いざトミオカホワイト美術館へ
というわけで、南魚沼まで遊びに来ました!
今日はトミオカホワイト美術館に来たんだよね。
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トミオカホワイト美術館 公式ウェブサイト六日町駅からバスで来てもよかったんですが、ほくほく線(鉄道)で直江津方面から来ると微妙にバスの時間が合わないんですよね…… 今日は白貴お姉さまに車で迎えに来てもらえて助かりました。
六日町駅からトミオカホワイト美術館に向かうバスは、約2時間に1本のペースで運行している。帰りも同様。自家用車やレンタカーで来るのがオススメ。
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トミオカホワイト美術館 - バス時刻表ちょうど南魚沼に住んでいるうちのお姉ちゃんと会う用事があったから、連れてきてもらえて良かったね。
一応ここの地元民だからね、そのくらいお安い御用だよ。ついでに私も久しぶりに見て行こうかな。
富岡惣一郎とトミオカホワイト
で、ここトミオカホワイト美術館は、画家の富岡惣一郎の作品が集められた美術館だね。
富岡惣一郎 (1922-1994)
新潟県上越市生まれの画家。独自の画風により、雪国をモチーフとした絵を数多く生み出した。後年にはヘリコプターや飛行機から見た「鳥の目」の視点による絵も数多く手がけた。
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トミオカホワイト美術館 - 富岡惣一郎美術の授業で富岡惣一郎氏の「トミオカホワイト」の話を聞いたことがあったので、いつか来てみたいと思っていたんですよね。詳しいことは何も知らないですけど。
確か「トミオカホワイト」っていうのは、富岡惣一郎氏が雪の白さを表現するために作った絵の具なんですよね! わたしも雪景色の絵を描く時に使ったら、いい感じの絵が描けるんでしょうか?
うーん、私のイメージとちょっと違うかな。「トミオカホワイト」は富岡惣一郎が雪景色の作品を描くために作った絵の具のひとつであって、確かに材質的にも素晴らしい絵の具だけれど、そんな普遍的なものではないイメージ。
そうだね、「トミオカホワイト」自体は富岡惣一郎の世界観のために作られた絵の具、っていう感じだね。「トミオカグレー4」とか、そういう名前の別の色もあったはず。いずれも富岡惣一郎の世界観のためのものだよ。
トミオカホワイト
富岡惣一郎の開発した油絵用の白い絵の具の名称。当時の従来品と比べて、黄変や亀裂が少なくなるように作られている。富岡惣一郎の絵の多くは、この白い絵の具の色が大半を占めており、転じて富岡惣一郎の描いた作品の世界観のことを「トミオカホワイト」と呼ぶこともある。
へええ、勉強になります…… とりあえず、それを使えば簡単に素敵な雪景色の絵を描ける、という訳ではないことは分かりました。それにしても、富岡惣一郎氏の世界観ってどんなものなんだろう。
まぁ、富岡惣一郎の世界観、っていうのはこの先の展示で実際に絵を見ればよく分かると思うよ。とにかく中に入ろうか。
うう、富岡惣一郎氏の作品がどんな絵か知らないまま「トミオカホワイト美術館行きたい!」って言っていたことがバレてしまいます……
ベル…… まぁ、見たことがないなら、なおさら本物を見に来れてよかったじゃない。ほら入るよ。
美術館の入口
左側が入場券売り場、右奥の扉の先が展示室
感想
それでは感想、の前にひとつだけ…… 取材時点(2019年10月)では、展示室内は撮影禁止でした。なので作品の写真はありませんが、ご了承ください。
まぁ、公式ウェブサイトを見れば一部作品の写真が載っているから、そちらを見てもらえばいいと思うよ。
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トミオカホワイト美術館 - 富岡惣一郎関連リンク
ミュージアムショップ - ポストカードちなみに我々が今回見た展示のテーマは「雪国巡礼」でした。
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富岡惣一郎没後25周年「雪国巡礼」展示室の中には40点ほど展示されていて、描かれた年代の順番に時計回りで並べられていました。わたしが好きなのは中期~後期ごろの絵でしたが、抽象的すぎる絵から写実的な絵まで、実に幅広く並んでいましたよね。
濃い色の上に「トミオカホワイト」を塗って、そこから削るように描いたんだっけ? 塗られた白色からのぞく下地の濃い色も、なかなかの写実的効果を出していたよね。
だからこそ「白の魔術師」と人は呼ぶのかもしれませんが、わたしの印象としては「白を引き立たせるための黒」にもかなりこだわりが見えました。でなければ、あんなふうにモノトーンの絵ばかり描けませんよ。
黒だけじゃなくてグレーや紺といった色の場合もあるけれど、確かに基本的には白と濃い色とのモノトーンだよね。
ごく一部の作品では他の色も使われているけどね。
作品例 (参考:クリアファイル)
富岡惣一郎氏は雪舟の墨絵に影響を受けて以降、「鳥の目」の視点にこだわるようになって、実際にヘリコプターとかで空から風景を眺めてたくさん取材をしたんですよね。
そうだね。空から実際に写真を撮ったのか、スケッチで済ませたのか、あるいはその両方を駆使したのか、っていうのは私もよく分かっていないけれど……
雪舟の時代ももちろんだけど、19世紀までは「鳥の目」の視点って空想の中でしか想像できなかったじゃない。富岡惣一郎は、そういった想像の世界を飛び出して、実際に「鳥の目」で取材して描いた、っていうのが凄いよね。
20世紀以降の航空技術の進歩はめざましいですからね。そのおかげで、わたしたち一般市民も気軽に飛行機に乗って「鳥の目」から景色を眺められるようになったわけですし。
だからこそ、「鳥の目」の視点の作品が大半を占める中、後期の絵で1枚だけ「人の目」から見上げたような構図の木の絵があったのが逆に印象的でした。作品名はうろ覚えですが「冬・雪国 F」だったかな?
あとはニューヨーク時代の、カナダ・アラスカ旅行に行ってカメラを盗まれた時のエピソードも興味深かった。
旅行の初っ端でカメラを盗まれて、「これはスケッチせよという神のお告げだ」と思い直して毎日100枚くらいスケッチするようになった、っていうエピソードですよね。
そのおかげで1分くらいでスケッチする能力を習得したんだってね。ベルも旅行先でそういうお絵描き修行やってみたら?
いつも旅行中は写真撮るのに忙しくてそれどころじゃないので、確かに1日くらい「スケッチデー」みたいなのを設けてもいいかも…… それか、今度ハイキングに出かけた時に挑戦してみようかな。
あとは、富岡惣一郎氏がニューヨークで教わった「イミテーションをつくるな、トミオカ独自の世界をつくれ、これだけが世界に通用するのだ」という言葉も、わたしの心にも深く刺さりました。
結局はそこだよね。世間の潮流がどうであれ、自分の表現の芯を曲げないこと。そこは私も大いに見習わないとなって思ったよ。
ブレないというか何というか、富岡惣一郎氏は雪景色の「白の世界」に対して、ある意味執着のような愛情を持っていますもんね。
その執着ゆえに「トミオカ独自の世界」である「白の世界」がここまでしっかりと形作られたんだろうね。
わたしの大好きな「積もりたてのふわふわした雪の花」とは別方面の愛情ではあるんですが…… やっぱり富岡惣一郎氏の雪景色の絵には、同じ雪国生まれの民として、どこか懐かしさのようなものを感じました。
雪って地方によって色んな形質があるんですけれども、「雪・阿賀野川・津川」の絵をはじめとした、新潟県のこんもりと積もった雪がとてもよく表現されていますよね。本当に素晴らしいです。
それでいて、「北の海・流氷 A」の絵のような凍てつくような流氷や、海外のうねるような氷河の風景でも、それぞれの「白の世界」がしっかりと表現されているので、本当に大した画家ですよね。
こればっかりは実際に作品と対峙してみないと伝わってこないからね。
今回は写真で直接紹介できないのが残念ですが、この文章を読んでいて気になった人は、是非とも富岡惣一郎氏の「白の世界」を見に来てください!
ミュージアムショップ
というわけで大変勉強になりました! 画集も買っちゃいます!
ミュージアムショップ
豊富な種類のポストカード
クリアファイルや画集
わぁ、米袋グッズもありますよ! こういうのって、なかなか実際に売ってる場所を見つけるのが大変なんですよね!
実際の米袋を再利用した名刺入れとストラップ
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m.u.k Lab 南魚沼米袋研究所というか、ナチュラルにお米売ってるね、魚沼産コシヒカリ。
そこは、まぁ、アイデンティティだからさ。一応置いておかないとね。
都会から来た人にとっては「お土産に便利!」ってやつですね。越後湯沢駅とかでも売ってますけど。
八海山のふもと
そういえばここ、八海山がよく見えますよね。
トミオカホワイト美術館から眺める八海山
八海山の雪形を紹介するパネル
因果関係が逆だよ。八海山のよく見えるこの場所に美術館を建てたんだよ。
へー、それまたどうして。
展示室に書いてあったけど、読んでないのか……
富岡惣一郎は晩年「雪国に生まれた作品は雪国に還す」という想いに至り、その結果、同氏としても思い入れの強い霊峰・八海山の麓であるこの地に、美術館が建つことになったんだよね。
生まれ故郷の上越市でもよかったのに…… 世界スケールで見たらどっちも同じ新潟県なので、別にいいんですけどね……
まぁまぁ、このあたりのエリアは雪国観光圏としてまとまって雪国文化を発信しようとしているから、そういう意味ではここがちょうどいいかなという気もするよ。
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雪国観光圏 公式ウェブサイトそこで好循環が生まれるといいよね。スキー旅行のついでにトミオカホワイト美術館に足を運んだりとか。特に、この地の雪国文化を体感しに来た人には、一緒に富岡惣一郎の作品も見て行ってもらえると嬉しいよね。
それにはわたしも同感です! 雪国にゆかりのある人はもちろんですが、そうでない人にも是非「トミオカホワイト」の「白の世界」を見てもらいたいですね! というわけで、トミオカホワイト美術館はいいですよ!
Tomioka White Art Museum
トミオカホワイト美術館
- 住所
- 新潟県南魚沼市上薬師堂142
- アクセス
- 車:関越自動車道 六日町ICから車で15分
バス:南越後観光バス 六日町~八海山スキー場線「上薬師堂」バス停 徒歩3分
- 営業時間
- 9:00~17:00
(冬季は10:00~)
- 注意事項
- 水曜休館 (祝日前後など例外あり)
- リンク
- 公式ウェブサイト
「雪国巡礼」は2019年7月~11月まで開催。展示テーマは一定期間ごとに入れ替わる。