乾杯をしようじゃないか、忘れることのない懐かしき日々のために)
ってこっそり歌ってたんですが、ガチ勢の皆さんもやっぱりこっち歌ってたのかな……
さっきも言ったとおり日本人に馴染みがあるのは「蛍の光」の歌詞の方なんだろうけど、「Auld Lang Syne」が友情や絆を歌っているのに対して、「蛍の光」は別れの場面の曲なのが、何ともミスマッチだよね……
企画の人そこまで考えてないと思いますよ。
真顔でなんてこと言うの、ベル。
そういえば、「イギリスの海の歌による幻想曲」や「ルール・ブリタニア」、「エルサレム」、「イギリス国歌」は演奏されなかったですね。個人的にはめっちゃ楽しみにしてたのに……
本家BBC Promsの最終夜(ラストナイト)では、「威風堂々」第1番の後にそれらの曲を順番に演奏し、最後に「Auld Lang Syne」の合唱で締めるのが恒例となっている。
まぁ、プログラムにも載ってなかったしねぇ。日本人にとってはいずれも馴染みの薄い曲ばかりだから、仕方ないといえば仕方ないけど。
もしそうだったら今までさんざん馴染みの薄い曲ばかりやっておいて今更何を言っているんだって感じですけどね。それなら最終夜(ラストナイト)の風物詩の方を入れるべきだろう、とわたしは声を大にして言いたいです。
というわけで終演。「威風堂々」第1番のあと、定番の「ルール・ブリタニア」等々がなくていきなり「蛍の光」に飛んだから、本家のラストナイトと比べると最後の方はちょっとあっさりしてたよね。
それにしてもオーチャードホールだと終演後に渋谷の人の波をかき分けて渋谷駅まで行かなきゃいけないから正直しんどいなぁ……
批判
ここからは、かなり語調の強めな批判を含みます。あらかじめご了承ください。
ここからは、当サイトの記事としては珍しく批判パートに入ろうと思います。既に今までの時点でもかなり批判っぽい発言は入っていますが……
足りないよ。もちろん良いところもあったけれども、それ以上に今回の「BBC Proms JAPAN」には疑問を投げかけたくなるところが多すぎる。初回だから仕方ないところもあるけど。
ユキさんがキレ始めると、まとめるのがしんどくなるので程々に勘弁してください……
まず、本家BBC Promsの魅力といえば、何と言っても「最前列のアリーナ立見席」と「最上段のギャラリー立見席」の2つだよね。どっちも気軽に楽しめることが売りで、BBC Promsの理念にも深く関わる箇所。
本家の最上段のギャラリー立見席からの眺め
本家の最前列のアリーナ立見席からの眺め
でも、ギャラリーはともかく最前列のアリーナ立見席を確保できるクラシック向けのコンサートホールなんて日本に無いですよ。あえて挙げるなら、日本武道館や両国国技館くらいですかね?
でも、BBC Promsの名前を使うくらいなら、当日並べば入れる感じの気軽に行ける立見席は多数欲しいよねぇ。
あと、全体的にチケットの値段が高すぎる。海外から来ているぶん仕方ないとはいえ、そのへんの海外オーケストラの公演と変わらないし、差別化もできてないよね。そこに「気軽さ」なんて微塵もない。
今回の「BBC Proms JAPAN」では、学生限定の格安のシートは申し訳程度に発売されてましたが…… 当事者であるわたしでさえ、どうやって入手できるのかよく分かりませんでした。そもそも数が少ないですし。
暴論だけど、本家を忠実に真似しようとするなら、大きいホールの最上階のエリアを全席立見席にするくらいでもいいと思うけどね。さすがにそれだと他の席が売れなくなるから無理かな?
そういえば、本家BBC Promsでは飲食も自由なんですよね。わたしがロンドンに行った時も、ギャラリーでサイダーをあおりながら陽気に楽しんでた記憶があります。そういうのも今回は無かったですよね。
飲食は…… ホール側の事情もあると思うから、そこの協力がないと現状では難しいとは思うなぁ。当然、通常のコンサートでは飲食は禁止されているわけだし、逆にそっちにBBC Promsのノリを持ち込まれても困るし。
前にフェスタサマーミューザで、そこの境界を勘違いした痛いおっさんが缶ビールを持ち込んで飲んでましたよね。演奏開始直後、おっさんが缶ビールをカシュッって開けた瞬間にユキさんがガチギレするという……
あの件は未だに許していない。そういうのもあるから、お客さん側が「BBC Proms空間」とそれ以外の場所とでしっかり線引きをできるようになるまでは、特に飲食に関しては難しいと思う。
そもそも何でオーチャードホールなのさ。音響が微妙なことでも有名だし、NHKホールみたいにキャパシティがあるわけでもない、パイプオルガンもない。そして他と比べてアクセスも悪すぎる。メリットがひとつもない。
ちなみに、本家BBC Promsのメイン会場であるロイヤル・アルバート・ホール周辺は、広大な王立公園(ハイド・パーク、ケンジントン・ガーデンズ)もあって、ロンドン内では比較的静かなエリアとなっている。
もちろん、日本にはロイヤル・アルバート・ホールみたいな大規模なコンサートホールは無いから、ある程度の妥協は必要なんだけれども…… それでもオーチャードホールである必要性は全く無い。
ロイヤル・アルバート・ホールの近くって、広い公園がありますよね。個人的には、似た雰囲気を持つ上野公園の東京文化会館でやってもらいたかったんですが…… 美術館や博物館もたくさんありますし。
でも東京文化会館にはパイプオルガンが無いんだよね。そう考えると、同じく似たような雰囲気の代々木公園に隣接するNHKホールが適任じゃないかな。音響は悪いけど、キャパシティは国内最大級だし。
NHKホールも音響悪いことで有名ですけど、オーチャードホールと比べたら正直そこまで差はないですよね。悪い意味で。
それとも、今回はテレビ朝日が噛んでいるから、NHK関連施設には手を出せなかったのかな。 そもそもBBCはNHKと同じ公共放送なんだから、そっちのコネクションがあってもよかったんだけれど……
NHKは毎年「NHK音楽祭」を開催しているので、そっちと趣旨が少し被っちゃうんですよね。まぁ、あっちは例年マイナーすぎる曲ばかりで攻めてくるので、さすがのわたしも手が出ませんが……
もう合体して開催しちゃってもいいのにね、「NHK音楽祭」と「BBC Proms JAPAN」。そうすれば一度に色んなオーケストラを見ることもできる。
そういえば、今日の様子は後日テレビで放送されるんですよね。それは素直に楽しみです。
今日は休憩込みで2時間50分くらいあったわけだけれど、それをなんと55分の番組にコンパクトにまとめるそうだよ。すごいよね、神編集にも程があるよね。3倍速くらいで流すのかな? わー、たのしみー。
笑顔で煽りながらマジギレしてる…… こわ……
まともに視聴者を育てられずに凋落するばかりの日本の民放テレビ局には、私は何も期待していないので、もはや何も言う気はないよ。どうせ半分くらい司会者がしゃべってるようなバラエティ形式になるんじゃないの?
メディアには辛辣な我が事務所ですが、発言はそれぞれ個人の感想であり、所属組織を代表する意見ではありません。というか本記事はフィクションです。あらかじめご了承ください。 ……って免罪符書いておきますね。
あと何と言っても、日本でコンサートをやる限りは日本式の盛り上がり方にしかならないんだよね。ほら、日本人って基本的にはおとなしいから。曲の途中で盛り上がるようなことはしない。
ヨーロッパの文化圏だと「フゥー!」って叫びながら拍手が起こりますよね。司会の葉加瀬太郎さんも似たようなことを促していた気がします。
司会の葉加瀬太郎さんは向こうの盛り上がり方をよく知っているから、それを会場に持ち込もうと一生懸命にアピールしていたけれど…… まぁ、やっぱりここは日本だったよね。
本場のプロマー(BBC Promsの常連客)がサクラとして10人くらい観客席に紛れていれば、日本のお客さんも吹っ切れると思うんですけどね…… 現に「ウィリアム・テル」序曲の直後からは「フゥー!」って感じの盛り上がり方に近づいていましたし。
でも、国ごとのコンサート文化の違いは本当に難しい。それぞれのメリットデメリットもあるわけだし。単にマネだけすればいいっていうわけでもない。
でも特に今回は「BBC Proms」の看板がついてるわけですし、マネしないと「BBC Proms空間」が出来上がらないですからね…… 難しいなぁ。
で、結局は「BBC Promsって何よ?」という話に回帰する。じゃあ例えば、今回みたいにBBC所属のオーケストラが「威風堂々」第1番の合唱付きを演奏すれば、それだけでBBC Promsになるの?
ならんと思います。それっぽくはなりますが。
でも一番最初に言ったとおり、BBC Promsの理念そのものは、日本では既にフェスタサマーミューザなどである程度達成されているんだよね。その上で日本人が「BBC Proms JAPAN」に思いを馳せるとするなら……
一番大事なのは「伝統的なBBC Promsらしさ」という点なんだと思うんだよね。ラストナイトのクレイジーな雰囲気だったり、イギリスの曲を中心としたプログラムだったり、あとは気軽に楽しめる感覚だったり。
そういう意味では、今日の「Prom 6」は最終夜(ラストナイト)らしい感じには多少なってましたよね。
逆に、それ以外の公演は「海外オーケストラの来日公演と何が違うの?」って感じだったけどね。チケットもめっちゃ高いし、ありきたりな曲目が多いし、そんなのわざわざ「BBC Proms」の看板を使ってやることじゃない。
そうですね、「BBC Proms」の看板を使うなら、せめて定番のホルスト「惑星」や、その他イギリスな感じのプログラムは欲しいですよね。
ただ、ひとつだけ「Prom 3」はジャズ中心の少し変わった内容だったみたいだから、そこだけは少し「BBC Promsらしさ」はあったかもね。私はその日は行ってないから、詳しくは言及できないけど。
もちろん、何度も擁護するけれども、特に司会の葉加瀬太郎さんなんかは必死にBBC Promsの盛り上がり方を観客に伝授しようとしていたよね。でも当事者だけ頑張っても仕方ない。企画段階でぬるいわけだから。
どこがどう「ぬるい」のか分かってない人です。
悪い言い方をすると、BBC Promsの知名度を使って、裕福なライト層をいい気分にさせれば、そこそこ利益になるんだから。そこに「本物らしさ」とかいらないし、むしろ集客の邪魔になるなら捨てるしかない。
笑顔でエグいこと言うなぁ…… でも、そんなことしてたら「本物」を知っている人たちからは見向きもされなくなりますよね? そしてライト層がいい気分に盛り上がるだけの謎のお祭りが出来上がる……
今回、その「本物」を知っているヘビー層の多くが今回の「BBC Proms JAPAN」に対して少なからず不満を露わにしているという事実が、それを薄々物語っているけれどね。私の批判なんて全然ぬるい方だよ。
それを踏まえて、ユキさん的に「BBC Proms JAPAN」のあるべき姿って、最終的にはどんな感じになるんですか?
私の願いとしては、まず観客がこの「BBC Proms JAPAN」に触れることによって、ロンドンの本家BBC Promsに興味を持つようになってほしい。
そのためには、ソフトウェアの面で本家との差を無くしていかないといけない。それは本家の「マナー」を「ルール」化して積極的に取り入れればいいと思う。日本人は「ルール」には忠実だし。
そして何より、ロンドンで本家BBC Promsに触れた日本人が懐かしみを持つようなコンテンツであって欲しい。今回は懐かしみよりも、むしろ哀れみを感じるような内容だったからね……
「もしロンドンなら……」って感じで、反語的に本家BBC Promsの様子を思い出す感じでしたもんね。
「今回の日本版に参加してもBBC Promsは正直全く感じられないので、素直に夏のロンドンに行った方がいい」みたいな感じだったよね。最終的な理想は「ロンドンに行かなくてもBBC Promsを体感できる」なんだよ。
なので、もし次回があるとしたら、どういう方向性で変化を入れるか、というのがひとつの注目点だよね。
要するに、このままBBC Promsの知名度を利用した裕福なライト層向けのゆるふわ路線でいくか、それとも狂気の祭典であるBBC Promsの余韻を日本でも味わえるようにするガチ路線でいくか……
今回みたいに民放テレビ局が噛んでいる以上は、前者のまま突き進む気がしてならないけどね。約3時間の公演を55分に神編集する奴らだよ?
また放送時間の話してる…… まぁさすがにわたしも前者のままだったらこのサイトでは紹介しませんし、むしろ「このイベントには近づかないでください!」という注意喚起を出すような気がします。
という意味を込めて、アンケート書いたりフィードバックしたりしたら、後は静観だね。ガチ路線に転ぶ可能性も無いわけではないし、音楽ファンとしては純粋にそっちに行ってほしい。切実に。
ちゃんと声を上げることは大事ですもんね。わたしも「次があるなら『蛍の光』ではなくて『Auld Lang Syne』として歌いたいなぁ……」って感じのことをアンケートにいっぱい書いてきました。わくわく。
私がプロデューサーなら「じゃあ次は『蛍の光』を『Auld Lang Syne』の歌詞で歌ってみましょう」「じゃあ次は『エルサレム』を追加しましょう」って年々レベルアップさせてライト層を調教するんだけどな。
また澄ました顔してエグいこと言ってる……
だって、最終的には純粋なコンテンツの魅力で勝負しないと。ライト層向けのゆるふわ路線なんて続けても、いつかは飽きられて終わるだけだよ?
だんだん会話がループしてきたので、そろそろまとめますか。
というわけで「BBC Proms JAPAN」が今後も日本で開かれるなら、以下の点はなんとかしてもらいたいね。
まとめ
・立見席(に準ずる席)をたくさん設定
・渋谷のオーチャードホールから場所を移す
・野外ステージイベントは広い公園で開催
・定番の曲をもっとラインナップに加える
・ラストナイトはほぼノーカットで放送
・盛り上がり方や細かい作法をルール化して参加者に徹底し「BBC Proms空間」を作り上げる
・本家に興味を持てるような、本家が懐かしく思えるような企画づくり
ちなみにBBC Promsの出張版はオーストラリアやドバイでも開催されているけれど、そっちを見る限りだと希望があるようでないようで…… 難しいね。
ユキさんがいつもオススメしてるブログの人も、似たようなことを記事の中で書いてましたね。「ドバイ版ではホルスト『惑星』もやったし、『威風堂々』第1番にはちゃんと合唱団がついていた」って。
私は始まる前から色々言うよりは自分の目で見てから色々言おう、って思ってたけど、結果としてはこの人の言ってる内容とあんまり変わらないんだよね。もうちょっと本番でサプライズが欲しかったなぁ。
批判は期待の裏返しですからね。わたしもダメ元で期待してみます。
ダメ元って…… 気持ちはわかるけど、そういうの口に出したらまたネットで叩かれるよ?
BBC Proms
・通称「プロムス」
・毎年夏に開催されるクラシック音楽のお祭り
・主な会場はロンドンの「Royal Albert Hall」
・約2ヶ月間、ほぼ毎日コンサートがある
・ラジオ中継の様子をインターネット配信(30日間有効)
・各コンサートは「Prom」と呼ばれ、「Prom 1」「Prom 2」のように番号が振られる