N響 第1921回定期公演A 雑感

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この記事の内容は、うさぎの主観がメインとなります。そのため、一般的な解釈や作曲者の意図とは必ずしも合致しません。ご理解いただける方のみお読みください。

導入

NHKホール
NHK Hall
東京都 渋谷区
Shibuya, Tokyo, JAPAN
05 Oct 2019
うさぎ

というわけでNHKホールに来ました!

雪貴

今日はN響(NHK交響楽団)の定期公演に来たんだよね。

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NHK交響楽団 第1921回定期公演A
2019年10月5日(土) 18:00
NHKホール
指揮:井上道義
ティンパニ:植松透、久保昌一

グラス:2人のティンパニストと管弦楽のための協奏的幻想曲
ショスタコーヴィチ:交響曲第11番「1905年」

雪貴

ショスタコーヴィチの交響曲第11番「1905年」はそこまで演奏機会多くないから楽しみだね。

うさぎ

11月に都響(東京都交響楽団)も演奏予定ですけどね…… 都響の方で聴ければいいかなと思っていたんですが、ちょうど予定が空いたのでこっちにも来ちゃいました。

うさぎ

指揮者の井上道義さんについては、あまりよく知らないんですよね…… まずはクリストフ・エッシェンバッハ氏との見分け方を教えてください。

雪貴

各方面に失礼な中学生だな…… といっても、私もそこまで詳しくないんだよね。来歴を見ると、2007年に日比谷公会堂でショスタコーヴィチの交響曲全曲を演奏したんだとか。

雪貴

ことショスタコーヴィチに関しては、スペシャリストと言っても差し支えないんじゃないかな。あとは、オペラの方面にも力を入れているのかな? だからそういうアプローチの表現もあるかもね。


感想

うさぎ

以下、感想合戦です。

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1曲目
グラス:2人のティンパニストと管弦楽のための協奏的幻想曲

うさぎ

すごかったですね…… ティンパニってあんなにはっきりとした音程で歌えるんだ……

雪貴

ひとつのティンパニで、ペダルで音高を小刻みに変えて、オーケストラの主旋律と同じ音で歌っていたよね。

うさぎ

演奏前のチューニングでじっくり丁寧に音の高さを微調整していたのを思い出しました。ティンパニごとの音の高さだけでなく、ペダル踏んだ時の鳴り方も細かくチェックしていたんですかね……?

雪貴

事前にSpotifyで聴いてはいたけれど、あんなにシビアな曲だとは思わなかったよ……

うさぎ

あとは、2人のソリストも、後ろの打楽器パートも、それぞれ息がぴったり合っていて凄かったですよね。プロの皆さんとはいえ、さすがに見ていて震えました!

うさぎ

それにしても、クラシック音楽というよりは、ショーみたいな感じでしたね。曲調といい、見せ方といい…… 最高に楽しかったので、細かいことはいいんですが。

雪貴

ティンパニ何台あるんだよ、って感じだったよね。写真や動画は関連リンク参照。


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2曲目
ショスタコーヴィチ:交響曲第11番「1905年」

雪貴

ショスタコーヴィチの交響曲第11番、タイトルは「1905年」。さて問題、1905年といえば何の年?

うさぎ

ロシア第一革命ですよね。

雪貴

それをスッと答えられる中学生って、何か嫌だなあ……

うさぎ

1904年の日露戦争くらいなら小学校でも習うじゃないですか。日露戦争で消耗させられたこともロシア第一革命の一因になったんですよね。

雪貴

そうとも言われているね。そうして不満の溢れた首都サンクトペテルブルクの民衆に対して、軍隊が大規模に発砲したのが、曲のモチーフにもなっている「血の日曜日事件」だね。


うさぎ

まず第1楽章、「冬宮殿のテーマ」とでも呼びたくなるような特徴的なテーマで静かに始まりますよね。静かに雪の降る冬の日、うっすらと雪の積もった冬宮殿と宮殿広場が見えるようでした。

雪貴

第1楽章のタイトルは「宮殿広場」だもんね。

冬宮殿と宮殿広場 (ロシア・サンクトペテルブルク)

うさぎ

時々鳴るファンファーレのような音は、皇帝(ツァーリ)や軍隊のテーマでしょうか。

うさぎ

そして街全体に覆いかぶさる、陰鬱とした空気…… 不景気といいますか、生きるのに精一杯といいますか、そんな生活に苦しむ市民が見えるような、街全体の暗い雰囲気が見えました。


うさぎ

そして間を空けずに第2楽章、ついに市民が立ち上がります。

雪貴

第2楽章のタイトルは「1月9日」…… まぁ、つまり「事件当日」ということだよね。

うさぎ

この楽章で登場する特徴的なテーマは「反乱のテーマ」とでも呼びましょうか。テーマは少しずつ重なって大きくなり、市民全体の叫びとしてこだまする……

うさぎ

興味深かったのは、市民は叫びっぱなしじゃないんですよね。大声で主張を叫んで、そして皇帝の反応を待つかのように一旦静まって、反応がないことを確認したらさらに大声で主張を再開し、そしてまた静まる……

うさぎ

ロシア物のオペラでそういうシーンを見たことがあるような気がします。「ボリス・ゴドゥノフ」だったかな? あの襲い掛かってくるような叫びの歌と、同じような雰囲気を感じました……

雪貴

静まったところで「皇帝はどうお考えなのだろうか」と市民がざわついているような、私もそんな雰囲気が見えたよ。そして、史実ではこの日、皇帝はサンクトペテルブルクを離れていたんだよね

うさぎ

そして小太鼓の音とともにやってくる軍隊。市民と軍隊が対峙し、緊張がどんどん膨れ上がっていって……

うさぎ

ついに均衡が崩れ、決壊……! 文字にするのも憚られるようなカタストロフィ……!

雪貴

最悪の結末、涙が止まらなかった。何より、皇帝が不在だったことにより、その日はいくら叫んでも届くことがなかったっていうのがね……

うさぎ

最後は「冬宮殿のテーマ」が空しく流れる…… こんな結末ってないですよ、おかしいですよカテジナさん……

雪貴

史実は史実。「その日」は確かに歴史上存在した。そこから目を逸らしてはいけない。


うさぎ

……ところで、クライマックスのシーンの小太鼓は「発砲」「銃声」を意味する、みたいな解釈あるじゃないですか。

雪貴

わりと一般的にはそう言われているみたいだね。

うさぎ

だからわたしも頑張ってそう聞こうとしたんですよ…… ところが、あまりそういう風には聞こえなかったのが意外でした。

うさぎ

銃声とか、暴力とか、そういった細かい描写を超越したような、カタストロフィの概念だけが見えました。「細かいところはお見せできないが、とんでもない惨劇が繰り広げられている……!」みたいな。

雪貴

わかる、今日はまさにそんな感じで、クライマックスはじっくりと重厚に演奏してたよね。指揮者の「作劇術」的なアプローチがそう感じさせたのかな。

うさぎ

なるほど、とすると速いテンポで駆け抜けると生々しい銃声みたいに聞こえるんでしょうかね?


うさぎ

そして弦楽器のピチカートで繋いで第3楽章、市民が喪に服すような、街全体の雰囲気が沈んだようなイメージでしたね。

雪貴

第3楽章のタイトルは「永遠の追憶」。Wikipediaによると、革命歌「君は犠牲になった」っていう曲も引用されているみたいだね。

うさぎ

歴史の教科書だと事件→革命って感じの書き方だと思うんですが、第3楽章ではその間の時間が描写されているような感じでしたよね。街全体が追悼ムードというか。


うさぎ

そして、また継ぎ目なく第4楽章に突入、いきなり革命歌の大合唱から始まるのでちょっとびっくりしますよね。その後は、第2楽章みたいに、市民のざわつきからひとつの大きな叫びとなるのを感じました。

雪貴

革命歌「圧政者らよ、激怒せよ」だね。ちなみに第4楽章のタイトルは「警鐘」。

うさぎ

そして曲はいったんクライマックスを迎えた後、懐かしい「冬宮殿のテーマ」に戻ってきます。しかし、木管楽器のフレーズが加わり、一番最初とは違う雰囲気に感じます。

うさぎ

木管楽器が奏で始めるのは、第2楽章の「反乱のテーマ」…… つまり、街は今までと同じような状態に戻ったものの、市民の間には確実に反乱の風が吹いている…… そんな描写ですよね、これ。

雪貴

そして心臓の鼓動のような大太鼓の響きで「警鐘」の部分が始まる……

うさぎ

次回予告みたいな感じになるかと思ったら、どちらかというと市民の内面を表したような、感情的なシーンでしたね。

雪貴

次回予告て…… まぁ、確かに歴史上はそのまま1917年のロシア革命に繋がるわけなんだけどさ。


うさぎ

……そういえば、第1楽章から第4楽章まで継ぎ目なくひとまとまりで演奏されましたよね。アタッカって言うんでしたっけ?

雪貴

そうだね、私もこの曲を生で聴くのは初めてだったら、全楽章アタッカで繋がっているとは思っていなかったな。楽章ごとに明確にシーンが分かれているから、余計にね。


雪貴

というわけで、今日は本当にすごい演奏だったね。「1905年」の第2楽章は本当に圧巻だったよ。

うさぎ

N響のお客さんって終演後すぐ「ブラボー!」って叫びたがるおじさんが多いイメージなんですが、今日の「1905年」は最後の余韻が鳴り終わってから指揮者が振り向くまで、不気味なまでの静けさに包まれていましたね……

雪貴

それは仕方ないよ、みんな「見た」んだから。1905年のあの日を、あの光景を。ただ茫然となるしかなかったよね。

雪貴

……あと、一部界隈では「この曲は絶対にフライングブラボーしてはいけない」という戒めがあるとかなんとか。

うさぎ

?? よく分かりませんが、まだ鐘があるのにフライングブラボーしちゃう人なんているわけないじゃないですか。

うさぎ

あっ、鐘といえば…… いつもどおり3階L席に座ってたんですが、あそこからだとわたしの大好きなチューブラーベル(別名:のど自慢の鐘)が全然見えないことに気付いてショックでした。チューブラーベルが大活躍の曲なのに……

雪貴

それは…… まあ、ご愁傷様。お気に入りだもんね、あの席。鐘は11月の都響の時にじっくり見ればいいじゃん。

うさぎ

というわけでショスタコーヴィチの交響曲第11番「1905年」は、11月11日(月)にも都響が取り上げるのでよろしくお願いします。

うさぎ

そして続編の交響曲第12番「1917年」についても、同じく11月16日(土)に都響が取り上げるので、こちらもよろしくお願いします!

雪貴

誰に向かって宣伝してるんだよ…… ほら、早くアトリエに戻ってラグビー見るよ。今ちょうど日本がサモアをリードしてるって。

うさぎ

ひーん、すっかり忘れてました! 早く上野に帰ってテレビ見ましょう!