コートールド美術館展(2019-2020)に行ったので感想を

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コートールド美術館展 in 東京都美術館

東京都美術館
Tokyo Metropolitan Art Museum
東京都 上野
Ueno, Tokyo, JAPAN
15 Nov 2019
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というわけで今日は東京都美術館で「コートールド美術館展」を見てきました!

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そこまで興味が湧かなかったのでこのサイトでも特に紹介していなかったんですが、いざ行ってみたら想像の5倍くらい楽しかったので、感想だけでも記事に書いておきますね。上野での開催は12月中旬までですが……

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東京都美術館での開催は2019年12月15日(日)まで。その後、2020年1月~3月15日(日)までは愛知県美術館、2020年3月末~6月21日(日)までは神戸市立博物館でそれぞれ開催予定。詳細は公式ウェブサイトを参照。

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ちなみにコートールド美術館っていうのは、イギリスのロンドンにある「Courtauld Gallery」のことです。実業家のコートールドさんが買った印象派中心の絵のコレクションが元になっている美術館だそうです。


特別展入口

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展示内容をざっくりと振り返りますね。入るといきなりゴッホとかの風景画から始まったんですが、わたしは入って4番目の絵(No.3)のモネの「アンティーブ」にいきなり釘付けになりました。

クロード・モネ「アンティーブ」(参考:ポストカード)

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ちなみに中は撮影禁止だったので写真は撮れませんでした。特別展なので仕方ないですね。かわりに買ってきたポストカードで紹介します。

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何がすごいって言われると言語化するのが難しいですが…… わたしの好きな夕焼け(or朝焼け)の雰囲気が、うっすらと滲み出ているんですよね。遠くの山々の左側の斜面が、ほのかに赤みがかっていて。

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ただそれだけなのに、風景画に赤みがかかると一気に色っぽくなって、全体の空気が引き締まるというか…… ひとことで言うと「絵になる」感じですよね。だからこうして実際に絵になっているんですけど。

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そして、とても興味深いのが、これとほぼ同じ構図の絵が愛媛県美術館に収蔵されているという話です。比べると細部がほんのり違うそうですが、わたし気になります。いつかそっちの絵も見てみたいなぁ。


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その次はセザンヌの絵がたくさん並んでいました。コートールド美術館はセザンヌのコレクションがとても充実しているようなので、この展覧会も「The・セザンヌ」って感じの絵がたくさんありました。

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「The・セザンヌ」って感じは、緑の鮮やかな風景画と、ダークな雰囲気の庶民の絵と、両極端なイメージが個人的にあるんですが…… どこでそんなイメージを覚えたのかは忘れました、多分ロシアかな。

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前者の例はよくある農場や山々の風景画ですね。後者の例は「カード遊びをする人々」とかでしょうか。「カード遊びをする人」をモチーフにした作品は色んな美術館に飾られているので比較的有名らしいです。

ポール・セザンヌ「サント=ヴィクトワール山の平野、ヴァルクロからの眺め」(参考:プーシキン美術館)


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続いてエスカレーターで上のフロアに行くと、わたしの大好きなウジェーヌ・ブーダンの絵が飾られていました! しかも2つもですよ!

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1点目は小さな板に描かれた「トルーヴィルの浜辺」で、これもブーダンらしい絵だったんですが、2点目の「ドーヴィル」は大きな絵でした。超広角レンズで捉えたような広々とした画角、もう釘付けでした。

ウジェーヌ・ブーダン「ドーヴィル」(参考:ポストカード)

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ブーダンの描く絵って、まるで望遠レンズで撮ったような絵もあれば、こんなふうに超広角レンズで撮ったような絵もあって、19世紀後半に現代のカメラ技術を駆使したような絵を描いてて本当に凄いなって思います。

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今の世にブーダンが生きていたら、写真家になっていたのか、それとも画家を続けていたのか、わたしは前者だと思うんですが…… そのくらい、風景をフレームに閉じ込める能力がずば抜けていますよね、ブーダン。

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そうでなくても、ただでさえモネの師匠ですし、色彩感覚もずば抜けていますし…… もっと色んなところでブーダンの絵を見たいです。はぁ、好き。

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モネの師匠
クロード・モネに屋外で絵を描くことを教えたのがウジェーヌ・ブーダン。2人は何度も旅をして、そのたびに一緒に絵を描いた。ブーダンが気を利かせていなければ、今のモネ作品のほとんどは生まれていなかったのかもしれない。


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ついオタクみたいにブーダンのことを熱く語ってしまいましたが、この後にはマネやモネのアルジャントゥイユの絵や、シスレー、シニャック、ピサロといった画家の絵がずらりと並んでいるので見ごたえ抜群です。

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特にポール・シニャックの「サン=トロペ」は、いつもの点描っぽい絵ではなくて、それの基となるラフスケッチだったので、ある意味見ごたえ十分でした!

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そして、その絵を構想の一部として描いた、いつもの点描っぽい「完成品」が別の美術館にあると聞いたので、気になります。ドイツのフォン・デア・ハイト美術館でしたっけ?

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「Von Der Heydt Museum Signac」とかで画像検索すると「完成品」のイメージ画像が出てきます。


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その後はルノワールの絵がずらりと並んでいました。日本にあるルノワールの絵は晩年の作品が多いですが、今回は各時代それぞれバランスよく(?)並んでいた印象です。

ピエール=オーギュスト・ルノワール「桟敷席」(参考:複製画)

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「桟敷席」のそばに、当時の桟敷席について描かれた雑誌の挿絵が飾られていたのが面白かったです。みんなオシャレに着飾って(そして居眠りをして)いる様子が、庶民には題材として好まれたそうです。

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桟敷席
劇場の上層階にある、個室ではない席のこと。ミラノ・スカラ座のような古典的な馬蹄型劇場では、中層階は個室となっていることが多く、対照的に仕切りのない上層階は「桟敷席」と呼ばれた。いわゆる庶民席。NHKホールで言うところの3階席。

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題材として好まれたっていうのはあくまで雑誌の挿絵としての話で、こうした絵画として描かれるのは当時珍しかったようですが…… 劇場にお絵描きセットを持ち込んでガッツリ描くには向きませんもんね。

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じゃあエドガー・ドガの踊り子の絵はどこで描いたんだ、っていうのはいつも気になっているんですが…… そうそう、ドガの絵も飾ってありましたよ。足の小指をぶつけたみたいな踊り子の彫刻もありました。

エドガー・ドガ「右の足裏を見る踊り子」(参考:エルミタージュ美術館)


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で、続いてマネの絵。「草上の昼食」は陰影の付け方がパキッとしていて、思わずじっくり見てしまいましたが、わたしにはどうなってるかよく分かりませんでした…… わたしもまだまだ絵描きとして勉強が足りません。

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そして今回の特別展で一番の注目作品、「フォリー=ベルジェールのバー」が堂々と飾られていました。人だかりがすごくてあまり間近で観察できませんでしたが……

エドゥアール・マネ「フォリー=ベルジェールのバー」(参考:複製画)

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縦割りの三分割構図でスッキリとした美しい見た目なんですが、この構図にするためにウソをついているんですよね、この絵。逆に言えば、どこかでウソをつかないと美しい構図にならないというか……

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この絵の後ろにあるのは鏡なので、本来は女性のほぼ後ろくらいに像が映っていないといけませんよね。実際、下絵や下描き段階では「本物に忠実に」描いていたようなんですが、でもそれだと美しくはならない……

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なので、像が本来映るはずの位置よりも少しだけずらすことによって、物理法則上では少しおかしなことになりながらも、構図としてはスッキリと美しくなった、というのがこの絵から見て取れますよね。

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わたしも普段よく言われるんですが、絵って必ずしも「現実を忠実に描く」必要はないんですよね。時に「リアリティを出すために絵画的なウソをつくこと」も必要ですし。真っ暗な空間の天井を少し明るく描いたりとか。

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ですので、あの巨匠マネがここまで大胆に空間をねじ曲げているんですから、絵描き側の人間としては「あっこれでもいいんだ」みたいな謎の勇気が湧いてきます!


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あとは、「素材・技法から読み解く」というコーナーがあったんですが、そこではいくつか未完成の絵が飾られていたのがとても興味深かったです。

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特にセザンヌの未完成の絵! 風景画のあの雰囲気をどうやって描いているのか謎だったんですが、未完成の絵を見ると、なんとなくセザンヌの描き方をトレースできるような気がしました!

ポール・セザンヌ「曲がり道」(参考:ポストカード)

うさぎ

まず、青空は真ん中から色を盛り始めて、雲を避けながらじわりじわりと外側に広げていく…… そして遠くの山を、建物を、こんもりと盛り付けて、今度は手前に空間を広げていく……

うさぎ

まるで太い線を横に引くように…… いや、そう見えるように縦に細かく動かしていく、と言った方が正解なのでしょうか? いくつものカタマリを配置するイメージで、間が結構空いていますね。

うさぎ

そして全体を組み立てたら細かく仕上げいく…… といった感じでしょうか? もっとも、晩年に描かれた絵なので若い頃とは組み立て方が違うのかもしれませんが、とにかく大変参考になります。


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その後にもゴーガンやピエール・ボナールの作品が続いていたんですが、あまりわたしの興味が向かなかったのでここでは省略しますね。最後の方だけ混雑していたのでよく見れなかった、というのもありますが。

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というわけで、展示点数はそこまで多くはありませんでしたが、内容としてはわたし的にかなり充実度の高い展覧会でした! オススメです!

出口付近の申し訳程度の記念撮影スペース

  • Masterpieces of Impressionism: The Courtauld Collection

    コートールド美術館展 魅惑の印象派

    場所
    東京都美術館
    愛知県美術館
    神戸市立博物館
    開催日時
    東京:2019年9月10日(火)~12月15日(日)
    愛知:2020年1月3日(金)~3月15日(日)
    神戸:2020年3月28日(土)~6月21日(日)
    リンク
    公式ウェブサイト

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さてさて、特別展のグッズも買いましたし、常設のミュージアムショップでもチラッと覘いてからユキさんのアトリエに戻りますか。

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ちなみに東京都美術館では、他にも色んな展覧会が開かれているんですが、今日はもう閉館時間ギリギリなのでおとなしく諦めます…… ここは早い時間からのんびり来るのが正解ですね。

ショップもクリスマス支度

夜の東京都美術館

  • Tokyo Metropolitan Art Museum

    東京都美術館

    住所
    東京都台東区上野公園8-36
    アクセス
    JR上野駅 公園口から徒歩7分
    営業時間
    9:30~17:30
    (特別展開催中の金曜や一部土曜など9:30~20:00)
    注意事項
    第1・第3月曜休館 (祝日前後に例外あり)
    リンク
    公式ウェブサイト

おまけ

おまけ:プレミアムナイトチケット?

雪うさぎ 上野アトリエ
Atelier (Ueno, Tokyo)
東京都 上野
Ueno, Tokyo, JAPAN
15 Nov 2019
うさぎ

かくかくしかじか、というわけで「コートールド美術館展」大変よろしかったです! ユキさんも早く行ってきた方がいいですよ!

雪貴

まるまるうまうま、大体わかったので私も来週あたりに行ってこようかな。むしろ今日一緒に行けばよかったね。

うさぎ

撮影禁止なので作品たちは連れてこれませんでしたが、せめてもの記録に図録とポストカード買ってきました。あとブーダンの500円くらいの大きい絵も買っちゃいました。

雪貴

撮影禁止といえば…… 東京都美術館の「コートールド美術館展」ね、撮影禁止だけど完全に撮影禁止ではなかったっぽいんだよね

うさぎ

I don't understand what you mean.
だから何度も言いますが普通に全面撮影禁止でしたよ。

雪貴

えっとね、プレミアムナイトチケットっていう特別な枠のチケットがあって、その日の特定時間のみ撮影が解禁されたみたいなんだ

うさぎ

……えっ?

うさぎ

……はい?

雪貴

うん。要するに、特定日のプレミアムナイトチケットを買った人だけは撮影OKだったってこと。

うさぎ

……は??

雪貴

ところがどっこい、夢じゃありません。
現実です、これが現実。

うさぎ

ちょっとちょっとちょっと! どういうことですか! そんなのがあるなら早く教えてくださいよ!!

雪貴

実を言うとチケットはもう売り切れです。
突然こんなこと言ってごめんね。
でも本当です。

うさぎ

ひーん、嘘だと言ってよバーニィ……

雪貴

私も知った時には既に売り切れてたから…… 一応概要をまとめておくと、プレミアムナイトのチケットは1人4500円、全3回の合計1200枚。中学生以下でもチケットが必要。この条件、ぶっちゃけどう思う?

うさぎ

えっ、結構高いですね…… いや、ロンドンに行くよりは遥かにリーズナブルですし、地方から新幹線乗って来るのを考えれば誤差レベルですけど……

うさぎ

というか、一般前売り券が1400円、差額×枚数でだいたい400万円弱ですよね。一見すごい額に見えますけど、観客が10万人来ると考えたら1人あたり40円上乗せするだけでペイできますよね。

雪貴

こういう時の損得勘定だけ頭の回転が速くなるの止めなさい。まぁ図録とかついてくるみたいだから、差額はほとんど発生しないんだけどね。

Information

※実際には公式図録と音声ガイド(合計3000円相当)のセット価格なので、チケット自体はほぼ原価どおり。

うさぎ

結論だけ言うと、わざわざそんな枠を設けて限定的に撮影OKにする意味が分からないです! そこで許可するならわたしにも撮らせろー!

雪貴

思いっきり本音が出てて笑える。

雪貴

まぁでも、SNSで評判を見てみたんだけれど、大体みんなスマートフォンで撮影するからシャッター音がめちゃくちゃうるさかったらしいよ。撮影目的ならいいけど、鑑賞目的なら災難この上ないよね。

雪貴

まぁ、「撮影OKです!」ってチケットをそんな限定的に発売したら、そりゃ撮影目的の人しか集まらないだろう、って話なんだだけど。

うさぎ

あっ……(察し)
強制シャッター音という名の謎の自主規制がはびこっている日本あるあるですね。韓国もそうでしたっけ?

雪貴

特に最近のAndroidなんかは、海外の端末でも日本のSIMを差すだけで強制的にシャッター音がONになるっていう謎の徹底っぷりだもんね。訪日外国人の皆さんが定期的にブチギレしてて、本当にかわいそう

うさぎ

その件に関してはわたしも日本の頭コンクリなお偉いさんに言いたいことが山ほどありますが、そういう批判記事じゃないのでここでは控えます。

雪貴

まぁ、色々と難しそうだろうけどね、この国だと。論点ズレてきたし、ともかくこの謎のプレミアムナイトチケットのことは忘れよう。気が済まないならアンケートで長々抗議すればいいさ。

うさぎ

確かに、強制シャッター音の国で鑑賞目的の人と撮影目的の人を分けるっていう試みは面白いですが、今回は限定的すぎて残念な企画になっちゃってますよね。わたしは撮影OKになる流れに持っていければ何でもいいですけど。

雪貴

結論、ロンドンのコートールド美術館行ってくればいいじゃない。

うさぎ

そんな北海道行こうみたいなノリで軽く言わないでくださいよ……

うさぎ

例えば、春に行った「バレル・コレクション展」は一部エリアだけ撮影OKでした。ブーダンの絵も撮れたので、わたしも大満足でした。そういうのでいいんですよ、そういうので。

雪貴

うん、まぁ、段階的にでもいいから、そういう平等でオープンな撮影OKが今後も増えるといいね。